fbpx

バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

NEW1900.02.28 Wed

約50種類の本格焼酎・泡盛の試飲とオリジナルカクテル、料理が楽しめるイベント「第7回 本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」レポート

日本酒造組合中央会
2月24日(月・祝)、池袋の「ホテルメトロポリタン」で日本酒造組合中央会による「第7回 本格焼酎&泡盛カクテルコンペティション」が開催されました。日本の國酒である本格焼酎・泡盛をベースに、その特徴や風味を最大限に活かした創作カクテルを競う本大会。今年のテーマは「日本の文化(食文化を含む)や自然を感じさせるカクテル」で、日本ホテルバーメンズ協会から予選を勝ち抜いた10名のバーテンダーが出場しました。

14時の開場と共に多数の観客が訪れ、賑わう本格焼酎・泡盛の試飲ブース。麦、芋、米、黒糖、泡盛と原料によって分かれており、これまでのイメージを覆すような多種多様の香りや味わいに感嘆の声も聞こえました。先日、日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に登録され、海外市場にも進出する酒造が増加し活況を呈している本格焼酎と泡盛。昨年の覇者、「BAR倉吉 大名店」の長濱友太郎さんが振る舞う優勝カクテル「秋麗」にも多くの人が関心を寄せていました。

10名のバーテンダーによる競技がスタート!

 

実技審査が始まると、一気に緊張感が高まる会場。ひとりずつ選手がステージに立ち、創作意図をプレゼンテーションしながらカクテルを作ります。

①古賀 亮治さん(ホテルメトロポリタン ダイニング&バー オーヴェスト)は、カシスとアプリコットリキュールを使って紅葉の色を鮮やかに演出した「もゆるは~紅葉の便り~」を創作。ベースは芋焼酎の「田苑 エンヴェレシーダ」。 
 
②名取 麻子さん(札幌プリンスホテル Top of PRINCE)は本格じゃがいも焼酎「喜多里」を使用した作品「雪見~雪ノ原に見る白色の美~」で、生まれ故郷である北の大地の雪景色を表現。 
 
③山形 昇司さん(Salon Bar Thistle)の「宵涼み」は、家族や友人たちが集まる縁側をイメージしたカクテル。徹宵(一晩中)お酒を酌み交わしたくなるという芋焼酎「TESSHO」を用いて夏の思い出に残る一杯を創作した。 
 
④小池 辰弥さん(ゼンティス大阪 アップステアーズ)の作品「結ゆい」は、沖縄の言葉で人と人との結び合い、助け合いの精神を表す。泡盛「尚 ZUISEN」をベースに、泡盛梅酒やシークヮーサージュースを合わせた。 
 
⑤金澤 貴之さん(秋田キャッスルホテル Bar LOTUS)は、七夕をテーマに「七夜空 ~天に輝く願い星~」を創作。令和7年、7回目を迎え、縁起の良い数字が並んだ本大会。芋焼酎「薩摩 七夕」をベースに、輝く星をパールパウダーで演出した。 
 
⑥阪田 遥菜さん(サンクチュアリコート琵琶湖 バー・ラウンジ)の「花だより」は古来より和歌に使われ、桜が開花したことを知らせる春の季語。芋焼酎「杜氏潤平 紅芋原酒」と桜リキュール、よもぎ茶を用いて春の香りを表現した。 
 
⑦中川 佳樹さん(横浜ベイコート倶楽部 ホテル&スパリゾート)は自然を愛する日本の文化、花見をテーマに「華音」を創作した。ナデシコの花酵母を使用して造られた、フルーティで澄んだ味わいの「球磨焼酎 あさぎりの花」がベース。 
 
⑧日髙 慶一朗さん(横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ BAY WEST)は梅が開花する前、ふっくらと紅色が兆し始めた蕾を表す季語「梅ふふむ」を作品名に。芋焼酎「黒伊佐錦」とアペロール、紫蘇リキュールなどを合わせた。 
 
⑨松尾 啓汰さん(リーガロイヤルホテル小倉 セラーバー)の「楓月 時の移ろい」は芋焼酎「蔵の師魂 The Orange」の柑橘香にりんごと柘榴を合わせ、秋風に揺れる紅葉をイメージ。月の満ち欠けを表したガーニッシュは、見方によって姿を変える。 
 
⑩吉澤 翔太さん(ホテルニューオータニ バーカプリ)は、東京都新島村で造られる芋焼酎「七福嶋自慢」をベースに創作。昨年のユネスコ無形文化遺産登録、東京島酒のGI指定を祝し、古くから伝わる祝いの言葉「言祝ぎ」を作品名にした。 
 

実技審査が終わり、観客が全国の本格焼酎・泡盛やオリジナルカクテルの試飲、料理を楽しみながら歓談する中、いよいよ受賞者の発表となりました。

 

第7回 本格焼酎&泡盛カクテルコンペティションの栄冠に輝くのは……?

 

オーディエンス賞 – 名取 麻子さん/札幌プリンスホテル Top of PRINCE(北海道・札幌市)

まず、発表されたのがオーディエンス賞。今年度から新設された賞で、来場者の投票によって選ばれます。200名ほどの観客が投票した中でトップを飾ったのは、エントリーNo.2の名取 麻子さん。聞き取りやすく親しみを感じるプレゼンテーションで、観客の心を掴みました。オリジナルカクテルの試飲ブースでも、長い列ができていました。

  

第3位 – 吉澤 翔太さん/ホテルニューオータニ バーカプリ(東京都・千代田区)

次に、第3位の発表で呼ばれたのは、ホテルニューオータニ バーカプリ(東京都・千代田区)の吉澤 翔太さん(よしざわ・しょうた)さん。ベースに用いた「七福嶋自慢」は昨年3月にGI指定された東京島酒で、新島で伝統的な麦麹を用いた芋焼酎。地元の高校3年生が栽培した芋から造られたものが二十歳のお祝いに贈られるといいます。その豊かな甘味に、爽やかな柑橘香と鮮やかな赤色を演出するレッドキュラソー、焼酎の芳醇な味わいを引き立てるストロベリーリキュール、梅の柔らかな甘味を感じる赤梅シロップ、アクセントとして少量のすだちジュースを加えました。

吉澤さんは「3年連続、同じ順位をいただきました。上を目指しておりましたが、今後も精進してまいります」とコメントしました。


 
 

準優勝 – 名取 麻子さん/札幌プリンスホテル Top of PRINCE(北海道・札幌市)

続いて準優勝に選ばれたのは、札幌プリンスホテル Top of PRINCE(北海道・札幌市)の名取 麻子(なとり・あさこ)さん。カクテルに名付けた「雪見」について科学者・中谷宇吉郎博士の言葉「雪は天から送られた手紙である」を引用し、プレゼンテーションを始めました。メークイン発祥の地といわれる厚沢部町のものを原料に使用した本格じゃがいも焼酎「喜多里」にまず加えたのは、雪ノ原に見る白色の美を表現した北海道産ヨーグルト。そのなめらかな酸味が焼酎の甘さとコクを引き立てます。さらに雪ノ原の冷涼な風をミントシロップ、針葉樹のかすかな香りをシャルトリューズで表現し、ガーニッシュに雪の結晶を象った羊羹を用いました。途中、「個人の意見なのですが、喜多里と水を1対1で割ったハーフロックスタイルも大変美味しいです」とお薦めしていたのが印象的でした。オーディエンス賞とのダブル受賞です。

名取さんは「父と居酒屋を営んでいた時から馴染みの深い本格焼酎、今はこの業界で國酒として扱えることを嬉しく思います」とコメントしました。
 
 

優勝 – 小池 辰弥さん/ゼンティス大阪 アップステアーズ(大阪・大阪市)

そして今年の栄冠に輝いたのは、ゼンティス大阪 アップステアーズ(大阪・大阪市)の小池 辰弥(こいけ・たつや)さん。沖縄を訪れた際、人と人だけでなく人がお酒や自然と結び合うことで生まれる特有の文化に触れて深い感動をおぼえた小池さんは、美味しい泡盛を世界に届けたいという同じ志を持つ12蔵の職人たちが協力し合い誕生した泡盛「尚 ZUISEN」をベースに選択。沖縄最古の蔵元のひとつ、瑞穂酒造で造られた泡盛梅酒「梅美人」を加えて蔵の垣根を越えた深い結び合いを表現し、梅ならではの爽やかな風味を与えました。さらに沖縄の豊かな自然と農家の方々が結び合うことで生まれる、シークワーサー果汁の華やかで爽快な酸味が「尚 ZUISEN」特有の3回蒸留によって得られるクリアな味わいを強調。「尚 ZUISEN」が持つ南国フルーツのフレーバーをマンゴーシロップで最大限に引き立て、ふくよかで長い余韻へと導きました。

小池さんは「今回創作した『結ゆい』は、人と人が結び合うカクテルです。本当にいろいろな人に助けて頂きながら出来たカクテルで、これから世界に広げていけるようもっと頑張っていきたいです」とコメントしました。

審査員を務めた日本ホテルバーメンズ協会 会長の野田 浩史さんは「本年は極めて秀逸な作品が多く見られました。その中でも上位に選ばれたのはベースとなる焼酎の背景、テロワールなどのストーリーをしっかりと味わいに活かした作品です。香り系の焼酎によるコンセプトの広がり、原酒をベースにした華々しい作品が生まれたのは嬉しい収穫。プレゼンテーションも素晴らしかったです」と総評しました。

今回発表されたカクテルは、各選手が所属するホテルやバーでお楽しみいただける予定です。この機会にぜひ、本格焼酎・泡盛の新たな魅力を体感してください。

◆日本酒造組合中央会


全国約1,600社の酒類(日本酒、本格焼酎・泡盛、本みりん)メーカーが所属する日本酒業界最大の団体。酒類業界の安定と健全な発展を目的とし、1953年に設立。
「國酒(こくしゅ)」とされる日本酒、本格焼酎・泡盛について情報発信することで、国内外へ幅広く認知向上させる活動に取り組んでいる。

■公式HP:https://www.honkakushochu-awamori.jp/
■本格焼酎・泡盛:Instagram


インタビュー・文 いしかわあさこ
バーとカクテルの専門ライター。ウイスキー専門誌『Whisky World』の編集を経て、フリーランスに。
編・著書に『The Art of Advanced Cocktail 最先端カクテルの技術』『Standard Cocktails With a Twist スタンダードカクテルの再構築』(旭屋出版)『重鎮バーテンダーが紡ぐスタンダード・カクテル』『バーへ行こう』『ウイスキー ハイボール大全』『モクテル & ローアルコールカクテル』『ジン カクテル』『ウイスキー カクテル』(スタジオタッククリエイティブ)がある。
2019年、ドキュメンタリー映画『YUKIGUNI』にアドバイザーとして参加。
落語と飲食店巡りが好き。愛犬の名前は“カリラ”。

関連記事はこちら

PAGE TOP