2023.09.12 Tue
カンパリグループ・カクテルグランプリ審査員
「アペリティーボ」スペシャルインタビュー「誰がどんなシーンで飲むか想像すれば
きっと素敵なストーリーが生まれる」
南雲主于三さん(スピリッツ&シェアリング)2023年10月、カンパリグループのCT Spirits Japanは、「アペリティーボ&パイオニア」をテーマとした日本最高峰を決めるカクテルコンペティション「カンパリグループ・カクテルグランプリ2023」を開催する〈応募期間:2023年10月1日(日) 23時59分まで〉。
大会の目的は、イタリアには欠かせない「アペリティーボ」文化の浸透、そしてカクテルの新時代を切り開くような「パイオニアカクテル」の創造をすること。
優勝者には、カンパリグループのブランドをより探求するためのイタリア研修旅行が贈呈される。
審査員は、前年優勝を果たした江刺幸治さん、カンパリブランドアンバサダーを務める小川尚人さん、世界をまたにかけて第一線で活躍するバーテンダーの南雲主于三さん、後閑信吾さん、坪倉健児さんという豪華な顔ぶれ。
大会を前に、「アペリティーボ」にふさわしいカクテルと挑戦者へのメッセージを、審査員ひとりずつに訊いた。
カンパリグループ・カクテルグランプリ2023 審査員 南雲主于三(なぐも しゅうぞう)さん
1980年生まれ。オーナーバーテンダー。98年にバー業界へ進み、2006年渡英し、メトロポリタンホテル内にある「Nobu London」に1年弱勤務し、帰国前の1ヶ月ほどヨーロッパの各地を巡りイギリスの酒や食文化に触れる。帰国後、丸の内「XEX TOKYO」のオープンに携わり、ヘッドバーテンダーに就任。2009年に現在自身が運営するスピリッツ&シェアリング株式会社を設立。東京・赤坂「The Bar code name MIXOLOGY akasaka」、お茶とカクテルをコンセプトとした東京・銀座「Mixology Salon」、クラシックカクテルの新しい定義と形を目指す東京・日比谷「MIXOLOGY HERITAGE」、カカオとボタニカルがコンセプトの東京・虎ノ門「memento mori」、日本酒、お茶、焼酎、国産スピリッツを使う東京・日比谷「FOLKLORE」、シンガポール「Mixology Salon SINGAPORE」を営む。店舗経営の他に、メーカーのプロモーション企画コンサルティング、大手外資ホテルのメニュー開発、外資酒類大手との商品開発、店舗プロデュースなどでも幅広く活躍。
仕事を終えた夕食までの時間、軽いつまみとお酒を愉しむイタリアの文化「アペリティーボ」。その食前酒の代表格といえるのが真っ赤なハーブリキュールのカンパリだ。
実は南雲さん、日常的にカンパリをソーダ割りで愉しむことが大好きだという。
「カンパリは、オレンジのフレーバーと苦味を備えていて、柑橘を入れずともそのニュアンスを持たせることができます。味自体が好きなのですが、アルコール度数が25度で割ってさらに低くすることもできるので、あまり酔いたくないけど何か飲みたいという時にも一番ちょうどいい。ジンやシャンパン(スプマンテ)を加えてもいいですね。ビターさを持ったほかの薬草酒やハーブのリキュールより味も断然やさしい。原料がルート(根)系を使ったものが多く、味が濃く重い印象なのに対し、カンパリはオレンジがベースで味が明るい。軽くてすごく爽やかでフルーティーさも感じます」
南雲さんがバーで使う時は、カンパリは冷凍保存しておくのが基本。それは、約20年前に出版されたカクテルブック『マイ・スタンダード・カクテル ベースの酒の生かし方』(柴田書店)で書かれている「カンパリは冷凍庫で冷やしたものを」というレシピに沿っているという。
「苦さの中に甘味がある味わいがきれいに出るのは冷やしてこそ、という意味なのでしょう。カンパリは使い方次第で、苦さを前面に出したり押さえることもできて、表情が変わるのが魅力。ネグローニを筆頭にバーになくてはならないリキュールで、むしろ、使い過ぎて飽きてしまわないよう注意しなければ。味の強弱を付けながら、同じカンパリを使ったカクテルでもいろんな表情が出るように使っています」
日本での日常の生活で、南雲さんが「アペリティーボ」に触れる機会はなかなかないが、25歳の頃に行ったミラノで、文化として人々の生活にしっかり根付いた光景を目にした。
「17時頃からスタートして、みんなピッツァをつまんでドリンクを飲んで、21時頃までアペリティーボを楽しんでいる。そこで帰る人もいますが、そこからやっと食事に行く人もいる。その光景がすごくヨーロッパ的で、とってもかっこいいなと思いました。あんな光景が東京の中でも見られたら素敵だと思います」
「アペリティーボ」カクテルを開発する際に大切なことはどんなことなのか?南雲さんは大きく2つのポイントを挙げる。
「ひとつは、基本的には食前酒なのでその目的を守ってほしいと思います。食前に飲むことで、食事を愉しく食べられること。それが結果的に、人と会う愉しい時間を生んだり、胃の働きを促進させたり、食欲を増進させたりする。重すぎても、強すぎても、くどすぎてもいけません。もうひとつは、飲まれるシーンやターゲットをちゃんと絞ったストーリーがあると審査がしやすいですね。たとえば日本に限らず、タイでアペリティーボを飲むとしたら、韓国でアペリティーボを飲むとしたら、と想定すると、世界観が俄然広がります。グローバルに自由に、どんな人がどんなシーンで飲むかを考えてカクテルを創ると、素敵なストーリーが生まれるのではないかと思います」
「カンパリは使い慣れたものであるがゆえに、むしろ新しさを出すことに悩まれるかもしれません。もう一度、スタート地点に立ち返って、誰がどんなシーンで飲むかを考えてみてください。カンパリのことを深く調べて、カンパリの素材や歴史からヒントをたどって、新しいカクテルへのインスピレーションを得られるとよいかと思います」
大会審査員である南雲主于三さんに、オリジナルの「アペリティーボ」カクテルをつくっていただきました。カクテルの詳細は後日公開いたします。
カカオとボタニカルをコンセプトに、食用の良質な花や木や果物と、さまざまな産地の上質なカカオを合わせるカクテルを楽しめる。胚乳部の「ニブ」や 果肉の「パルプ」など「THEOBROMA=神の食べ物」といわれるカカオを余すことなく生かしており、カカオを使ったスイーツも提供。持続可能な循環システムを構築するなど 環境に配慮した 取り組みにも貢献している。カカオの森をテーマにした内装の世界観も魅惑的。
東京都港区虎ノ門1-17-1 虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー3F
Tel: 03-6206-6625
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。