2023.05.22 Mon
『ニッカ セッション』からインスパイアされる音楽とは「プレイ・バッハ」の弾むような音色に
フレンチ95を『ニッカ セッション』で
金子道人さん(LAMP BAR/奈良)『ニッカ セッション』。ジャパニーズとスコティッシュモルトの伝統と技術はそのままに、これまででは考えられないブルーボトル、新たな創造や潮流を躍動的に表現したブルーのラベルデザイン、そしてカクテルベースとしての高い可能性。何もかもが新しいウイスキーなのだ。このウイスキーを創造するのに、ブレンダーがイメージしたのは「音楽」。音を奏でるようにモルトを重ねた、心地よい音楽のようなウイスキーを目指した。そんな『ニッカ セッション』からはどんな音楽が聴こえてくるのか。インスパイアされる音楽と、その曲を耳にしながら愉しみたいカクテルを4人のバーテンダーに訊く。
古都・奈良は、かつて日本の都が置かれた場所。京都よりも歴史は古く、街のいたるところに伝統的な風景が今も多く残されている。そんな歴史深い奈良は、実はカクテルの街としても知られ、オーセンティックな雰囲気の店が多くある。「LAMP BAR(ランプバー)」もその一つだ。オーナーの金子道人さんは、2015年開催の世界的なカクテルコンペティションで、チャンピオンの座を獲得した凄腕のバーテンダー。それだけに、カクテルづくりへの強いこだわりと、飲む人を唸らせる確かな腕を持つ。
その金子さんに、最初に感じた『ニッカ セッション』の印象を訊いた。
「ラベルデザインやボトルの色から感じたのは、モダンなスピリッツに近い感じ。ウオッカとかジンの新しいアーティスティックボトルのような印象でした。そういうのって今、世界的な主流でもあるんですよね」
中味についてもこれまでと違うウイスキーの印象を受けたという。
「宮城峡とベン・ネヴィスの仲の良さを感じます。海外のシェフは、“この材料とこの材料はベストフレンドだ”ってよく言うんです。まさにこの両者はベストフレンド。フルーティーで甘さがあって、少し青リンゴにも似た酸味があって。その中にちょっと分厚い味わいがあるのは余市なのかな。ひと口目にこの分厚さを感じますが、それも一瞬で弾けてスーっと逃げていく。あとはひたすら穏やかな感じです。先日、日光の中禅寺湖畔にあるホテルで仕事をする機会があったのですが、湖面にさざ波が立っていて、それがすごく穏やかに感じたんです。激しいわけではなく、かと言って静や無でもない。『ニッカ セッション』の穏やかさは、心地いいさざ波のような穏やかさなんですよね」
まるで音楽のセッションのごとく、異なる個性を持つ複数のモルトを重ね合わせ、ひとつのウイスキーとして完成させた『ニッカ セッション』。金子さんは、テイスティングで感じた特徴から、どんな音楽を思い浮かべたのか。
「僕が『ニッカ セッション』からインスピレーションを受けた音楽は、バッハ。バッハと聞くとちょっと重くて、複層的なイメージがあるんですけど、これはジャック・ルーシェというフランス人のピアニストが弾いたバッハなんです。軽やかで、カンカンと高いピアノの音色は、すごくいいテンポで聴けるんです」
“音楽の父”と呼ばれるバッハの曲を、初めてジャズ風にアレンジした「プレイ・バッハ」は、ジャズファンだけではなく、クラシックやポピュラー音楽のファンなどに幅広く受け入れられ、ジャック・ルーシェの名は一躍世界に広がった。「プレイ・バッハ」は第5集まで発表され、世界的な大ヒットとなった。
ピアノの軽快なリズムと音色の心地よさは『ニッカ セッション』に通じるものがあると金子さんは言う。
「店でもよくかけますよ、明るい雰囲気にしたい時なんかにね。『ニッカ セッション』も明るいイメージのウイスキーだから、そういう部分で相性がいいと思います。グラスを持ってじっくり向き合うっていう感じのウイスキーではないので。また、コンセプトが“セッション”なので、どれが主役ってわけでもないから、いい意味で個性が強すぎないというのはすごくいいことだと思います。ウイスキー単体でも成立するけど、『ニッカ セッション』は他の何かと合わせることでその魅力が活きる、カクテル向きのウイスキーなんじゃないかな」
カクテルベースとしての『ニッカ セッション』の可能性を、世界一のバーテンダーはどう見ているのだろうか。
「ウイスキーベースのカクテルにするよりも、ジンとかテキーラといったスピリッツベースのカクテルを『ニッカ セッション』でつくるのがいいと思います。オールドファッションドやマンハッタンのような強いカクテルではなく、ジントニックみたいな穏やかなものと合わせるのがいいですね。先日、台南で開催されたウイスキーイベントに行ってきたんですけど、来場者が5万人もいて、しかもほとんどが20〜30代の若い人たち。で、ほぼみんなウイスキーのカクテルを飲んでいるんですよ。もはやウイスキーはストレートで飲むという考えはないんですよね。それが今、世界のカルチャーなんです。日本でもウイスキーをカクテルとして普通に飲む文化を『ニッカ セッション』でつくれたらいいですね」
小気味いい調べの「プレイ・バッハ」を聴きながら、金子さんが飲みたい『ニッカ セッション』のウイスキーカクテルは何かを教えてもらった。
「フレンチ95というカクテルです。ウイスキーとシャンパンを合わせたカクテルで、『ニッカ セッション』をベースにしています。シャンパンは本物ではなく、ノンアルコールでカクテルに合う自家製のフェイクシャンパンを合わせていて、これが『ニッカ セッション』と最高に合うんです」
ぶどうジュースにりんごスライスやレモンスライスをインフューズしてつくったというフェイクシャンパン。ミントの葉で皮っぽさを再現し、エルダーフラワーで華やかをプラスした。一番のポイントは塩にあるという。
「塩は強い酸味の角を取って味を丸くしてくれるんですよ。ウイスキーってレモンのような強い酸とは合わないんですけど、桃やラ・フランスみたいなやわらかい酸とは合う。このフェイクシャンパンは甘味もあって華やかで、全ての要素が『ニッカ セッション』にぴったりなんですよね。これがピートの強いウイスキーだったら違和感しかないけど、『ニッカ セッション』だから成立するんです」
軽やかな「プレイ・バッハ」とフレンチ95。このふたつを愉しむ状況を金子さんはこんな風に想像する。
「このフレンチ95はまろやかで甘くて、「プレイ・バッハ」を耳に、心も身体も緩めながら飲むのがぴったりだと思うんですよね。チリングっていう言葉がぴったりと当てはまる。リラックスともレストとも違う、疲れたから休もうっていう感じじゃなくて、チリングにはもっとポジティブな意味合いがあるなって。主役はカクテルではなく、飲んでいるその状況というか、チルタイムなんですよ。だって、ビーチサイドで飲むギムレットなんて絶対美味しくないでしょ。酸っぱってなりますよ(笑)」
ウイスキーカクテルはもはや世界のカルチャー。ホワイトスピリッツの代わりとして、もっと気楽に、もっと自由に愉しむべきだと、カクテルとしての可能性を世界一のバーテンダーは教えてくれた。
- French 95
- 〈レシピ〉
- ・ニッカ セッション 45ml
・自家製フェイクシャンパン 適量[自家製フェイクシャンパンのつくり方]
ぶどうジュースにりんごスライス、レモンスライス、ミントの葉、エルダーフラワー、塩をインフューズし、二酸化炭素を注入する。 - 〈つくり方〉
- ①氷を入れたタンブラーに『ニッカ セッション』を注ぎ、よくステアする。
②自家製フェイクシャンパンで満たし、軽くステアしてガーニッシュを飾る。
金子 道人(かねこ みちと)
和歌山と奈良のバーで修業を積み、2011年に「LAMP BAR」を開業。「ワールドクラス 2015」にて世界一に輝くと、世界中のバーでゲストシフトやセミナーをこなすなど、名実ともに世界的なバーテンダーに。2022年には台湾でカクテルブックを出版し、現在はバーコンサルティングにも携わるなど、バーテンダーとしての活躍の幅を広げている。