2023.03.15 Wed
Woodford Reserve Signature Cocktails進化し続けるクラシックカクテルで
蜂蜜のような甘味と複雑味を増幅
松尾 民子さん / Bar Landscape.PR:ブラウンフォーマンジャパン
2022年 バータイムズは、20人のトップバーテンダーがつくるウッドフォードリザーブのオールドファッションドをご紹介する「Old Fashioned Original Cocktail」を実施。大きな反響をいただきました。第二弾となる2023年は、オールドファッションドに限定せず、それぞれの個性を活かしたシグネチャーカクテルをテーマとした企画「Woodford Reserve Signature Cocktails」を展開いたします。さらに、本企画では、ウッドフォードリザーブがブランドテーマに掲げる〈女性の活躍〉に関連して、15人の女性バーテンダーのストーリーに注目します。カクテルについてだけでなく、バーテンダーという仕事を選んだきっかけ、その魅力や難しさ、これからの目標など、バーテンダーとしてのストーリーもじっくりとお訊きします。
バーテンダーとは“付加価値を付ける仕事”
扉の先に広がるのは、長さ7mものカウンターやゆったり席を配したのびやかな空間。アンティークのモチーフが、オーセンティックな上質さに暖かみを与える。店内に入ってすぐ右側の棚には、2つのトロフィーが光る。オーナーバーテンダーの松尾民子さん、そして松尾一麿さんがそれぞれ“日本一”に輝いた一般社団法人 日本バーテンダー協会主催「全国バーテンダー技能競技大会」のものである。
松尾さんがバーテンダーという職業に興味を持ったのは、20歳の頃。東京・浅草で人力車の車夫の仕事をしていた時だという。
「2年ほど走りました。もともと剣道や少林寺拳法をやっていて体育会系なんです(笑)。人力車にも常連のお客さまがいて、ある仲のよい女性のお客さまにバーに連れて行っていただきました。初めて知る世界でとても魅力的でした。その方が『人力車とバーテンダーの仕事はちょっと似てるよ』とおっしゃるのです。後になってわかりましたが、どちらも“付加価値を付ける仕事”なのですね。会いたい人がいるから通ってくださる、という点でも似ているように思います」
一杯入魂で、飲む人にエネルギーを与えたい
本格的にバーテンダーを目指そうと思ったのは、バーでのアルバイトがきっかけだった。幼い頃から飲食をなりわいとする家系で育ち、飲食店の大変さを感じていた。自分は他の道を、と思っていたが、アルバイトをしたバーで素晴らしい人達と出逢い、飲食の仕事のおもしろさとサービスや接客業の奥深さを知ることになる。その頃から、バーテンダーとしていちから学びたいと思うようになった。
東京・赤坂「Bar Blossom」に入社し、バーテンダーのレジェンドといわれる 毛利隆雄氏に師事して経験を積んでいく。その間に、2010年には関東の若手バーテンダーの登竜門、一般社団法人 日本バーテンダー協会主催「第22回 関東ジュニアバーテンダー カクテルコンペティション」と「第6回 マリーブリザールカクテルコンペティション」でともに優勝する。
しかし、「Bar Blossom」は保険組合の施設で組合員しか利用できないため、「飲みに行くね」と言われてもいつも断らなくてはならず心苦しい思いをしていた。
約7年間勤めたのち、毛利氏に相談して退職。ご縁があって2013年に銀座「Bar OPA」で働くことになった。
「オーパでは現オーナーの大槻麗子氏に大変お世話になり、バーテンダーとして本当に多くの経験をさせていただきました。」
と松尾さんは振り返る。
2016年には、一般社団法人 日本バーテンダー協会主催「第43回 全国バーテンダー技能競技大会」で総合優勝し、日本一に輝いた。 松尾さんはバーテンダーという仕事のおもしろさをこう語る。
「お酒を介して人に感動を与えられる仕事だと思います。1杯に向き合うことで、誰かを少しだけ幸せにできるうれしさがあります。モットーは一杯入魂。気を込めてお客さまにエネルギーを与えているつもりですが、逆にこちらが元気を頂いていたりすることも多いです。たくさんの方々と接することで、自分を知り、高めていける機会があるのもおもしろいところ。長くお付き合いするお客さまが増えていくのも、とてもうれしいことです」
大切にしていることはたくさんある。
「初心を忘れないこと。いつでも初心に戻れること。感動すること。感謝を忘れないこと。努力すること。最後までやり遂げること。小さなことでも気づける人になること。 あと、大切なことは笑顔です」
夫と開いたバー「Landscape.」という店名には、「ただそこにある風景ではなく、世界のお酒や仕事に関わるものの生産地へ赴き、実際に感じ、生産者の想いや歴史・文化など、その景観を持ち帰ってお客さまと共有したい」という想いが込められている。
銀座の地階、暖かみのある扉の先は、ふたりのフィルターを通したどこの国でもない景観が広がっている。カクテルと共に、まだ見たことのない景色を味わおう。
「レシピや熟成年数、樽の焦がし具合などにより、香りや味わいの違いを愉しめるアメリカンウイスキー。コーンやライ麦由来の甘味や香ばしさ、ボリューム感のある味わいは、他のウイスキーとは違うワイルドな印象を感じます。親しみの持てる味わいで、カジュアルに愉しめるのもいいところです。ウッドフォードリザーブは味わいのバランスがよく、柔らかさの中にしっかりした芯を感じます。“芯”というのは、ボディ感や旨味というイメージです。ストレートはもちろん、熟成感も感じられ、加水した時の伸びのよさは素晴らしく、ロックや水割り、ソーダ割りなどさまざまなスタイルで愉しめます。カクテルベースとしては、他の素材と調和しつつもウッドフォードリザーブの個性がちゃんと出てくれるので、カクテルに華やかさと奥深さをもたらす優秀なウイスキーだと思います。通常から自店でもオールドファッションドをはじめ、いろんなカクテルに使っています。“旨味” という点においては、一番使いやすいウイスキーです」
「現在のオールドファッションドといわれるカクテルは、1800年代は単に“ウイスキーカクテル”という名前で呼ばれていました。カクテルを記録、 分類した最初の人物といわれるジェリー・トーマスが1887年に『改良されたウイスキーカクテル(Improved Whisky Cocktail)』を紹介し、以来長年にわたり進化してきました。今回は、このアメリカンウイスキー、ビター、砂糖を組み合わせたクラシックでいて、 進化し続ける現代的な魅力を持つカクテルのツイストです」
松尾さんのアレンジは、砂糖を使う代わりに、薬草系リキュールシャルトリューズ ジョーヌを使うこと。ウッドフォードリザーブの蜂蜜のような甘味と複雑な味わいを増幅させるよう素材を探した。
「薬草系リキュールなど何種類も試してみて、シャルトリューズジョーヌがぴったりはまりました。ビターズもいろいろ試しましたが、必要がないくらいウッドフォードリザーブとシャルトリューズとの組み合わせはお互いのよさを引き出してくれます。シャルトリューズは個性が強いのですが、ウッドフォードリザーブがボディ感や濃醇さ、熟成感もあるので負けないのです。マラスキーノとアブサンは香りに華やかさと軽やかな味わいをもたらす重要な役割があることに気づき、このカクテルに向き合う中で、あらためて長く愛されてきたクラシックのレシピの意味と偉大さを知ることとなりました」
- Improved Whiskey Cocktail
- 〈レシピ〉
- ・ウッドフォードリザーブ 45ml
・シャルトリューズ・ジョーヌ 15ml
・マラスキーノリキュール 1tsp
・アブサン 2dashes
・レモンピール(約5cm) 1 片 - 〈つくり方〉
- ①グラスにウッドフォードリザーブ、シャルトリューズ、マラスキーノリキュールを入れ、スワリングしてなじませる。
②ミキシンググラスに氷(分量外)を入れて回して水気を切り、アブサンと①を入れ、ステアする。
③オールドファッションドグラスに氷(分量外)を入れ、②を注ぎ、レモンピールをツイストする。
松尾 民子(まつお・たみこ)
千葉県出身。「Bar Landscape.」オーナーバーテンダー。2006年より東京・赤坂「Bar Blossom」入社。2010年、一般社団法人 日本バーテンダー協会主催「第22 回 関東ジュニアバーテンダー カクテルコンペティション」「第6回 マリーブリザールカクテルコンペティション」にてともに優勝を果たす。2013年「Bar OPA 銀座店」入社。2016年一般社団法人 日本バーテンダー協会主催「第43回 全国バーテンダー技能競技大会」総合優勝し、2017年、デンマークで開催された「ワールド・カクテル・チャンピオンシップ」に日本代表で出場。2017年より「Bar OPA 門前仲町店」店長を務める。2019年、銀座「Bar Landscape.」開店。
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。
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