2022.11.4 Fri
世界的ギタリスト高崎晃氏プロデュース ウイスキー発売記念トークセッション(後編)日本人への力強いメッセージを込めた
薫香あふれるモルトウイスキー
「SUNBURST 極 〜KIWAMI〜」
LOUDNESS 高崎晃 × BAR KAGE 影山武嗣 × 長濱蒸溜所 屋久佑輔2021年、結成40周年を迎えた世界的ロックバンドLOUDNESS(ラウドネス)。レジェンドギタリスト高崎晃氏が全面プロデュースした2種類のウイスキー「SUNBURST 魂 〜SOUL〜」と「SUNBURST 極 〜 KIWAMI〜」の発売を記念して、高崎晃さんご本人とウイスキーに造詣の深いBAR KAGEオーナーバーテンダー 影山武嗣さん(東京・銀座)、そしてブレンドを担当した長濱蒸溜所のチーフブレンダー 屋久佑輔さんによるトークセッションを開催しました。後編では、高崎さんが「SUNBURST 極 〜KIWAMI〜」に託したメッセージを中心に、今の厳しい時代に思うことやウイスキーにかける思いなど、深く熱く語り合っていただきました。
コロナでモチベーションがアップ。平穏な毎日ばかりではロックは生まれない(高崎)
編集部:今回は高崎さんがプロデュースされたもう1本のウイスキー「SUNBURST 極 〜KIWAMI〜」(以下、「KIWAMI」)について皆さんに色々とお話をうかがいたいと思っています。はじめに、「KIWAMI」にはコロナなどで逆境に立たされた日本人を鼓舞する意味を込めた1本だとお聞きしました。
高 崎:そうなんです。LOUDNESSの活動は、コロナの影響で国内はもちろん、海外ツアーもことごとく延期やキャンセルになりました。自主的にクラブなどでライブをやったりしていましたけど、お客さんは立ち上がってはダメ、声を出すのもダメ、ずっとマスク着用といった具合にそれまで当たり前にあったライブの環境がガラッと変わっちゃって。もうコロナ以前のようには戻れないんじゃないかと思ったりもしました。コロナだけじゃなくて、戦争やそれに伴う物価高騰、円安とか、自分たちは今、閉塞感でいっぱいの環境に置かれているけど、でもどんな時代であろうとも生き抜くための強い精神力とか、魂の叫びとかそういうものは絶対に大事だと思うんです。だから“負けるな”っていうメッセージを何かで表現したかったし、伝えたかったんです。
影 山:そうだったんですね。でもそんな状況下にあって、最新アルバム『SUNBURST~我武者羅』をリリースして、しかも2枚組ですよ。その前に進もうとする高崎さんのモチベーションの高さはどこからくるんですか。
高 崎:コロナでモチベーションが逆に高くなったんですよね。これまで作曲はしていましたけど、『SUNBURST~我武者羅』では歌詞も大半つくりました。創作活動においては自分自身にプラスに働いたと思っています。平穏な毎日ばかりだとなかなかロックも生まれにくいと思うんでね。いいチャンスだったというか。
影 山:確かに今までのLOUDNESSと全然違うって感じました。もちろん曲もいいし、高崎さんの全部のリフがめちゃくちゃカッコよくて(笑)。あと、これまで英語の歌詞だったのに日本語だったから、高崎さんの魂の叫びが日本語でバンバン入ってくる感じでした。
高 崎:コロナ禍で自分で思うこととか、言いたいことがいっぱい出てきたんでね。内側から湧いてくるというか。自分はミュージシャンやし、SNSなんかで発信するよりも作品の中で伝えようって。それで歌詞に盛り込んでいったんです。デビューしてしばらくは日本語の歌詞でやっていたんで、40周年を迎えて原点回帰みたいな部分もありました。
必要とされているなら店はきっと残る。数年後にいい経験だったと言えるように(影山)
編集部:コロナ禍で飲食業界も大きな打撃だったと思いますが、影山さんはいかがでしたか。
影 山:もう酷かったですね。当然のことながらまともに営業できなかったんで。でも、僕が何かをしでかして売り上げが落ちたのではなく、みんなそうですし、日本だけじゃなくて世界中がそうだったので、もう仕方ないなってちょっと腹をくくったところがありました。人から必要とされているなら店はきっと残る、もし潰れてしまったらそれは必要とされていなかったんだと諦めようって。おかげさまでこうして店を続けることができましたけど、あの時は家賃やスタッフの給料とか自分たち家族の生活もあって、結構しんどかったですね。数年後に、あれはいい経験だったなって笑って言えるようになればと思っています。
高 崎:捨て身覚悟で愛する者を守っていくような強い魂のことを僕らLOUDNESSでは“大和魂”って言うんですけど、まさにそうですよね。踏ん張って、闘って。
影 山:でも一つだけよかったなって思うことがあって。コロナ禍で家にいる時間が多くなると何もすることがなくて結構ストレスが溜まるんですよね。で、ヘヴィメタル好きのギターをやっている友人がいまして、ふたりでスタジオを借りて大きな音で弾こうぜって(笑)。家では大きな音が出せないですから。一緒にガンガン弾いて遊んでいたら何だか面白くなってきちゃって。これからは月1でやろうってことになって、課題曲を決めて今練習しているところです。次はメイデンやろうとか言って(笑)。
高 崎:スタジオ借りて? メイデンやってんの? それはめっちゃメタルファンやな(笑)。
影 山:高崎さんほどではないですけど、コロナがなかったら友人とギターで遊ぶなんてことはきっとなかったでしょうし、僕にとってもプラスに働いたのかもしれません。
若いモルトをベースにオロロソで後熟したピート原酒をブレンド。ピーティーな香りと甘い余韻のモルトウイスキー「KIWAMI」
編集部:ところで、この「KIWAMI」は日本人へのメッセージが込められているということですが、高崎さんからはどのようなリクエストがあったのでしょうか。
屋 久:“こんな時代だからこそ強く生きることが必要”という高崎さんのメッセージを受けて、少しピートが利いて赤みがかった印象的なウイスキーにしようと試作に取りかかりました。サンプルの段階で高崎さんにテイスティングをお願いしたところ、もう少しピートを強くしたいというリクエストはもらいましたね。
高 崎:このウイスキーは本当に個性的だと思うし、「SOUL」とはまた全然違うんですよ。
影 山:これってブレンデッドモルトなんですよね。すごく個性的な原酒ばかりを使っているのにとってもバランスが取れていて、それでいてすべての味がきちんとしますね。
屋 久:ありがとうございます。「KIWAMI」は8年熟成と少し若めのモルト原酒をベースにしていて、少し枯れたニュアンスを持つ12年熟成モルトをアクセントにしています。高崎さんがこだわったピートは、オロロソで後熟させた原酒を使っています。そのため、ただスモーキーなだけではない深みとかコクも表れていると思います。ペドロヒメネス樽で後熟したシェリー樽原酒も入っているので甘味も感じていただけると思います。
影 山:ちょっと生意気な言い方で申し訳ないんですけど、かなり完成度が高くて驚きました。と言うのも、ブレンデッドモルトってシングルモルトをいくつも合わせてつくるので難しいんですよ、みんなそれぞれ個性が強いから。1+1+1が本来なら5にも6にもなるはずなのに、2になっちゃう失敗もあり得るから皆んなやりたがらない。それほどブレンデッドモルトって難しいんですよ。だからこの完成度に驚いちゃったんです。
高 崎:そうでしょ。自分も完成品を試飲した時びっくりした。思っていた以上に素晴らしい出来で。同じようなウイスキーって他にないでしょ、これは本当に今まで飲んだことのない味ですよ。
影 山:そうなんですよね。ノージングからしっかりピートが利いていて、もっとも感じるのはモルティな麦っぽさ、それで最初は甘いんですけど最後に樽の渋さが微妙にあって。繊細ですごくやさしい味わいのウイスキーですね。ちょっと僕聞いたんですけど、熟成庫でLOUDNESSの曲をガンガンかけていたって本当ですか。であればもっとギラギラしていると思ったんですけど(笑)。
屋 久:LOUDNESSの記念すべき40周年で出されたアルバム『SUNBURST 〜我武者羅〜』と今回のウイスキーを完全に共鳴させようと、アルバムの曲をじっくり樽に聴かせました(笑)。音楽熟成って言うんですけど、高崎さんのうねるようなギター音の振動が樽に触れることで僕らでは出せないようなフレーバーが生み出されることを期待しました。それがどのように作用したかは分からないですが、味わいからするといい方向に作用したみたいなので聴かせてみてよかったです(笑)。
編集部:屋久さんも音楽好きとうかがいました。ブレンダーのお仕事はよくオーケストラの指揮者に例えられますが、屋久さんの場合はいかがですか。
屋 久:僕の場合、ブレンドはひとつの音楽をつくり上げていくのと同じだと思っています。まさにバンドアンサンブルですよね。高崎さんにもお話したことがあって、例えば、アコースティックギターを持った男の子や女の子が路上で弾いていて自分を表現するとします。そこにエレキギターが加わって、ベースが加わって、パーカッションやドラムも入ってアンサンブルになる。どんどん音に厚みができて深みも出る。ウイスキーも同じで、スモーキーな原酒だけだと単にスモーキーなだけですが、そこにフルーティーを重ねて、樽由来のウッディさを重ねてどんどん構築していくことで味わいに深みが出てきます。味同士を響かせていくという部分においては、バンドアンサンブルとウイスキーは相通じるものあると思っています。
高 崎:それを聞いた時になるほどなぁって思って感心しました。今回は2種類のウイスキーをブレンドしてもらって、それぞれ僕が伝えたいことを全く違う方向性のアンサンブルで表現してもらいました。自宅で味わうなら「KIWAMI」はハードロック、「SOUL」はジャズとかを聴きながら楽しんでもいいと思います。どっちも本当にいいウイスキーなので多くの人に味わってもらえたら嬉しいですね。
LOUDNESSの活躍や高崎さんの音楽にかける思い、影山さんのヘヴィメタル愛とウイスキーへの深い造詣、そして長濱蒸溜所の若きチーフブレンダー屋久さんのウイスキーづくりへの真摯な姿勢。短い時間の中でそれぞれの思いが溢れる素晴らしいトークセッションとなりました。どうもありがとうございました。
高崎 晃(たかさき あきら)
大阪市東住吉区生まれ。日本を代表するロックバンド LOUDNESSのギタリスト。中学の頃からロックに影響されてギターを弾くようになり、すでに友人たちとディープ・パープルの曲名から付けたと言われる「レイジー」でバンド活動をスタート。高校時代には “すごいギタリストがいる”と学校中の話題となる。16歳でデビューし、レイジー最後のアルバム『宇宙船地球号』でその才能を開花。1981年にLOUDNESSを結成。その後世界進出し、1986年にはアルバム『LIGHTNING STRIKES』が全米ビルボード総合チャートで64位を記録するなど、世界的な人気を集める。高度なテクニックに裏打ちされたギタープレーや楽曲は多くのファンを魅了し、国内外のミュージシャンにも大きな影響を与えている。
影山 武嗣(かげやま たけし)
東京都港区六本木に生まれる。区立麻布小学校、区立三河台中学校、都立石神井高校を卒業後、ホテル専門学校を経て、ホテルメトロポリタンに入社。メインダイニングで5年間レストランサービスを学ぶ。1992年サントリー株式会社に転職。業態開発部スーパーバイザーとして飲食店の企画開発業務、接客サービスの指導に従事。子会社に転籍後、店舗統轄責任者として15店舗のオープンに携わる。2002年、前職の先輩、同僚と共に銀座3丁目にダイニングバー「欅」を開業。9年間店舗責任者として陣頭指揮を執る。2011年理想の店舗の実現を目指し「BAR KAGE」をオープン。現在に至る。
屋久 佑輔(やひさ ゆうすけ)
東京都練馬区出身。埼玉県川口市のバーで働くかたわら、全国の蒸溜所を訪ね歩きウイスキーの奥深さに魅了され『ウイスキー造りに携わりたい』という想いを抱くようになり、2017年長濱蒸溜所入社。当初は仕込み・蒸溜を担当、現在はチーフブレンダーとして勤務。兄の影響でギターを始めた経験もあり、無類の音楽好き。2020年World Blended Whisky AMAHAGANシリーズは英国コンペティションにてAMAHAGAN Edition No.3部門最高賞を獲得。日本一小さな蒸溜所で世界一大きな夢を持ち、ウイスキー造りに日々励んでいる。
「SUNBURST 極 〜 KIWAMI〜」テイスティングコメント
深みのある琥珀色。トップノートではオレンジやグレープフルーツを想わせる柑橘の甘味と爽やかな酸味。濃厚な麦芽香。時間経過と共に次第に立ち上がる力強いスモーキーなアクセントが全体の香味を更に引き立てます。哀愁漂う甘くメロウなアロマがウイスキー全体に優しく広がります。瑞々しく柔らかな口当たり。黒糖やドライフルーツ、ベリーキャンディーを想わせる濃厚さと甘味を兼ね備えたバランスの良いテイスト。ドライかつスモーキーなアクセントが長く続きます。
●容量/700ml●原材料/モルト●アルコール/47%●ボトリング本数/5,000 本●希望小売価格/11,000円(税込)