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2023.02.13 Mon

伝統工芸士・銀器職人 笠原 宗峰 氏ザ・バルヴェニー オリジナル銀器
開発ストーリー

クラフトマンシップ プロジェクト
世界で高い評価を得ているクラフトウイスキー、ザ・バルヴェニー。そのザ・バルヴェニーをクラフトウイスキーたらしめる5RARE CRAFTS(ファイブ レア クラフト=類い稀なる5つの職人技 )と「5人の匠」。確かな技術と比類なき職人魂が織りなす深い味わい。そんなザ・バルヴェニーを味わうオリジナルグラスづくりのため、スコットランドのザ・バルヴェニー蒸溜所を訪れた伝統工芸士、笠原宗峰氏。今回は笠原氏の銀器製作のプロセスをレポートします。


笠原 宗峰 氏(かさはら・しゅうほう)プロフィール


伝統的工芸品「東京銀器」の伝統工芸士。
東京都優秀技能者。
文京区技能名匠者。
1956年文京区本郷に笠原銀器製作所を設立。父宗峰(勲七等授章)の後を継ぎ鍛金工芸を主にした金銀器製作に携わり、 現在も日夜研究し続け、新しい技法に挑戦。 文化財の修理修復複製なども手掛け、国宝出雲大社秋の鹿蒔絵螺鈿手箱、三嶋大社 梅蒔絵手箱の複製なども手がける。
(写真:立木義浩氏撮影)



 
ザ・バルヴェニー蒸溜所に息づく職人魂。
そのクラフトマンシップにインスパイアされ、生まれるアイディア。


2022年の秋は、笠原氏にとって忘れられない季節となった。ザ・バルヴェニー蒸溜所で直接そのクラフトマンシップに触れたいと、海を越え、スコットランドの地に訪れたからだ。専属農家による地産大麦、昔ながらの製法を守り続けるフロアモルティング、専属の職人が毎日コンディションを整えるポットスチルと自社所有のクーパレッジで専属の樽職人がメンテナンスする熟成樽。ザ・バルヴェニー蒸溜所で目にしたもの全てが、職人としての誇りとウイスキーづくりに対する熱い思いに溢れるものだった。東京に戻り、文京区の笠原銀器製作所でオリジナルグラスの構想を練っていると、蒸溜所で触れた職人の魂たちが、まるで耳元で語りかけてくるような感覚に陥り、自然に手元のペンが走り始めた。

ザ・バルヴェニーの魅力を余す事なく伝える、
3種のグラスの設計。


飲み方によって、様々に表情を変えるザ・バルヴェニーの美味しさを、余すことなく伝えたい。そんな思いから、3種のグラスの設計を着手した笠原氏。
まずは、常温でザ・バルヴェニー本来の魅力を伝えるテイスティンググラス。鼻先でふっと香る樽香を感じながら、少しだけ口に含むと蜂蜜のような甘さと深みのある味わいが広がる、あの瞬間に最適なフォルムを作りたい。そして、冷えたグラスの中で少しづつ溶ける氷とともに、ザ・バルヴェニーの味の変化を楽しめるロックグラス。懐の広いグラスの中で広がる、芳醇な甘い香りと深いコク。1杯飲み切るまでに何度も手にとるであろうロックグラスは、掌で感じる重みや存在感にもこだわりたい。爽やかなソーダ割りでザ・バルヴェニーを楽しむことも想定し、タンブラーも設計。よりフルーティさを感じるソーダ割は、その舌触りを邪魔せず、滑らかに口に運べるよう絶妙な飲み口を実現したい…。

何かに導かれたように、姿を現すバルヴェニーボール。


グラス形状の設計と同時に、加工についてもイメージを膨らます。構想を練りながら脳裏に立ち上るのは、蒸溜所で見たポットスチルの最大の特徴である“バルヴェニーボール”だった。毎日、専属の職人により手入れをされる銅製の窯は、ザ・バルヴェニー独自の個性的な形状で、笠原氏に強く印象を残した。

銀器と同じく、金属との対話によって品質を保つ職人技の領域。ザ・バルヴェニー蒸溜所で目にした、窯を叩いてコンディションを知る銅職人の動作が、銀器に槌目を施す笠原氏自身の動きに重なる。その時、偶然とも必然とも感じる、ロックグラスとタンブラーの図面が頭の中で重なり、まるでバルヴェニーボールのような形が脳裏に姿を現した。「蒸溜所でポットスチルを見た、あの時の印象をグラスで表現できるかもしれない。」笠原氏の構想が固まった。



 
銀器ならではの「重み」と形状の間で作ってはつぶし、つぶしては作り、の試作づくり。


構想が固まり、いよいよ試作づくりが始まった。図面どおりにまずはサンプルを製作するも、銀器特有の課題が立ちはだかる。「重み」だ。純銀を使用する銀器は、こぶりなカトラリーでも手にずっしりと重みを感じる。これがロックグラスやタンブラーとなれば、日常使いが難しいほどの重量になる。かといって小さなグラスにしてしまえば、丸氷が入らない…。ならばと厚みの調整をするも、厚みは飲み口を左右する重要かつデリケートな要素だ。

こだわり抜いた「飲み口」と「フォルム」それはまるでザ・バルヴェニーの職人としての在り方だった。


飲み口はあくまでも薄く。グラスの存在すら忘れさせてくれるような体験を銀器で実現させたい。口に触れた時の感触、ザ・バルヴェニーが口の中へに流れ込む時の速度と感覚。あらゆる感度を研ぎ澄ませ、最適解を探し続ける作業が続く。そして同時に実現したい、ザ・バルヴェニーならではのフォルム。蒸溜所で感じた、あの決して華美ではないのに確かな品質を感じる、本物の佇まい。多くは語らず、主張せずとも伝わる生真面目なほどの誠実さ。それは職人の在り方そのものだ。

やっと完成した、ザ・バルヴェニーでなければ実現しえない特製オリジナルグラス。


幾度とない試作製作を経て、やっと完成したグラスは、セットするとバルヴェニーボールが現れるというデザイン。日本にいながらにして、あのザ・バルヴェニー蒸溜所のクラフトマンシップに触れられるかのような仕様だ。テイスティンググラスはまさにザ・バルヴェニーの味わいを隅々まで堪能できる形状。シンプルでありながら計算しつくされたフォルムもまた、ザ・バルヴェニーそのものだ。

ロックグラスは、じっくり飲むスタイルに適した重量感と口当たりの良さ。グラスの中で味わいと香りが変化していくのを想定した、丸みをおびたフォルムでザ・バルヴェニーの風味を包み込む。とにかく口当たりのいいタンブラーは、まるでグラスの存在を忘れるかのような飲み口。ソーダで割ってややフルーティに感じられるザ・バルヴェニーの味わいを、より爽やかに、スムースに感じさせてくれる。ザ・バルヴェニーを味わうためだけに開発された、日本の銀器製作の粋を集めた特製グラス。伝統工芸氏、笠原宗峰氏が手掛けたグラスで味わう職人魂宿るザ・バルヴェニーは、また格別な一杯であるに違いない。


 
製作を終えて~笠原宗峰氏コメント


今回の仕事は私の長い職人人生の中でも、非常に意義深い、生涯忘れられない仕事となりました。ザ・バルヴェニーの職人魂に共鳴しながら創作できたことはもちろんの事、普段銀器に触れない方にもこのグラスを通じて、銀器の良さを知ってもらえるかもしれない。そう思うとまさに職人冥利につきる仕事でした。本当にありがとうございました。
 


   

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