2023.10.25 Wed
「エンピリカル アユーク」でつくる至極の一杯Inside of Red
野村空人さんの場合デンマークの首都、コペンハーゲンにあるレストラン「noma(ノーマ)」は、英国のレストラン誌が選ぶ『世界のベストレストラン50』で過去4度も1位に輝き、仏のミシュラン2つ星を獲得する他、ドキュメンタリー映画にもなった超がつくほどの有名レストランです。
そのnomaで、テストキッチン&新メニューの責任者として活躍したラース・ウィリアムズと、コンセプト&ビジネス開発の責任者を務めたマーク・エミル・ハーマンセン。その2人が創り出したスピリッツが「エンピリカル」です。
あまりに独創的なエンピリカルは既存のどのカテゴリーにも当てはまりません。何故なら伝統的なスピリッツの概念を塗り替えることこそが、エンピリカルが何よりも大切にしている哲学だからです。
エンピリカルについて詳しくは
https://bar-times-select.com/blogs/column/empirical
本企画では、スモーキーフレーバーの個性が際立つ「エンピリカル アユーク」ベースのカクテル開発をトップバーテンダーの皆様に取り組んでいただきました。今回ご紹介するのは、野村空人さん(Quarter Room)の場合です。
「アユーク」の主原料はパシーヤミヘートウガラシです。メキシコ・オアハカ州の少数⺠族ミヘーの⼈々が、海抜2,700メートルで栽培した特別なスモークドライチリで、現地の⾔葉で、アユーク(Ayuuk)と呼ばれています。このトウガラシは完全に熟すと枝上で部分的に乾燥していき、熟し終わるとスモーキーな⾹りを燻らせるのが特徴です。
「エンピリカル アユーク」は、いぶりがっこのような燻製感と旨味とだし感があって、ほのかな辛味もある。その点では、メスカルっぽいニュアンスを感じました。でもイコールではありません。他にはないユニークなスピリッツなので、カクテルに落とし込む際はどこまで手を込めて、どんな着地点を狙うかが悩みどころでした。
「エンピリカル アユーク」のメインとなる原料のひとつに唐辛子があります。スピリッツは、もともとは赤い色を持つ唐辛子を燻して黒くしたイメージなので、カクテルは本来の赤に合わせてみたいと思いました。色を合わせると味も合う、というのが僕の持論で、カシスや梅酒が思い浮かびました。お茶を副材料にすることは単に水ではなくフレーバーウォーターを加えるようなものでぐっと飲みやすくなります。
お茶のカクテルの開発を積極的に手掛けている野村さんが選んだ茶葉は、ハイビスカスローズヒップティーに、2011年に品種登録された日本初の「赤い日本茶」である“サンルージュ”。それを煮出す、漬け込むといった手法で取り入れる。ほんの1ダッシュのアブサンを加えるのは、「個性の強いエンピリカルには、同じく個性の強い薬草酒を」との考えから。アニスのほのかなフレーバーも生き、狙った色味と味わいがぴたりと決まる。
- エンピリカル アユーク:30ml
- ハイビスカスローズヒップティー(ハイビスカスローズヒップティーのティーバック1パックを、100mlの湯で20分煮出す):20ml
- 茶葉“サンルージュ”を浸けた梅リキュール“星子”(“星子”1本・720mlに対して、茶葉“サンルージュ”15gを1日浸ける):10ml
- カシスリキュール:1tsp
- アブサン:1ダッシュ
- オレンジピール:1片
- ロックグラスに、エンピリカル アユーク、ハイビスカスローズヒップティー、茶葉“サンルージュ”を浸けた梅リキュール“星子”、カシスリキュールを入れ、氷を加え、アブサン1ダッシュを振りかける。
- 10回ほどステアし、オレンジピールを振りかけてグラスの中へ落とす。