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NEW2025.02.26 Wed

沖縄の新しい蒸留酒ブランド
「kagan(カガン)」開発ストーリー
沖縄のボタニカルと伝統を映す
蒸留酒ブランド「kagan」誕生。

古謝雄基さん(南島酒販株式会社 商品部)
沖縄の豊かな自然が育んだ素材を使い、現代の酒類として表現するブランド「kagan(カガン)」。沖縄の言葉で「鏡」を意味し、島の恵みをこれまでにない形で映し出す新しい蒸留酒である。

観光向けのデフォルメされた商品が多いなか、泡盛の姉妹ブランド「shimmer(シマー)」とまた異なる視点と手法で沖縄産素材の可能性を最大限に引き出す。スピリッツ、リキュール、ビターズの3つのジャンルで展開し、プロフェッショナルな用途に応える本格的な酒類だ。

そして2025年3月、「kagan」の第1弾となる「たんかんスピリッツ」が登場。沖縄特産の柑橘「たんかん」の個性豊かな香りと味わいが凝縮したスピリッツは、開発者と蒸留酒の造り手、地元の農家が共創したもの。
今回は、「kagan」誕生の経緯を追いかけていく。
 

沖縄産素材の可能性を最大限に引き出した「kagan」は、プロに向けた新しい蒸留酒ブランド

 
「kagan」誕生のストーリーを訊くべく、県内最大手の酒類卸業者である南島酒販株式会社の古謝雄基さんを訪ねた。古謝さんこそ、これまでにない新しい蒸留酒ブランド「kagan」の発案者である。
生まれ故郷である沖縄を代表する酒、泡盛の出荷量は年々下がっている状況。そこで、古謝さんは県内の造り手と共同で挑戦的な泡盛の可能性を探り、新しい価値を見出すべく、「shimmer」という泡盛のブランドを手掛けてきた。そして見事、国内外の品評会で数々の栄誉ある賞を受賞してきた。

古謝雄基さん(南島酒販株式会社 商品部)
企業のサービス構築や新規事業の開発、さまざまな分野のDX事業に携わった後、沖縄県に帰郷し、県内最大手の酒類卸業者・南島酒販株式会社に転職。泡盛のブランディングに注力する。南島酒販と酒造所が一緒に企画し、少量ずつ多種類を製造する実験的な独自ブランドの泡盛「shimmer」の立ち上げからEC運営までを担う。
 「酵母を変えたり、熟成年数や熟成方法を変えるなど実験的な手法で造った泡盛『shimmer』に取り組んでいるうちに、同じような図式で泡盛以外の酒類を手掛けることができないかと考え始めました。スピリッツやリキュールは泡盛とは違ってさまざまな素材を活用できるので、沖縄県の素材の魅力を伝えると同時に、県内の一次産業の活性化にも繋がると考えました」

「kagan」が「これまでの沖縄のスピリッツやリキュールとは違う」と謳うのは、県内の多くのメーカーの手掛ける酒類の多くが観光向け・量販向けの製品が多かったことにある。

「低度数、飲みやすさ、わかりやすさに重点が置かれていましたが、『kagan』のターゲット層はバーテンダーをはじめとするプロフェッショナルな方々です。県産のボタニカルを活かしたスピリッツ、リキュール、ビターズを製造していきます。単一ブランドでこの3種を製造していくのは、市場流通品としては珍しいことではないでしょうか」

飲まれる場所をバーに定めながらも、決してプレミアム路線のブランドづくりを目論んでいるわけではなく、ハウスカクテル用のボトルとして利用できる価格帯でのリリースを予定している。目的はあくまで素材を活かした質の高さとその汎用性にある。
 

第1弾「たんかんスピリッツ」は、沖縄産「たんかん」の香りと果実味が凝縮したスピリッツ

 
kagan Vol.1 たんかんスピリッツ 48度 / 容量:720ml / ¥3,828(税込)
2回蒸留の泡盛をベースにたんかんの果皮、沖縄に自生するシナモンの一種「カラキ」(正式名称:オキナワニッケイ)をそれぞれ浸漬・蒸留したスピリッツをブレンド。ボトル1本で約2個のたんかんを使用しており、柑橘の渋味がカラキを加えることで甘くまとまった味わいに仕上がっている。

待望の第1弾として登場するのは「たんかんスピリッツ」だ(2025年3月19日発売)。たんかんはポンカンとネーブルオレンジの自然交配により誕生したといわれる柑橘で、沖縄の北部地域で広く栽培されている。

「製造を担う石川酒造場がノウハウのあるボタニカルであったこと。既にジンの製造も行っていて各種ボタニカルの蒸留経験があるなかでも万人に受け入れられやすい柑橘であること。価格帯としてもプレミアムになりすぎないこと。それらがたんかんに決めた理由でした」
 

プロフェッショナルな仕様の「kagan」には、第一次産業活性化の望みも込められている

 
バーの形態もいろいろあるが、「kagan」が目指すのは、ホテルのバーや街場のバー、ときには沖縄料理店など多様な場所で扱われること。古謝さんは、純粋で骨太、本物志向のスピリッツが、ひとりでも多くの人に味わってもらえることを願っている。

「日本各地のバーテンダーと沖縄の酒をつなぐきっかけになればと考えています。近年はインバウンド顧客も増え『日本の酒でカクテルを!』というオーダーも多いと聞きます。頭に泡盛が浮かぶものの、飲みなれない方には近づきがたいという話を聞くので、まずは『kagan』をきっかけに沖縄のお酒に触れ、国内のバーテンダーが泡盛情報に触れやすくしたいです」

「kagan」の浸透の先にあるのは泡盛の出荷量減少の一助になる可能性であり、そして第一次産業への還元である。蒸留酒を通して地域の魅力を伝えるだけでなく、素材の作り手である地元農家や酒造が笑顔になれる新しい価値の創造こそが「kagan」誕生の原点なのだ。


造り手 インタビュー記事(近日公開予定)
地元バーテンダー インタビュー記事(近日公開予定)

kagan オフィシャルサイトはこちら
「kagan Vol.1 たんかんスピリッツ」商品ページはこちら 
 

インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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