2022.09.2 Fri
ブッシュミルズ ブランドアンバサダー就任記念インタビュー400年以上の歴史を有するブランド
一言で表現するなら、それは「信頼」
川原 洋輔さん(MIXOLOGY HERITAGE/東京)その「価値」を多くの人はまだ知らない
川原 洋輔さんインタビュー②
ブッシュミルズはどのようなブランドだと思いますか。
世界最古のウイスキー認可蒸溜所として400年以上の歴史を持つ、非常に「価値」のあるプレミアムウイスキーだと思います。欧米諸国に比べ、まだまだ日本ではその「価値」が伝わりきれていない印象があります。アイルランドのウイスキーの多くはブレンデッドですが、ブッシュミルズは創業当時からアイルランド産の素材を使い、頑なにシングルモルトづくりにこだわっています。コアなファンは知っていても、多くの人はこれらの価値をまだ知りません。そういう意味では私たちブランドアンバサダーがこのウイスキーの「価値」を広め、伝えていくことが重要だと実感しています。これからがとても楽しみなアイリッシュウイスキーですね。
一言でいうなら「信頼」でしょうか。麦芽税の施行、蒸溜所の火災、禁酒法など様々な困難に出合いながらも、誠実に向かい合いながら伝統を守り続けているその姿勢には脱帽です。ブッシュミルズのクラフトマンたちが言う「歴史があるから美味しいのではなく、美味しいから歴史がある」という言葉が本当にぴったりときます。皆がプライドを持ってこの仕事をしているのが伝わってきます。
長い歴史の中で、変えない部分と時代によって変える部分があって、でも本質は絶対に曲げない。それって出来そうでなかなか出来ないことだと思うんです。しかも400年以上ですから。私は50年くらい前に流通していた古いブッシュミルズを飲む機会があったのですが、味わいがほとんど変わっていないことにとても驚きました。本質を曲げていない証です。
ブッシュミルズのシングルモルトはそれぞれのどのような味わいですか。
10年は創業375周年を記念してつくられました。アメリカンオークのバーボン樽とシェリー樽でそれぞれ最低10年以上熟成させた原酒をブレンドしたブッシュミルズのフラッグシップです。アタックは若々しく、フルーツやバニラ、チョコレートなどの味わいが特徴です。
12年は蒸溜所限定のリミテッドとして誕生しましたが、あまりの好評にその後一般販売されました。アメリカンオークのバーボン樽とオロロソシェリー樽でそれぞれ最低12年以上熟成させた原酒をブレンドし、最後の数か月をイタリアのシチリア島でつくられるマルサラワインの樽で熟成させたプレミアムラインです。ワイン樽を使うのは作り手としてチャレンジな部分もあると思いますが、それでも本質を崩さずこういう商品をつくれるのは、さすが歴史のある蒸溜所だと痛感します。10年と比べるとより複雑さが増し、ドライフルーツや蜂蜜、スパイスなどの魅力的な香りに、ジンジャーや洋ナシ、ナッツを思わせる複雑な余韻が特徴です。
16年は「ビッグウイスキー」の愛称で親しまれていて、ブッシュミルズの自信作というか、とてもブランド価値を高めた商品のひとつだと思います。アメリカンオークのバーボン樽とオロロソシェリー樽でそれぞれ最低16年以上熟成させた原酒をブレンドし、最後の半年以上をポルトガルのポートワイン樽の中で熟成しています。ポートワイン樽なので21年と比べても色が濃いんです。香りは色合いからも感じられるように非常にパワフルでエキゾチックな印象です。ナッティな味わいで、ダークチョコレートのようなアフターもしっかり。もちろんオンザロックやストレートで飲むのもいいですが、オールドファッションドやゴッドファーザーなど、どっしりとしたカクテルで楽しむのがおすすめです。
そして21年。2001年に発売されたブッシュミルズの最高傑作のひとつです。バーボン樽、オロロソシェリー樽でそれぞれ最低19年熟成させた原酒を、その後2年間かけてマディラワインの樽で追熟します。美しいマホガニー色で、グラスに注いだ瞬間からトロピカルフルーツやヘーゼルナッツのような甘みが爆発します。グラスを口に近づけると濃厚なチョコレートやバニラ、樽由来のロースト香、熟したトロピカルフルーツが口の中にあふれ、繊細で甘美な至福の時間を味わうことができますよ。この21年は私の中では貴婦人のイメージがありますね。それほど高貴な雰囲気です。
ブッシュミルズはシングルモルトウイスキーの中でどのような位置付けだと思いますか。
アイリッシュウイスキーの人気はジャパニーズやスコッチのように急激な伸びではない分、原酒を豊富に持っています。特にブッシュミルズは、樽の種類も様々あることから贅沢なつくりができます。プレミアムウイスキーという意味では、今のご時世、様々な原酒を使えるとは他の蒸溜所がやりたくてもできないことが普通にできる。これって実はすごいことだと思うんです。
また、とてもバラエティに富んだ4種類のレンジなので、楽しみ方のシーンがあってもいいと思います。例えば21年ならルーフトップのバーで綺麗な景色を眺めながら、16年ならオーセンティックなホテルのバーで、12年なら少しカジュアルなバー、10年は友人とのアウトドアでハイボールなんていうのもいいと思います。そんな楽しみ方ができるのもブッシュミルズならではですね。
川原 洋輔(かわはら ようすけ)
バーテンダーの道を志してからいくつかの都内のバーでの経験を積み、赤坂プリンスクラシックハウス内「バー・ナポレオン」のヘッドバーテンダーに就任。その後、Aoyama Treehouse 「The Bar」マネージャーに就任。2020年にMixology グループへ入社し、現在は「MIXOLOGY HERITAGE」にて勤務。