2023.09.27 Wed
カンパリグループ・カクテルグランプリ審査員
「アペリティーボ」スペシャルインタビュー「コンペティションへの挑戦は
すべてをスキルアップできるチャンス」
後閑信吾さん(バーテンダー、SG Group代表)2023年10月、カンパリグループのCT Spirits Japanは、「アペリティーボ&パイオニア」をテーマとした日本最高峰を決めるカクテルコンペティション「カンパリグループ・カクテルグランプリ2023」を開催する〈応募期間:2023年10月1日(日) 23時59分まで〉。
大会の目的は、イタリアには欠かせない「アペリティーボ」文化の浸透、そしてカクテルの新時代を切り開くような「パイオニアカクテル」の創造をすること。
優勝者には、カンパリグループのブランドをより探求するためのイタリア研修旅行が贈呈される。
審査員は、前年優勝を果たした江刺幸治さん、カンパリブランドアンバサダーを務める小川尚人さん、世界をまたにかけて第一線で活躍するバーテンダーの南雲主于三さん、後閑信吾さん、坪倉健児さんという豪華な顔ぶれ。
大会を前に、「アペリティーボ」にふさわしいカクテルと挑戦者へのメッセージを、審査員ひとりずつに訊いた。
カンパリグループ・カクテルグランプリ2023 審査員 後閑信吾(ごかん しんご)さん
バー業界において世界で最も注目されるバーテンダーのひとり。2012年、Bacardi Legacy Cocktail Competition に米国代表として世界大会優勝。2014年、上海にSpeak Lowをオープン。以後国内外で新しいコンセプトのバーを次々とオープンし、The World’s / Asia’s Best Bars において世界最多の49回を受賞。2017年にはバー業界のアカデミー賞と言われるTales of the CocktailにてInternational Bartender of the Yearを受賞。近年では国内酒造と協業してオリジナル焼酎やリキュールを発表。國酒を世界へ広める為の活動にも力を入れている。現在東京、NY、上海、沖縄を拠点に活動中。
世界をまたにかけて活躍するバーテンダーの後閑信吾さん。この日も数日前に帰国したばかりだという。複数のバーを展開するだけでなく、ゲストバーテンダーやセミナーの講師として招聘されるなど、幅広く活躍している。世にその名を知られるきっかけとなったのは、やはり、大きなカクテルコンペティションでの優勝だった。だからこそ、コンペティションへの参加はすごくいいことだと考えている。
ここであらためて、大会名にもなっている「アペリティーボ」の代表格といえるハーブリキュール「カンパリ」の存在感について訊いてみた。
「バーテンダーなら皆さん同じだと思いますが、バーで働き始めた時からずっと使い続けているお酒なので、その分思い入れもありますね。日本ではカンパリは薬草系リキュールに分類されがちですが、カンパリはカンパリでしかなく、ほかに似たものがないのです。『カンパリ』という固有名詞がカテゴリーになっているという感じ。事実、古いカクテルブック等を見ても“ビターリキュール”ではなく、“カンパリ”と表記してあることも多くあります」
「アペリティーボ」カクテルの開発に大事な点について、後閑さんが挙げるのは「シンプルであること」「軽やかであること」「LOW ABV(低アルコール)であること」だ。
「アメリカだとドライマティーニやダーティマティーニ等を飲まれる方が多いのですが、その後食事に行くことが目的なので、日本人やお酒があまり強くない人にとってはもう少し軽めの方が良いでしょう。素材においても、コンセプトにおいても、シンプルでわかりやすく。さっぱりとは逆方向のコクや味の重さ、また高い度数に行くほど食欲や食事自体に支障をきたします。個人的にはワインくらいのアルコール度数のレンジが理想ですかね」
後閑さんは自身がそうであったように、コンペティションへの挑戦は、重要なチャンスをつかむきっかけだと考える。
「クリエイティヴィティ、プレゼンテーション能力、表現力、国際大会になれば英語力も。自分をギリギリの環境に追い込んで新しいものを創り出すコンペティションに挑戦することは、すごくいいことだと思っています」
さらに、仮に優勝を果たした後が大事だと言葉を重ねる。
「出場するには勝つことを考えるし、勝つことを考えたら勝った後のことを考えるべきだと思っています。今回はセミファイナルが10人、そこからファイナルで3人が選出されます。ということは、10人のバーテンダーが、自分のキャリアとして語れるタイトルを手にすることができます。そのタイトルをどう使うか。それはたとえば、出世の材料にもなりえるし、新しい仕事を得るきっかけにもなるかもしれません。そこまで絵を描けているかどうか。挑戦する前でも後でも、そのタイトルをどのように使うかが大事だと思います」
自身が出場した時のことを振り返る。1回目の出場ではあっけなく敗退。2回目で優勝を果たした。
「ビザを取得しなければいけなかったので、わりと命がけでした(笑)」。世界大会のファイナルの際は、材料やスーツなど全て二種類ずつ用意していた。すでに勝つことを前提にしていたのだ。そして、優勝後の海外遠征ではさまざまな経験を積んだ。
「自分のスキルアップと少しでも爪痕を残そうと必死でした。コンペティションは勝つことも重要だけど、終わった後からが本当の勝負。頑張ってください」
大会審査員である後閑信吾さんに、オリジナルの「アペリティーボ」カクテルをつくっていただきました。カクテルの詳細は後日公開いたします。
2018年6月にオープンした「SG Group」の日本1号店。カクテルをカジュアルに楽しめる1階の「Guzzle(ガズル)」、ゆっくり味わう地下1階の「Sip(シップ)」、そしてシガーが愉しめる会員制の2階「Savor(セイバー)」の3フロアからなる。
東京都渋谷区神南1-7-8
Tel:050-3138-2618
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。