
NEW2025.04.17 Thu
プレミアムテキーラでつくるマルガリータ特集『ドン・フリオ レポサド』で
愛すべき仲間と愉しむ
温かみのあるマルガリータに。
安孫子 優さん(Newjack/神奈川・横浜)神奈川・横浜「Newjack」ヘッドバーテンダーの安孫子 優さんがその味わいを語り、オリジナリティあふれるマルガリータを創る。

プレミアムテキーラ界のリーダー的存在とも謳われる『ドン・フリオ』。比類のないまろやかさは、テキーラ職人のレジェンド、ドン・フリオ・ゴンザレス・エストラーダ氏の情熱が生んだ賜物である。いまもなお、手作業によるアガベ栽培から、最終的な樽での熟成にいたるまで、全工程に入念な注意が払われている。
「Newjack」ヘッドバーテンダーの安孫子 優さんは、バーテンダーの道に入ったばかりの頃にマルガリータを飲み、そのおいしさに衝撃を受けた。以来、テキーラの魅力に取りつかれていった。なかでも「ドン・フリオ」には深い思い入れを持つ。
「フリオ氏にまつわる大好きなエピソードがあります。この特徴的なボトルは、食卓の真ん中に置いたときに向かい側に座る相手の視界を遮らず、お互いがよく見合えるように、あえて背の低いボトルにしたのだそうです。随所にフリオ氏の人柄の温かさや情熱が詰まっていて、プレミアムテキーラを切り開いたブランドでいて、今なおテキーラの価値を引き上げ続けています。味わいはとてもエレガントで、テキーラを飲む時間そのものが特別になるよう。ラインナップが豊富なので、日常のちょっとした贅沢から、シャンパンのように特別な乾杯にふさわしい一杯まで、さまざまなシーンに寄り添ってくれるのです」
近年は、バーのカウンターに立っていると、「プレミアムテキーラをゆっくり味わう」という愉しみ方が若い世代にも浸透してきたことを多々感じるという。
「お客様から『テキーラを使ったカクテルを』とリクエストいただくこともあります。今後、ウイスキーやラムに並ぶくらいに認知されてくるのでは、と感じています。当店では食事メニューもご用意しているので、料理に合う1杯とリクエストされることも。『こんなおいしかったんだ』と驚いてくださる方も多いんですよ。個人的には、お刺身の白身魚や蕎麦には『ブランコ』を。『レポサド』にはチョコレートなどを合わせてゆっくり味わうのが好きです。ラインナップによって味の幅が広いのでいろんな可能性を秘めていると思います」
ラインナップの中から、2種類を安孫子さんにテイスティングしてもらう。まずは、『ドン・フリオ ブランコ』を。ハリスコ州ロス・アルトス地区の農園で育ったブルーアガベを100%使用し、他のテキーラに見られる典型的な「苦味」を取り除き、口当たりのよい「まろやかな」スタイルのテキーラを生み出したことで人気を集めている。
『ドン・フリオ ブランコ』
「とてもフレッシュな青々としたアガベやシトラスのような香りを感じます。味わいは、すがすがしいキレと共に、やさしいまろやかさが広がります。かすかにスパイシーで、夏の土の匂いのようなアーシーさも。すごくリフレッシュできるテキーラで、ストレートはもちろん、カクテルにしても存在感が消えません。もっとも映えそうなカクテルは、グレープフルーツジュース、炭酸水などを合わせる『パロマ』。暑い日にバーベキューをしながら飲みたいですね。炭酸水の割合を多めに、塩もしっかりリムドして爽快でリフレッシングな飲み口に仕上げたいですね。私は食中酒としてシンプルな炭酸割りで飲むのも好きです」
続いて、バーボン樽で8ヶ月間熟成させたほのかに色づいた『ドン・フリオ レポサド』をテイスティング。高地栽培したアガベを用い、圧搾、製造、ボトリングまでを丁寧に時間をかけて行い、独特のやわらかさと滑らかさを持つ1本だ。
『ドン・フリオ レポサド』
「バニラやキャラメルのような甘い芳醇な香りが漂います。味わいも、バニラのような甘いニュアンスがありながら、アガベのキャラクターは消えずにまろやかさが包み込んでくれます。ひと言で表すなら『とても心地よい飲み口』。まずはストレートで味わっていただきたいですね。バーベキューのお供というよりは、家で映画を観ながらゆっくりというイメージ。カクテルなら、同じ『パロマ』にしても、グレープフルーツの割合を多くして、よりまろやかにしたり、塩を一部にだけリムドしてちょっとしたアクセントとしてきかせるのがいいと思います。アガベシロップとフレッシュライムジュースを加える『トミーズマルガリータ』では、ブランコとはまた違うまろやかさが愉しめます」
みんなでわいわい飲むマルガリータをイメージした「Órale! Rita(オラレ!リータ)」。「Órale!」は「さあ!いこう!」「イイね!」というエネルギッシュで前向きな言葉で、「フリオ氏が家族や友人を大事にしていたことを表現したかった」と安孫子さん。温かみのある熟成感をもつ『ドン・フリオ レポサド』を使用。
安孫子さんが提案するマルガリータは、フリオ氏が大切にしてきた家族や仲間との絆、人とのつながりに敬意を表した一杯だ。メキシコの屋台フード「エローテ」や「チリパイナップル」などメキシコに根付く食文化を取り入れ、「みんなでわいわい楽しむ時間」をイメージした。
「メキシコの屋台で食べた現地流の焼きトウモロコシ『エローテ』がとても印象的だったので、トウモロコシを焼いたシロップとして取り入れました。同じく屋台料理のチリとライムがかかったパイナップルは、ジュースで表現。ライムジュースではなくライムビネガーを合わせるのは、『レポサド』のまろやかさに相乗する発酵感のある素材を使いたかったからです。フリオ氏の持つ温かさや人のつながりを一番に表現したかったので、海で飲むようなスッキリしたマルガリータというよりは、夜の灯りのもとに集まって飲むシーンを想定して、ベースに『レポサド』を選びました。ジューシーでちょっとスモーキーなパイナップルやほかの素材になじみながらも、存在感が立ちます。『ドン・フリオ』自体がとても質の高い、バランスの取れたテキーラなので、単なるベースとして使うのではなく、主役として輝くように甘味や酸、香りなどにアクセントを加えてバランスに意識しています」
<材料>
- ドン・フリオ レポサド …45ml
- グリルドチリパイナップルジュース …30ml(※1)
- トウモロコシシロップ …10ml(※2)
- ライムビネガー …10ml
- マヨネーズタヒン …適量(※3)
<つくり方>
- グラスのリムにライムをこすりつけ、マヨネーズタヒンをハーフスノースタイルにまとわせる。
- シェイカーに残りのすべての材料を入れてシェイクし、1のグラスに注ぐ。
(※1)パイナップル1個分を焼き、ハラペーニョを加えてブレンダーで混ぜながら潰し、キッチンペーパーで濾す。
(※2)とうもろこしを焼き、粉砕して煮詰めたものに、1.2倍の量の三温糖を加えて熱する。
(※3)粉末状のマヨネーズ風パウダーとチリシーズニングパウダー「タヒン」を1:1で混ぜ合わせる。

安孫子 優(あびこ ゆう)
神奈川県出身。横浜「Newjack」ヘッドバーテンダー。2013年、ボトルやシェイカーを華麗に操るフレアバーテンディングに魅了され、バーテンダーとしてのキャリアをスタート。2015年、Rad entertainment 株式会社に入社し、横浜「Newjack」勤務。女性を対象としたフレアバーテンダーの国内大会「princess cup」でキャリア2年目にして初優勝を果たす。2022年、2度目の女性日本チャンピオンを取得、2024年「全日本No.1フレアバーテンダー決定戦 JAPAN FLAIR DREAM GAME High-Five 2024」で初代チャンピオンになる。
Newjack
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-19 山本ビル4F
Tel:045-534-6024
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。
テキーラ界のレジェンドが描いた理想。手仕事が生み出す、格別な“まろやかさ”『ドン・フリオ』の歴史や製法、味わいなどをご紹介します。