2024.06.26 Wed
ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト〜匠のいるBARを訪れて「“後熟”が発明されなければ、きっとウイスキーの楽しみ方は変わっていたはず。」
渡辺宗憲さん(EST!/湯島)ちょうど今から1年ほど前「ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト」と称し、日本有数の文教地区である東京都文京区を中心に本活動がスタート。確かな技術と比類なき職人魂が深い味わいを織りなすクラフトウイスキー、ザ・バルヴェニーを味わうためオリジナルの銀器を伝統工芸士:笠原宗峰氏の手により製作。この銀器を使用し実際に来店客へ、ザ・バルヴェニーを提供してきた4名のバーテンダーへ、この1年の変化や気づきについて訊いてみた。
伝統工芸士、笠原宗峰氏の銀器開発ストーリーや、昨年の「ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト」の詳細はこちらのリンクからご覧ください。
https://www.bar-times.com/balvenie/
「ザ・バルヴェニー クラフトマンシップ プロジェクト」始動1年を振り返ってみていかがですか?
「初めて来店されるお客様には『バルヴェニーのお店なんですか?』なんて聞かれることもあります。お客様の好みがよほどスモーキー寄り、というわけでなければ、まずはバルヴェニー12年をおすすめしています。1杯飲んでいただくとまぁ隣に樽が並んでますからね笑 自ずと次は14年を試してみようと、とても自然に飲み比べしていただいている状況です。」
「そうしてそのままバルヴェニーを気に入っていただくことが多いですね。次来店された時に名指しでバルヴェニーを注文いただき、すっかり“いつもの一杯”になっている状況です。」
自然と奥深さを伝えているんですね 笑
「バルヴェニーは入り口は飲みやすいのに、奥にバーボン樽に裏打ちされたしっかりした強い味をもってる。初めての人もウイスキー通も唸らせるのは、こういうところかな、と思いますね。」
「12年はシェリー樽で熟成されたまろやかな甘みがあり、きっとウイスキー初心者の方もおいしい!と感じるはずです。14年はウイスキー通の方が後熟の面白さを体感できるベストな1杯だと感じます。なんといっても世界で初めて“後熟”を開発したブランドですからね。」
バルヴェニーが “後熟”を開発したというのは有名な話かと思いますが、それについては何か思うところありますか?
「改めてすごい技術だと思います。モルトマスターのディビッドさん、すごいですよね笑」
「仮に後熟がなかったとすると、極端な話、どのウイスキーもあまり味わいに差がなかったかもしれない。熟成年数が違えば、もちろん深みは変わってきますが、それは+アルファの味わいではない。いわゆるウイスキーの個性を決めるのが後熟だとすると、やはり画期的な技術ですよね。」
そもそも何がきっかけで後熟にいたったんだろう?なんてつい考えちゃいますね。
「そうなんですよ。当時は樽の枯渇問題もなかったでしょうし、そもそも10年も寝かしたウイスキーの樽詰め替え作業なんて相当な重労働かつ、リスクのある作業だったはずです。全てダメになってしまう可能性だってあるわけですから。作り手のあくなき探究心を感じずにはいられません。本当にチャレンジャーだなぁと。」
そのチャレンジのおかげでここにこうして飲み比べできる楽しみがあると。
「そうです。ザ・バルヴェニー12年ダブルウッドは、バーボン樽のコクがありながら余韻が上品で繊細な甘さ。これが14年カリビアンカスクとなると、ラム樽という面白さがあって、トロピカルでよりフルーティな感じ。全く違います。後熟の手前までは一緒のはずなのに、こうも違う個性が出るのか!と。」
幅広い層に支持される味わいだからこそ、それぞれに楽しみ方がありそうですね。
「後熟という概念を理解すると逆に“根底にある味は同じ”ということに気がつく。ウイスキーの基礎を学ぶのにも最適ですし、“味を探す”というウイスキーの楽しみ方の入門編にもなるはずです。」
ではここで実際に一緒にテイスティングしていただけますでしょうか?
まずはザ・バルヴェニー12年ダブルウッドから。
(テイスティングしながら)
「いいですね。やはり改めて飲んでみると味わいのバランスの良さに感心します。バーボン樽由来のしっかりした味わいがあり、その後のシェリーの味は後熟ならでは。豊かな甘みを感じます。長く続く余韻はまさに後熟のなせる技なんじゃないでしょうか。」
いや、美味しいですね笑
では次はザ・バルヴェニー14年カリビアンカスクを。
(テイスティングしながら)
「何度となく飲み比べてますけどね。その度に驚きます。この味わいの違いが後熟でもたらされているものだと思うとね。トロピカルですよねぇ。“フルーティ”というよりはやはり“トロピカル”と言いたい。しっかりラム樽を感じるんです。」
後熟のすごさに圧倒されるバルヴェニーですが、今後、期待することなどありますでしょうか?
「そういえばケルシー・マッケニーさんがモルトマスターとして着任されましたよね?」
はい。そうですね。
「ディビッドさんが開発された後熟という技術をケルシーさんがどんな風に推し進めていくのか楽しみですよね。また新たな感性で個性的な味わいが生まれるかもしれません。」
「今度、ザ・バルヴェニーがどんな樽で後熟され新たな驚きを与えてくれるのか——
また味わいを探す楽しみが増えそうです。」
▼プロフィール
渡辺宗憲(わたなべ むねのり)
「EST!」オーナーバーテンダーの渡辺昭男さんの次男として生まれる。札幌「バーやまざき」での修業を経て帰京し、「ジガーバー」「日比谷バー」を経て、1995年、新橋「Bar Atrium」を開店。自身の店を切り盛りしながら、父の入院を機に「EST!」のカウンタ―に立つようになり、今もバーを守り続けている。
▼店舗情報
EST!
東京都文京区湯島3-45-3 小林ビル 1F
Tel:03-3831-0403