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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2023.04.25 Tue

歴史と文化が宿る文京区、匠の居るBAR「奇をてらわず。所作はスピード感のある”機能美”で」

長谷川森人さん(Bar長谷川/根津)
PR:サントリー

確かな技術と比類なき職人魂が深い味わいを織りなすクラフトウイスキー、ザ・バルヴェニー。「ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト」では、ザ・バルヴェニーを味わうのにふさわしい専用オリジナルグラスを日本の伝統工芸士、東京銀器の笠原宗峰氏が手掛けた。笠原氏が工房を構える東京都文京区は、日本有数の文教地区であり、東京銀器や東京籐などの伝統工芸が息づき、歴史的建造物が残る歴史と文化に彩られる街。そして、実は良質なバーが点在するエリアでもある。プロジェクトの最終章として、ウイスキーの豊富な知識と確かな技術を持つ4軒のバーを探訪。ウイスキーをいっそう味わい深く提供する“匠”の流儀を識(し)る。

「スタンダード」を真摯に。当たり前のことを当たり前にやる 

1杯目の注文の8〜9割が「ハイボール」である。
提供は実に早い。無駄のない動きで、瞬く間に乾いた喉を潤すのにぴったりのハイボールが登場する。
氷はなし。電気冷蔵庫がなかった時代に生まれたクラシカルなスタイルを踏襲しているからだ。
ハイボールに限らず、スタンダードカクテルの装いも、味わいも、視線を上げれば内装の飾りも。混じり気のない往年のバー然としていて、いつしかそれが安心感につながってくる。
「奇をてらったことはしません。当たり前のことを当たり前にやるだけです」と、オーナーバーテンダーの長谷川森人さんは言葉少なに話すだけだが、すみずみまで掃除の行き届いた店内や、美しいグラス、2杯目以降に頼んだカクテルやロックの氷の美しさに、真摯な姿勢がうかがえる。

独立の場を根津にしたのは、物件探しをする中で、現在の地に「ご縁があったから」だと言う。

「この辺は戦災を免れているエリアで、代々住まれている方が多く、昔ながらのコミュニティがしっかりしていますね。街は静かですし、早い時間は近所にお住いのお客様が多く、全体的に落ち着いたお客様層だと感じています」


「Bar長谷川」オーナーバーテンダーの長谷川森人(はせがわもりひと)さん。

地産の大麦や銅器職人のメンテナンス、伝統の造りが深い熟成感を生む

選ばれしウイスキーが並ぶバックバーで、ザ・バルヴェニーはオリジナルの銀器のグラスとともに輝きを放っている。

「バランスがよく、どんな方にもお薦めしやすいウイスキーです。香りはリンゴやベリーのようなニュアンスがあり、ほんの少しチョコレートっぽさもある。総じてクリーンな印象です。味わいは、甘さと重厚感、ボディ感があり、麦っぽさを感じます。余韻は長く甘やかです」

見知ったウイスキーながら、長谷川さんはあらためてザ・バルヴェニーが守る5つの職人技を知る。蒸溜所周辺の地元農家と大麦を生産していること、伝統的なフロアモルティングを守っていること、蒸溜機のメンテナンスなどをする銅器職人(コッパー)が常駐していること、ハイランドで唯一、樽職人(クーパー)を専属で雇用していること、後熟を開発したモルトマスターがいること。

「とくに興味を引かれたのは、『出来のいい麦芽を選定して、ザ・バルヴェニーに使っている』』という点でしょうか。よく『ローカルバーレーは熟成感が早まる、麦っぽさが出る』などと言われますが、それがしっかりした熟成感につながっているのかもしれません。銅器職人が常駐している蒸溜所はほぼないと思いますし、フロアモルティングを守る蒸溜所もわずか。これだけのことを守っている蒸溜所は本当に稀有でしょう」


「これほど職人の技や伝統的な製法を守っているウイスキーはなかなかありません」

落ち着いた輝きを放つ、純銀製のザ・バルヴェニーのオリジナル銀器。

「リクエストの真意を汲み、所作はスピード感をもってきびきびと」

ザ・バルヴェニーは、純銀製のオリジナルグラスに注いで提供する。つくり手は、同じ文京区に工房を構える伝統工芸士、笠原宗峰さんだ。

「手作業の打ち出しで、こんなにも薄く手ざわりよく美しくつくれるなんて、まさしく職人技。銀器といえば、フォークやナイフといったカトラリー類ぐらいしか触れることがありませんでした。グラスは高級感がありますし、新鮮な感じがしますね。ウイスキーと氷を入れると、グラスの内側の白銀のような色味に映えてとってもきれいです」

ロックの氷は、貫目氷で仕入れ、割り出し、包丁で形を整えて仕込んだもの。
氷から溶け出すわずかな水分が均一に広がるように、そして氷が左右どちらかに偏らず飲みやすいように。氷が極力中心に収まるべく、ロックグラスの丸い底の形状に合わせて氷の底の形状も包丁で整えている。

「営業中は、お客様の要望をちゃんと考えるように心がけています。たとえば『甘くないカクテルを』とおっしゃった場合、その言葉の奥にある本当の要求はどういうことなのか、と汲み取るようにしています。丁寧であることも意識していますが、お待たせしすぎてもいけません。所作は、スピード感をもって、かつきびきびとした“機能美“でありたいんです」

モットーは、「奇をてらわず、当たり前のことを当たり前にやるだけ」と長谷川さんは言った。それは、誰にとっての「当たり前」なのか?
覗き込んだグラスの中には、一点のくもりも歪みもない澄んだ氷と赤味を帯びた深い琥珀色のウイスキーが美しく光っている。
甘く繊細な熟成香と深いコク。そして、何を語らずとも、長谷川さんの「当たり前」が享受できる幸せを味わった。


国宝の修繕なども手掛ける笠原宗峰さんによるグラスは、打ち出しでいてなめらかな手ざわり。

貫目氷で仕入れ、マイナス20度ぐらいの冷凍庫で少し緩めてから形を整えて用いる。



グラスの形状に合わせて形を整えた氷を入れてステアする。何気ない動作ひとつひとつに理由がある。

グラスの内側は表面より明るい銀色で、氷やウイスキーの琥珀色が美しく映える。


長谷川森人(はせがわ もりひと)
「Bar長谷川」オーナーバーテンダー。大学生の時に、1918年に創業し、独自の暖簾分け制度を展開する老舗バー「サンボア」の大阪・梅田「バー・サンボア ヒルトンプラザ店」にてアルバイトをする。大学卒業後、バーやそのほかの業種のアルバイトを経て、東京・銀座「ロックフィッシュ」にて約11年にわたって研鑽を積む。2015年、自身の店を開店。

 
インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。



   

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