2022.10.20 Thu
日本初上陸!イスラエル初のシングルモルトウイスキーを語り合う10月27日「THE M&H」から新発売。死海熟成や日本限定シングルカスク、全4種を味わう。
静谷和典(マスター・オブ・ウイスキー)× 渡辺剛博(株式会社サイズ代表取締役)「THE M&H」日本上陸のきかっけや先行販売の5アイテムの味わいなどについては前編をご覧ください。前編はこちら
「THE M&H 蒸溜所」のウイスキーは、イスラエルの気候と造り手の勤勉さの両方が生かされている(渡辺)
静谷 今年8月に日本初上陸した、イスラエル初のウイスキー蒸留所「THE M&H」。第1弾となった5種は、それほど寝かせているわけじゃないのに、まろやかでクリーミーですべてに樽の持ち味が上手に生かされていました。これはイスラエルの気候のせいなのでしょうか? あるいは技術によるものですか?
渡辺 気候と造り手の研究力や勤勉さの両方が生かされて、このクオリティを創り上げていると思うのです。やり取りを経て、「THE M&H」は非常に生真面目な蒸留所だと感じています。というのも、彼らはウイスキーに関しては、最初からシングルモルトしか出していないんです。習熟のために他の蒸留所原酒とブレンドするということはよくあることですし、僕自身も否定的ではありません。でも、彼らはそれすら一切やらない。自分たちの原酒、それも基本的にはシングルモルトのみを造る点に生真面目さを感じます。
2022年10月27日発売、死海熟成や日本限定シングルカスクなど4種をテイスティング。
渡辺 今回、第2弾として登場するのは、「頂点」の意味をもつ「APEX」が2種。「THE M&H」の最上位ラインナップとなります。そして、シングルカスク2種は日本限定で、ラベルもまた日本の国旗が入った限定仕様となります。
M&H APEX DEAD SEA
渡辺 「THE M&H」最大の特徴ともいえる死海のほとりに建つホテルの屋上に熟成庫を設け、寝かせたものです。海抜マイナス423mという世界で最も低い場所で熟成された、唯一無二のシングルモルトウイスキーです。
静谷 きれいですね! 香りはマイルドで、クッキーのよう。お菓子のいい香りが漂う「伊勢丹 新宿店」の地下みたい。(笑) あっ、おいしい! 度数もちょうどよく、これはびっくりですね。死海熟成と聞くと企画ありきのように勘ぐってしまいますが、きちんとおいしい。度数が高く、樽感やモルティ感が長い余韻につながっています。焼き菓子のような余韻がずっと続いている感じです。塩味も感じますね。ちょっと塩バターのようです。
M&H APEX Peated Fortified Red Wine Cask
静谷 あ~、おもしろいなぁ。香りがまた全然違う。僕にとっては上げポイントなのですが、ボトルの中にわずかに沈殿物があります。無濾過ということですね。ウイスキー本来の味わいが期待できます。香りはベリー系。いちごとチョコレートのケーキのようでもあるし、スモーキーさも。味わってみると……、ああっ! 思い切りヨードという感じではなく、野焼きや囲炉裏といったささやかなスモーキーさの中に、ベリーのジュースやデザートのような感じを拾います。こういったワイン樽使いもトレンドになりつつありますね。
渡辺 僕もこれが大好きです。ピート麦芽をベースにイスラエルのポートワインスタイルの樽で熟成したもので、この複雑味にはまってしまいます。
M&H SINGLE CASK ex-Bourbon
静谷 日本の国旗入りなのが目を引きますね。香りは、もろにバナナを感じます。ホイップクリームのスイート感、マドレーヌなど卵を使った焼き菓子のニュアンスもあり、バナナのクレープやシュークリームのよう。熟したフルーツのニュアンスも感じられます。度数が66%と高く、少しずつ加水しながら楽しんでのいいと思います。加水してみると……ああ、めちゃめちゃおいしいですね! オレンジのようなシトラス感も出てきます。
M&H SINGLE CASK STR
静谷 アールグレイやダージリンのような紅茶っぽい感じがします。時間を置くと、カフェオレのような感じに変化します。ベリーチョコのニュアンスもありますね。加水をしてみると、いっそうきれいな感じになります。黄色い色味の果実、焼き菓子を彷彿させるバーボン樽と真逆といってもいいような、STR樽熟成による赤い色味の果実や紅茶、コーヒーなどのニュアンスが広がります。
渡辺 9種全ラインナップを味わってみていかがですか?
静谷 驚くことに、ひとつとしてネガティブなところがありませんでした。論より証拠。はやく皆さんにも飲んでいただくのが一番ですね。
渡辺剛博(わたなべたかひろ)
CPUクーラーといった冷却系アイテムをはじめ、PCケースや小物パーツまでパソコンまわりの製品を幅広く取り扱うメーカー兼商社である株式会社サイズの代表取締役。2003年に創業してオリジナル商品をつくりはじめ、2008年にサイズを設立。長年の貿易・卸売・代理店業務のノウハウを生かし、2022年夏より「サイズ酒販」の看板を掲げ、イスラエル初のウイスキー蒸留所「THE M&H」のウイスキーの輸入を始動。
静谷和典(しずや かずのり)
新宿三丁目「BAR LIVET」「BAR 新宿ウイスキーサロン」オーナーバーテンダー。ウイスキーベースのカクテルの開発・普及も目指す。「CT Spirits Japan カクテルコンペティション2021」にてシングルモルトを使用した“ウイスクテイル”(ウイスキーをベースとしたカクテル)にてカクテル日本チャンピオンに輝く。ウイスキー文化研究所が主宰する知識、鑑定能力を問う資格認定制度の最難関「マスター・オブ・ウイスキー」を取得しており、雑誌『Whisky Galore』のテイスターとしても活動中。2022年秋には、ウイスキーをストレートで愉しむためのグラス「ウイスキーグラス 咲」を開発。「バーテンダーしずたにえん」として、TikTokやYouTube、 SNS でも幅広く活躍する。
インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。