2022.11.4 Fri
世界的ギタリスト高崎晃氏プロデュース ウイスキー発売記念トークセッション(前編)全米を駆け抜けた80年代に思いを乗せた
20年長熟グレーンウイスキーがベースの
「SUNBURST 魂 〜SOUL〜」
LOUDNESS 高崎晃 × BAR KAGE 影山武嗣 × 長濱蒸溜所 屋久佑輔ロックとウイスキーは海外が発祥。長い時を経て、今は日本人にしかつくれないロックとウイスキーがある(影山)
編集部:本日は皆様にお集まりいただき、貴重なお話を聞けるとあってBAR TIMESとしても嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。ところで、影山さんはBAR業界の中でもかなりのヘヴィメタル好きとお聞きしましたが。
影 山:ハードロックに目覚めたのは小学校6年生くらいですかね。3つ上の姉がいまして、ある時姉の部屋で流れていた曲がたまたま耳に入って、こんなにカッコいい音楽がこの世にあるのか!って。それがイギリスのロックバンド、ディープ・パープルの『Burn(バーン)』だったんです。それまで歌謡曲して聴いていなかったんで。で、近くのレコード店まで自転車をすっ飛ばして、アルバム『イン・ロック』を即買いしました。
高 崎:何かすごく自分と似てる、入り口がね。自分も兄弟の影響でロックを聴き出したんですけど、やっぱりディープ・パープルとかね。『Burn』が出た時、僕は中学2年生だったかな。影山さんは小学校6年で『イン・ロック』を買ったんでしょ、ちょっと早いよね(笑)。
編集部:影山さんにとって趣味であるロックと本業であるお酒とはどのような存在ですか。
影 山:うちのお店は比較的ウイスキーの品揃えが多くて、個人的にもウイスキーが好きなんです。僕はロックとウイスキーって歴史が似ていると思うんですよ。
ロックは海外で生まれたもので、それを日本人が憧れて真似をして創り上げてきた。ウイスキーもアイルランドで生まれてスコットランドに伝わり※、大正時代にニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝さんがスコットランドへ留学をし、その技術を日本に持って帰ってきました。スコッチに負けないウイスキーをつくりたいって。それが今、日本のウイスキーは世界で高い評価を受けるまでになりました。スコッチとは違う、スコッチではつくれない日本らしさがあるからなんです。ジャパニーズオークの樽を使ったり、原酒をつくり分けたり、蒸溜器の形状を工夫したり。LOUDNESSもまさにそうで、日本語で高崎さんがハートを発信して、あのクオリティの高いギターテクニックとサウンドで。外国人があのロックを真似しようとしてもできないですから。高崎さんが日本人だから、LOUDNESSが日本のロックバンドだからできるんだっていう部分がすごくウイスキーに通じるものがあるんです。(※ウイスキーの起源は諸説あります)
高 崎:うん、すごくよくわかるし、嬉しいですね。
ヘヴィメタル全盛期のアメリカ80年代。とにかく観客のボルテージが高かった(高崎)
編集部:LOUDNESSは1981年の結成後、すぐにアメリカ進出を果たし、日本のロックバンドとして初めてビルボードにチャートインするなど目覚ましい活躍を続けてきました。世界に出たきっかけは何だったのですか。
高 崎:世界に通用するロックバンドをやる、やりたい音楽を正直にやる。それはLOUDNESS結成時からずっと念頭に置いていて、1枚目のアルバム『THE BIRTHDAY EVE 〜誕生前夜〜』から自分のソロアルバム『ジャガーの牙 〜TUSK OF JAGUAR』、2枚目のアルバム『DEVIL SOLDIER 〜戦慄の奇蹟〜』と積極的に作品をつくっていました。そんな中、自分たちの音楽が海外のロックファンの間で聴かれていて、しかも話題になっているって知って、それで1983年に初めてアメリカでライブを行ったんです。
影 山:今みたいにSNSがない時代だったにも関わらず、会場は満員で観客の反応が凄まじかったって雑誌の情報をゾクゾクしながら読んでいました。野球で言ったら野茂英雄さんみたいな、本場のアメリカでプロと渡り合うなんて、本当信じられなかったです。その時のライブパフォーマンスやファンの熱狂ぶりが、あのアトランティック・レコードの目に留まったんですよね。
高 崎:80年代のアメリカはヘヴィメタル全盛期だったからね。それでアトランティック・レコードと契約して、5枚目のアルバム『Thunder In The East(サンダー イン ザ イースト)』を1985年に出して。LOUDNESSが本格的にアメリカ進出を果たした作品と言ってもいいでしょうね。
影 山:しかもその年に、音楽の殿堂と言われるマディソン・スクエア・ガーデンのステージに日本人で初めて立ってプレイしていますからね、いやあ本当に凄いとしか言いようがないですよ。
高 崎:さっきも言ったように、当時アメリカはヘヴィメタルブームだったんで、観客のボルテージも高くて、ステージの下からぐわぁ〜って熱気が押し寄せてくるみたいな感じで、その盛り上がりといったらもう凄かったですよ。こっちもテンションが上がってね。あの頃のアメリカはものすごく勢いのある時代だったんですよね。
編集部:最新アルバム『SUNBURST 〜我武者羅〜』に収められている『輝ける80’s』の歌詞を拝見すると、その頃の高崎さんやメンバーの思いがすごく伝わります。
『見るもの聴くもの全て刺激だった』とか『生きている実感が漲っていた』とか。その中で『あの頃は飲みまくった 若かった 毎日Crazy Nights』って歌詞があったのですが、そんなに毎晩飲みまくっていたのですか。
高 崎:飲んでましたね。でも自分だけじゃないですよ、ドラマーもベーシストもだいぶ飲んでましたから(笑)。85年当時は、モトリー・クルーと2〜3ヶ月かけて全米を回っていて、ステージを終えると毎晩その土地にあるロッククラブへ行くんですよ、うちのメンバーでね。そうすると、モトリー・クルーもいたりして、一緒に飲んだりジャムセッションしたり。他にも、ロサンゼルスで『Thunder In The East』のレコーディングをした時も、『レインボー』や『ウイスキー ア ゴーゴー』によく行ってました。あの頃は何を飲んでたっけな。うちのドラマーはマッドスライドっていうクリーム系の甘〜いカクテルばっかり。10杯くらい飲むからいつもお腹壊してね(笑)。
影 山:えっ、あの樋口さんがですか! 全然そういうイメージじゃないです(笑)。
20年熟成に40年長熟を合わせ味わいを深く。長濱蒸溜所貯蔵のバーボンバレルでバニラ香ただようグレーンウイスキー
編集部:ところで、今回高崎さんがプロデュースしたウイスキーですが、どのような経緯で製作に至ったのですか。
高 崎:いろいろ縁あって、40周年を記念したウイスキーをつくろうじゃないかっていう話になったんでね。それも本物のウイスキーをね。僕のステージドリンクはずっとジャック ダニエルで、元々ウイスキーは好きなんですよ。なので今回のお話は、LOUDNESSとしてではなく、僕個人で形にしたいという思いがありました。
影 山:2種類あるうちの「SUNBURST 魂 〜SOUL〜」(以下、「SOUL」)は、高崎さんたちが20代に総力を尽くして臨んだ80年代のアメリカでの活躍に思いを馳せたウイスキーと聞きましたが、どんな原酒で構成されているんですか。
屋 久:「SOUL」はトウモロコシを原料とした20年熟成のグレーンウイスキーをベースにしています。熟成年数が高いので、バニラ香やオークフレーバーが強く出ているのが特徴です。さらに40年熟成のグレーンウイスキーを加えることで深みを出しました。そこに8年熟成の若いモルトウイスキーでフレッシュな印象を足し、長濱蒸溜所貯蔵の4年熟成バーボンバレル原酒も加えています。
影 山:すごいですね! グレーンの長熟って結構難しいと思うんですよ、樽の感じが出過ぎちゃったりするので。でも、この「SOUL」は樽感だけではなくほんのりバナナっぽさと、少し時間が経つとオレンジっぽい香りが出てきて絶妙なバランスですね。素晴らしいと思います。LOUDNESSのアメリカ時代がテーマとうかがったので、もっとパンチのある味わいかと思っていましたけど、とてもスムースです。
屋 久:同じトウモロコシを原料としたバーボンとはテイストは異なりますが、長熟のグレーンなので非常にまろやかで、アメリカンウイスキーやスコッチとも違うウイスキーに仕上がったのではないかと思っています。そういう意味ではアメリカでもない、イギリスでもない日本のバンドとして唯一無二の存在であったLOUDNESSのあの頃を反映できたと思っています。
編集部:「SOUL」はどのような方におすすめしたいウイスキーですか。
影 山:うーん、こういう言い方が正しいのか分からないですが、「SOUL」は飲み手を選ばないというか。ウイスキーを覚えたての人にも勧められますね。ロックスタイルでも水と1:1で割ったトワイスアップでも美味しくのめるから飲み方も選ばないですし。
高 崎:自分も普段ウイスキーは炭酸で割っているけど、これはストレートでも全然いけますね。酔い心地がいいというか。
影 山:ちょっとウイスキーを知っている人だと、モルトウイスキーはすごくいいもので、グレーンはモルトを伸ばす安いお酒っていうイメージを持っている人って意外に多いんですよ。モルト至上主義みたいな。そうじゃなくてこの「SOUL」はグレーンの良さとか美味しさがちゃんと表現されている。しっかり香りが出る度数に調整されていて、なかなかこのブレンドはできないですよ。
屋 久:ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。常にブレンドの際は、本当にこれでいいのか、と自分に問うようにしていて、特に今回の場合、LOUDNESSの高崎晃さんをちゃんと表現できているのか、何度も自分に確認しながらブレンドしていました。実際に高崎さんにも蒸溜所へ来ていただき、テイスティングをしながら意見を交換して。なので一緒につくり上げたんだという嬉しさや自信がこのウイスキーにはあるんです。
高 崎:僕も自分がウイスキーのプロデュースをするなんて思いもよらなかったけど、やってみて良かったです。色々勉強にもなったし。でもね、もう1本の「SUNBURST 極 〜KIWAMI〜」も結構いいのができているんですよ。自分も今まであんまり飲んだことのない味で。これも自信作ですね。
ヘヴィメタルからウイスキーまで、「SOUL」を片手に話が終始盛り上がったトクセッション。後編では「SUNBURST 極 〜KIWAMI〜」を味わいつつ、日本人の精神や魂などをテーマに3人の会話が進んでいきます。
高崎 晃(たかさき あきら)
大阪市東住吉区生まれ。日本を代表するロックバンド LOUDNESSのギタリスト。中学の頃からロックに影響されてギターを弾くようになり、すでに友人たちとディープ・パープルの曲名から付けたと言われる「レイジー」でバンド活動をスタート。高校時代には “すごいギタリストがいる”と学校中の話題となる。16歳でデビューし、レイジー最後のアルバム『宇宙船地球号』でその才能を開花。1981年にLOUDNESSを結成。その後世界進出し、1986年にはアルバム『LIGHTNING STRIKES』が全米ビルボード総合チャートで64位を記録するなど、世界的な人気を集める。高度なテクニックに裏打ちされたギタープレーや楽曲は多くのファンを魅了し、国内外のミュージシャンにも大きな影響を与えている。
影山 武嗣(かげやま たけし)
東京都港区六本木に生まれる。区立麻布小学校、区立三河台中学校、都立石神井高校を卒業後、ホテル専門学校を経て、ホテルメトロポリタンに入社。メインダイニングで5年間レストランサービスを学ぶ。1992年サントリー株式会社に転職。業態開発部スーパーバイザーとして飲食店の企画開発業務、接客サービスの指導に従事。子会社に転籍後、店舗統轄責任者として15店舗のオープンに携わる。2002年、前職の先輩、同僚と共に銀座3丁目にダイニングバー「欅」を開業。9年間店舗責任者として陣頭指揮を執る。2011年理想の店舗の実現を目指し「BAR KAGE」をオープン。現在に至る。
屋久 佑輔(やひさ ゆうすけ)
東京都練馬区出身。埼玉県川口市のバーで働くかたわら、全国の蒸溜所を訪ね歩きウイスキーの奥深さに魅了され『ウイスキー造りに携わりたい』という想いを抱くようになり、2017年長濱蒸溜所入社。当初は仕込み・蒸溜を担当、現在はチーフブレンダーとして勤務。兄の影響でギターを始めた経験もあり、無類の音楽好き。2020年World Blended Whisky AMAHAGANシリーズは英国コンペティションにてAMAHAGAN Edition No.3部門最高賞を獲得。日本一小さな蒸溜所で世界一大きな夢を持ち、ウイスキー造りに日々励んでいる。
「SUNBURST 魂 〜SOUL〜」 テイスティングコメント
煌びやかな琥珀色。トップノートではバニラアイスクリームやメイプルシロップのミルキーかつ甘く穏やかな香り立ち。ラムレーズン、フルーツカスタードを想わせる果実香。次第に森林浴をしている様な落ち着いたウッドのフレーバーが心地よく香り立ちます。香りからのバニラ様の風味はそのままに、香草を想わせるリーフィーなアクセント。パインや完熟バナナ、ライチ様のトロピカルなテイスト。焼きキャラメルの香ばしいテイストと共に、樽由来のしっかりとしたオークのアクセントが長く続きます。
●容量/700ml●原材料/グレーン、モルト●アルコール/47%●ボトリング本数/5,000本●希望小売価格/11,000円(税込)