2023.09.5 Tue
カンパリグループ・カクテルグランプリ審査員
「アペリティーボ」スペシャルインタビュー「お酒のバックグラウンドと自身の思いを掛け合わせて
パッションを十分に表現してください」
小川尚人さん(CT Spirits Japan CAMPARIブランドアンバサダー)2023年10月、カンパリグループのCT Spirits Japanは、「アペリティーボ&パイオニア」をテーマとした日本最高峰を決めるカクテルコンペティション「カンパリグループ・カクテルグランプリ2023」を開催する〈応募期間:2023年10月1日(日) 23時59分まで〉。
大会の目的は、イタリアには欠かせない「アペリティーボ」文化の浸透、そしてカクテルの新時代を切り開くような「パイオニアカクテル」の創造をすること。
優勝者には、カンパリグループのブランドをより探求するためのイタリア研修旅行が贈呈される。
審査員は、前年優勝を果たした江刺幸治さん、カンパリブランドアンバサダーを務める小川尚人さん、世界をまたにかけて第一線で活躍するバーテンダーの南雲主于三さん、後閑信吾さん、坪倉健児さんという豪華な顔ぶれ。
大会を前に、「アペリティーボ」にふさわしいカクテルと挑戦者へのメッセージを、審査員ひとりずつに訊いた。
カンパリグループ・カクテルグランプリ2023 審査員 小川尚人(おがわ なおと)さん
1986年生まれ。CAMPARIブランドアンバサダー (CT Spirits Japan)。ニュージーランドやオーストラリアへの留学経験後、神戸「BAR Elixir de Longue Vie」でバーテンダーとしての修業を積む。「カンパリカクテルコンペティションアジア2018」日本チャンピオンとなり、日本代表としてミラノで開催されたアジア大会へ出場。その後、カンパリグループの日本におけるオフィシャル・ブランドアンバサダーとして活動をスタート。カンパリをはじめとしたカンパリグループブランドのカクテル開発や飲食店へのトレーニングの傍ら、全国や海外のバーでゲストバーテンティングもこなす。
2018年に開催された「カンパリカクテルコンペティションアジア」で日本チャンピオンになった小川尚人さん。エントリーの動機は、「単純にカンパリが好きだったから」だと言う。
「バーテンダーの先輩がよくカンパリの水割りを飲んでいて、それで僕も飲むようになりました。バーテンダーの修業を始めた頃に師匠にカンパリシェケラートを教えてもらい、自分でカンパリを買ってきて、2日で1本を使い切るくらいのペースでシェイクの練習をしていましたね。思い出深いお酒です」
優勝後のもっとも大きな変化は、バーテンダーとしての働き方だった。32歳、ちょうど独立を考え始めていた頃だったが、声をかけられたのをきっかけにCT Spirits Japanの社員となり、アンバサダーとしてバーテンディングをすることを選択する。お酒に携わってカクテルを創るという点ではこれまでと同じだが、店舗に立つのではなく、さまざまな状況に応じて開発や発信を重ねていく。
「新しい働き方で、新たな挑戦ができたことが1番大きな変化だったかもしれないですね。カクテルに対する考え方が大きく変わりました。東京でいろんなカクテルの構造を知ることで、技法も知識も深めて自分の中に新しい世界観ができてきました。いまの立場でのカクテル開発は、単に自分が提供したいものを創るのではありません。多彩な形態の飲食店ごとにどれだけ簡易的なオペレーションに抑えられるか、限られた素材でいかに工夫できるかといった制約のなかで最適なものを生み出す必要があります」
2022年度チャンピオンの江刺さんの研修旅行に同行した際、カンパリやアペロールといったハーブリキュールが造られる現場の視察とともに、人々が「アペリティーボ」を愉しむ様子を目の当たりにした。
「かりに昼から飲むとなると、日本人は少し罪悪感を持ってしまいますよね。でも現地では、今日はもう飲もう!食べよう!といった感じで陽気に始まりだす。ガバガバ飲むような“浪費的な飲み方”ではなく、会話をしながら、食べ物もつまみながら時間をかけて飲む。その時間の過ごし方にイタリアらしさを感じました。バールやレストランでは、お酒1杯頼むと、種類豊富なつまみが付いてきたり、ビュッフェスタイルで選べたり。お財布にも優しく、若い方も気軽に愉しんでいる姿を見ました」
近年の「アペリティーボ」カクテルにはどんなトレンドがあるのか?夕方に飲むリフレッシュカクテルの立ち位置として、小川さんは酸味をうまく取り入れることをひとつの例として挙げる。
「特に海外ではビネガーのフレーバーが多彩で、さっぱりとした味わいながらも複雑味があるものが多いですね。リフレッシュカクテルの材料として、その酸味をうまく繋げるのも手です」
カクテルの開発において小川さんが意識するのは、「満腹中枢を刺激しないよう、糖度を下げ、炭酸も微炭酸にすることによって適度な胃への刺激となること」だと言う。
「アペリティーボ」文化の浸透については、レシピが複雑すぎないこともポイントだ。
「今は、1杯目に『とりあえずレモンサワー』というオーダーが多いように思います。そのとりあえずの1杯目を決まったドリンクばかりでなく、アペロールスプリッツ(アペロールをスパークリングワインで割ったもの)やベルモットの炭酸水割りなど、簡単につくれるけど、いつもと違う選択肢があると愉しいですよね。個人的にはチンザノの炭酸水割りが好きです。少しトニックソーダを加えてライムを軽く絞ってもいいですね」
「すべてのお酒それぞれに歴史やバックグラウンドがあります。そこにご自身の思い、情熱、バックグラウンドを掛け合わせて、テーマに沿ったカクテルストーリーやパッションを十分に表現していただけたらと思います。次のカクテルシーンの文化を切り開くパイオニアになってもらいたいです。ファイナルでお会いできるのを楽しみにしています」
大会審査員である小川尚人さんに、オリジナルの「アペリティーボ」カクテルをつくっていただきました。カクテルの詳細は後日公開いたします。
50を超えるプレミアムブランドとスーパープレミアムブランドのポートフォリオを持ち、 グローバルに展開するスピリッツ業界の主要企業。CAMPARI GROUPの主要戦略ブランドは、APEROL、CAMPARI、SKYY、WILD TURKEY、Grand Marnier、APPLETON ESTATEなどがある。CAMPARI GROUPは1860年に設立され、今日ではプレミアムスピリッツ業界で6番目に大きなプレーヤーに。ヨーロッパやアメリカを筆頭にグローバルな流通網を持ち、190を超える国々でビジネスを展開している。
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。