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1500.11.1 Thu

新たな魅力を発見するプレミアムテキーラの世界テキーラとは

林 生馬(日本テキーラ協会会長)
テキーラはアガベスピリッツの中で最も知られた原産地呼称の一つ

日本で一般的な洋酒スピリッツの6大ジャンルは「ウイスキー、ブランデー、ジン、ウォッカ、ラム、テキーラ」と言われるが、この言い方をするならば、単独での原産地呼称はテキーラのみである。ウイスキーやジンやラムなどが世界各国で造られているのはご存じの通りだが、テキーラは原産地呼称であり、場所と主原料が指定されている。原産地を問わないこのジャンルの総称としては「アガベスピリッツ」という言い方があり、この中にテキーラ、メスカル、ソトル、ライシージャなどが含まれることとなる。

つまり、テキーラはアガベスピリッツの中で、最も知られた原産地呼称の一つであるということができる。

テキーラはメキシコのハリスコ州、グアダラハラ市近郊のテキーラ村と呼ばれる地域を発祥として1700年代から作られている地酒であり、シャンパーニュ地方のシャンパンや、沖縄の琉球泡盛と同じように、テキーラは原産地呼称なのである。

テキーラ規制委員会が定めるテキーラの原産地呼称の条件とは

原産地呼称は「地理的条件」と「主原料」が指定されているが、CRT(テキーラ規制委員会)がその規則を作っている。まず地理的条件は、
●「テキーラ5州」(ハリスコ州、グアナファト州、タマウリパス州、ナヤリ州、ミチョアカン州)で生育されたブルーアガベを使用すること。
● 「テキーラ5州」で蒸留されたものであること。

この2点である。

そして原料については、原料は「アガべ・アスール・テキラーナ・ウェーバー」を51%以上使用すること。が条件ではあるが、アガベを100%使用すれば「100%アガベテキーラ」を法的に名乗ることができる。つまりテキーラには2つのカテゴリーがある。

●100%アガベ・テキーラ:ブルーアガベのみを使用したもの。
●テキーラ:一般的にはミクスト(Mixto)と呼ばれ、51%以上ブルーアガベを使用し、他の糖源(サトウキビなど)を加えたもの。

本国メキシコで消費されるテキーラはほとんど100%アガベテキーラであり、ラベルのどこかに「100%」の記載がある、ところが日本市場ではミクストが多くなっている。


「テキーラ5州」のうちのひとつメキシコのハリスコ州。

テキーラの原料となるブルーアガベ。100%ブルーアガベを使用したものと、51%以上使用したものの2つのカテゴリーがテキーラにはある。

「テキーラ=罰ゲーム」。日本市場でネガティブなイメージが蔓延したわけ

ミクストであるから頭ごなしに悪いというわけではないが、アガベ以外の糖分にモラセスと呼ばれる廃糖蜜が使われることもあり、廃糖蜜が悪いわけでもないが、ここで問題になるのは酸化した古い廃糖蜜である。

かつて日本市場では酸化した古い廃糖蜜を使用したミクストが存在した。酸化した廃糖蜜から造られたアルコールの代謝でアセトアルデヒドが生成されやすいという科学的データもあり、世間で「安い酒を飲むと辛い」と言われる理由にもなっている。それで日本市場では「テキーラ=罰ゲーム」となり、怖い、二日酔いになる、などのネガティブなイメージが蔓延した。

ところが100%アガベテキーラはその日の朝に収穫された新鮮なアガベのみを使用して造られる酒で、酸化したものは一切入らない。世界では、100%アガベテキーラほど酔い心地と抜けが良い酒はないという評判で、世界での100%アガベテキーラと、日本のミクストテキーラのイメージは真逆と言ってもいいだろう。

ミクストテキーラの名誉のために付け加えておくと、近年では廃糖蜜を酸化させない技術も進化しており、先述のようにミクストであるから頭ごなしにダメということでもないだろう。ただ100%アガベテキーラであれば、酸化したものが入ってこない保証があるのも事実である。

その他の規則として、
●最低2回蒸留すること
●メチルアルコールは3mg/1ml以下であること
●最終アルコール度数は35%から55%の間であること
●メローイングは1%以下であること

テキーラにはメローイングという味をまろやかにする認定要素を加えることが認められている。グリセリンや木の抽出物であるウッド・エクストラクトや香料などが認定されているが、近年乱用傾向にあり、テキーラ愛好家の心配の種になっている。
フーゼル油という悪臭のもとになる生成物の量も規制される。

瓶に表示の4ケタの番号でどこの蒸溜所でつくられたのかが分かる

蒸留所はNOMと呼ばれる4ケタの蒸留所番号を与えられ、テキーラの瓶には必ずこの4ケタの番号がNOM1103のように記される。エラトゥーラ(NOM1119)とエル・ヒマドール(NOM1119)のように同じNOMを持つテキーラは同じ蒸留所産だとわかる。最古の蒸留所はクエルボ蒸留所(NOM1122)で1795年創業である。


瓶には必ずこの4ケタの番号が記載されている。これは『トレスジェネレーション』のボトルで、ネックには「NOM1102」と記されており、サウザの蒸溜所であることが分かる。


文/林 生馬(日本テキーラ協会会長)
1968年東京生まれ。カリフォルニア州で映画制作スタッフとして活躍。ハリウッド・ビジネスの中枢で活動中に周囲の影響からテキーラに出会う。映画スタッフらをはじめ、ショーン・コネリーや北野武監督らとテキーラを酌み交わす経験を得て、テキーラの最先端の飲み方およびテキーラブームの到来を目の当たりにする。訪れた蒸留所は100を数えテイスティングした銘柄は2000を超える。テキーラ蒸留所のスタッフやテキーラ・アンバサダーとの親交も深く日本へ帰国後2008年7月に「日本テキーラ協会」を創立。メキシコ大使館やFOODEXをはじめ、日本全国の会場でテキーラの講習会を行う。著書に「テキーラ大鑑(廣済堂出版)」 TVやラジオ、新聞、雑誌など各種メディアへの出演多数。

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