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NEW2025.03.31 Mon

トップバーテンダーと「三和酒類」造り手がナビゲート20歳以上のZ世代のための
「お酒を正しく楽しむためのセミナー」

BAR TIMES レポート

「若者のアルコール離れ」といわれて長く、事実、厚生労働省が発表する「飲酒慣習率の変化」などを参照しても20代・30代の飲酒習慣は年々低下。あえてアルコールを飲まない「ソバーキュリアス」というライフスタイルも若者を中心に広がっているという。

そんな状況の中、コーヒーカクテルとジェラートを得意とするCafé&Bar「TIGRATO(ティグラート)」では大学生のアルバイトが活躍し、来店客もまた大学生が頻繁にやって来る。
そこで、店主でバーテンダーの高宮裕輔さんは、大学生(20歳以上)向けの「お酒を正しく楽しむためのセミナー」を開催。20歳以上のZ世代と共に、いまいちど「正しく」「愉しく」飲むということを考えてみた。

東京・四ツ谷「TIGRATO」に集った12人の学生たち。参加者の学生には顔写真と生年月日が入った証明書を提示してもらい、20歳以上の確認を行った。

「いいちこ」の造り手でありアルコール体質検査の研究を進める「三和酒類」が協力

2025年3月某日、スペシャルティコーヒーに本格的なカクテル、素材を吟味したジェラートも愉しめる「TIGRATO」には、大学生12人の姿があった。同店でアルバイトをするスタッフが声をかけて集った友人たちである。お酒が好きな人から、まったく飲めない人まで飲酒習慣はさまざまだ。
「TIGRATO」の高宮裕輔さんは、お酒の正しい知識と愉しみを知ってほしいという想いと共に、大学生たちの生の声を訊きたい、とセミナーを企画。本格麦焼酎「いいちこ」をはじめ、ワインや日本酒、スピリッツ、食品素材などを造る総合醸造会社「三和酒類」が協力に乗り出した。同社は「適正飲酒を浸透させることこそ酒類メーカーとしての未来を切り拓く」とし、アルコール体質検査キットの普及にも力を入れている。

アルコール体質とは、エタノールを分解する酵素「ADH1B」と毒性物質のアセトアルデヒドを分解する酵素「ALDH2」という2つの代謝酵素による分解の速い/遅いの組み合わせで、5つのタイプに分類するものだ。

左からセミナーを主催した「TIGRATO」の店主で数々の賞を受賞しているバーテンダーの高宮裕輔さん(写真・左)。お酒のレクチャーをした三和酒類株式会社で本格焼酎「いいちこ」の開発を手掛ける三和研究所開発室で技術士(生物工学部門)の都甲祐介さん(写真・中)と、三和酒類株式会社、営業本部営業課の久恒康裕さん(写真・右)。

セミナーの内容は、

  • 三和酒類によるお酒の話
  • 三和酒類によるアルコール体質の話
  • バーテンダーによる、カクテル(お酒を混ぜる)の話
  • 本格焼酎とスピリッツの飲み⽐べ
  • グループにわかれ、スーパーで素材を買い出ししてカクテル創作と発表

という流れで進行する
 
営業本部営業課の久恒康裕さんからは三和酒類という会社と事業内容について、本格焼酎の開発を手掛ける三和研究所開発室の都甲祐介さんからは本格焼酎の造り方の解説がなされた。

オンラインでは三和研究所 ウェルビーイング研究チームで技術士(生物工学部門)の串尾聡之さんとつなぎ、お酒がもたらす健康リスクや節度ある飲酒量の目安と共に、アルコール体質と適正飲酒についてレクチャーを受ける。参加者は事前にアルコール体質キット「Nomity(ノミティ)」で全5つの体質のなかのどれに自分が分類されるかを把握してもらった。
酒造りだけでなく、積極的にこういった取り組みを推進しているのは、酒の造り手として 原点に帰り、「誇りをもってお酒を造っているからこそ、すべての人を笑顔にし、お酒で悲しむ人を一人もつくらない」という想いがある。
「Nomity」で自分らしいお酒ライフを把握したら、次はいよいよ試飲を経てカクテル制作だ。

「いいちこ」「TUMUGI」でグループごとに思い思いのカクテルを制作・発表

ベースに使うスピリッツは5種類。テイスティングし、フレーバーを感じ取り、グループごとに合わせる副材料を考えてカクテルを創作する。
カクテルのお題は「同世代に飲んでもらいたいカクテル」。味わうシチュエーションと共に発表する。
ビルド、ステア、シェークのどの技法でつくってもよい。カクテルをつくるのは初めてという参加者が大半だが、意外な素材を組み合わせたユニークな作品が続々と制作された。


グループ1(カクテル名:リッチナイト)
いいちこフラスコをベースに、イチゴ、練乳、カカオシロップ、エスプレッソマシンでスチームしたホットミルクを合わせたホットカクテル。[シチュエーション]背伸びした恋愛。お酒の力であと一歩を踏み出せることをイメージ。

グループ2(カクテル名:アズキコナーズ)
いいちこスペシャルをベースに小豆缶のゆで汁とアーモンドミルクを温めて加え、栗のジェラートを合わせる。小豆の甘味とスペシャルのバニラ感が相乗。 [シチュエーション]春のお花見で散歩しながら飲むカクテル。

グループ3(カクテル名:彩天ボール)
いいちこ彩天をベースに、スイートベルモット、ドライベルモット、ジンジャーエール、レモン果汁を合わせてシェーク。グラスに注ぎ、炭酸水でアップし、ローズマリーを飾る。[シチュエーション]ハーブの香りをきかせ、リラックスできる自分の時間を。

グループ4(カクテル名:わたしでいいちこ)
いいちこ彩天をベースに、すりつぶしたイチゴ、イチゴジャム、レモン果汁を合わせる。ティーカップにゴルゴンゾーラのジェラートを入れておき、そこに注ぎ入れる。濃く淹れたチャイを添え、それもかけながら味わうことで2通りの味わいを愉しめる。[シチュエーション]都会の喧騒を逃れてたどり着いた小さなバーで、バーテンダーがふと差し出してくれた一杯をイメージ。

久恒さん、都甲さんの審査のうえ、優勝作品はグループ2の“アズキコナーズ”に。いいちこスペシャルがもつバニラ香りと小豆や栗のふくよかな甘味がぴったり合い、チョコレートやカスタードクリームのような風味を生んでいたことが理由だ。メンバーには、三和酒類より商品が手渡された。セミナーを終えて、こんな感想が訊かれた。

「カクテルがどれも創造的で、造り手の固定観念を越えてきました。他分野を掛け合わせた商品開発は今後ますます重要になると思いますので、気づきを与えてもらいました。日本全体で見れば酒離れが進んでいますが、若い人たちにお酒に対する見識がしっかりあることも驚きでした」(三和酒類・都甲さん、久恒さん)

「思っていたよりずっと、アルコールに対してポジティブな様子が見られて興味深かったです。大学生のお客様が多いので、どういう理由でバーにやってくるのかといった考えも理解したいですね。定期的にこういったイベントを開催できるといいな、と思っています」(高宮さん)

やさしいお酒の酔いは、心地よさや人とのつながり、料理単体で食べる何倍もの味わい深さを与えてくれるもの。その人にあった幸せなお酒ライフが根付きますように。


高宮裕輔(たかみや ゆうすけ)
1983年、東京生まれ。東京・四谷「TIGRATO(ティグラート)」バーテンダー、ディレクター、株式会社はくすけ 代表。世界的なカクテルコンペティションにおいて常にファイナリストに名を連ねる実力派バーテンダー。バーのハードルを下げ、カクテル以外にもコーヒーやジェラートを楽しめる店として、2018年、「TIGRATO」を開店。昼から営業するなど、バーテンダーの働き方改革にも尽力している。コーヒーへの造詣が深く、日本におけるコーヒーカクテルの第一人者として知られている。

TIGRATO(ティグラート)
東京都千代田区六番町13-6
Tel: 03-5214-112

三和酒類株式会社 iichiko ブランドページはこちら
アルコール体質検査キットNomity ブランドページはこちら


インタビュー・文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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