2023.05.7 Sun
新商品「EMPIRICAL Symphony 6 」発売記念インタビュー交響曲第6番にインスピレーションを得たスピリッツは、多彩な香りとだしのような繊細さ
大場健志さん/bar cacoi世界一のレストラン「noma(ノーマ)」出身のクリエイターが、革新的なスピリッツをつくり続けるフレーバーカンパニー EMPIRICAL(エンピリカル)から、待望の新商品「Symphony 6 (シンフォニーシックス)」が発売。先行販売されたアメリカではすでに多くの話題を集めている。「Symphony 6」は、ベートーヴェンの交響曲第6番にインスピレーションを受けてつくられたもので、これまでのEMPIRICALの中で最も多くのボタニカルを使用している。その味わい、香りとは?日本でリリースする以前からEMPIRICALの行方を見続けてきた銀座「bar cacoi」の大場健志さんに、解説とカクテルの提案をしてもらう。
銀座「bar cacoi」の大場健志さんにとって、EMPIRICALは、プロトタイプの頃から知っている思い入れのあるスピリッツだ。出会いは、2018年の秋。ミシュラン三つ星や「世界のベストレストラン50」で4度も1位に輝いた世界最高峰のレストラン「noma」の元シェフ、ラース・ウィリアム氏が「noma」を辞めて蒸留所を立ち上げた頃である。デンマークのクラフトビールの日本イベントの際に来日し、共通の知人と共に大場さんのバーへ訪れ、ラース本人からEMPIRICALのサンプルを手渡されたのが始まりだ。
「ちょうど『noma』のドキュメンタリー映画を観た直後だったので、『本物だ!』という感じで(笑)。手渡されたサンプルで、即興でカクテルをつくってお出ししました。喜んで頂けたと思います」
そんな縁から、2021年秋の待望の日本初リリースの際は、梅の種の核の部分を使った「THE PLUM,I SUPPOSE(ザ プラム アイ サポーズ)」、メキシコの少数民族が高地で栽培した特別なスモークドライチリを用いる「Ayuuk(アユーク)」、鹿児島県枕崎「金七商店」の鰹節の旨味を凝縮した「KANESHICHI(カネシチ)」の3種を予約販売ですぐ購入した。
「これまでの蒸留酒にカテゴライズできないし、飲まないとわからない“ガストロノミック”なお酒と感じました」
「Symphony 6」は、マンダリンオレンジの葉、レモンの葉、コーヒーの葉、カシスの葉、イチジクの葉、さらに香水の原料でも用いられるアンブレットの種やベチバーの根が加わり、複雑で香り高いスピリッツに仕上げられている。
大場さんに、その印象を訊ねてみた。
「今までのラインナップが、梅の核やスモークドライチリといったシングルフレーバーだったのに対し、より複雑な香りを持つようになったというのが第一印象です。淡い色が付いているのも“第2章”が始まった感がします。全体的にとてもクリアで、熟成感とは違うウッディーノートを感じます。香りの要素が多彩で、最初飲んだ時に頭が混乱するというか。ベチパーやアンブレットといった葉の香りはするのに、苦味やえぐみは一切ありません。これほど香りが豊かだと甘い味わいを想像してしまうのですが、実際はすっきりドライです」
香りの多彩さと味わいのクリアさのギャップを語る大場さん。これまでのラインナップと大きく異なる点と、カクテルへの活かし方についてこう捉える。
「今までは、スピリッツでありながらひとつの調味料的でしたが、『Symphony 6』は、ミックススパイスのような多彩さがあります。カクテルにする際は、『Symphony 6』を”きれいなだし”と捉えると使い勝手のよさが見えてきます。甘味やボディ感を付けてメインに立ててショートスタイルにしてもいいし、スタンダードカクテルに少し加えて香りの要素を持ちあげてインプルーヴしてもいい。紅茶に加えてロングカクテルにしてもいいと思います。でもすごく繊細で、紅茶に直接加えてしまうと存在をやや探さなくてはいけない。入っていないものと比べると明らかに違うのですけどね。それもだし的な感じがします。多種の葉の種類を使っているので、コーヒーの方にもベリーにも柑橘にも引っ張れる。葉の要素自体や何の葉か考えてそこから要素をつなげることもできる、コネクタがたくさんあるお酒だと感じます」
大場さんが提案する「Symphony 6」のカクテルは、マンハッタンをイメージしたショートカクテル。アルコール度数はしっかりあるというのに、味わいは極めてクリアで滑らか。香りは華やかさで満ち、次世代のカクテルの輝きを放っている。チェイサーに添えるのは、ダージリン紅茶である。
「『Symphony 6』を主役に梅の香りが豊かな『THE PLUM,I SUPPOSE』を加えてベースとし、ベルモットのワイン感はデンマークのナチュラルなチェリーリキュールで表現しています。アガベシロップを加えたのは、甘さは控えめなのにこっくりとしたボディ感が出るから。ウイスキーは、少しだけ樽の要素を加えたいけれどピート感はない方がよく、ほのかなフルーティー感があるもの、という考えから選んでいます。チェイサーに紅茶を添えたのは、『Symphony 6』が持つ葉のフレーバーを紅茶でつなげるという意味もありますし、単純に混ぜてしまうとせっかくの繊細なフレーバーが消えてしまうためです。先にカクテルを召し上がってから、チェイサーの紅茶を口に含んでみてください。2つで1つのカクテルとして成立させるイメージです」
カクテル名「Flight To Denmark」は、ジャズピアニスト、デューク・ジョーダンの生涯を代表する名盤の1曲より。
うっとりするような香りと美味に、夢見心地な世界へ飛行を愉しもう。
- 「Flight To Denmark」
- 〈材料〉
- EMPIRICAL Symphony 6 30ml
EMPIRICAL The Plum, I Suppose 20ml
チェリーリキュール
FREDERIKSDAL KIRSEBÆRVIN 25ml
アガベシロップ 10ml
BUSHMILLS
SINGLE MALT 10 YEAR 1bs
pダージリンティー 適量 - 〈つくり方〉
- ミキシンググラスにすべての材料と氷(分量外)を入れ、ゆっくり10回ほどステアする。
グラスに注ぐ。紅茶をチェイサーに添える。
大場健志(おおば たけし)
銀座「bar cacoi」オーナーバーテンダー。1976年生まれ。都内のバーで経験を積み、2006年独立。
店名は茶室を意味する。“クラフトとヴィンテージ”をテーマに、扱うお酒や器、フルーツを選び、素材のよさが伝わるカクテルを提供。
和酒や醸造酒、“一風変わったお酒”も揃え、お茶を使ったカクテルも得意。2019年「トークン・ビターズ カクテルコンテスト」優勝。
店舗情報
bar cacoi
東京都中央区銀座3-14-8 銀座NKビルB1F
Tel: 03-6264-0590