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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2016.07.8 Fri

全米最多を誇るワシントン州の蒸留所探訪へ3.【シアトル・アップタウン編】

たまさぶろ 元CNN 、BAR評論家、エッセイスト

次に向かったのはシアトルの北、フリモント・カットという水路を渡った対岸の高級住宅街に位置する蒸留所。この界隈へ向かうため、バラード橋を渡るがその橋からは、映画『カールじいさん空を飛ぶ』(原題『UP』)のモデルとなった一軒家が、ショッピング・モールのど真ん中に見える。

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映画『カールじいさん空を飛ぶ』のモデルとなった家が、ショッピングモールの真ん中に

水路の脇に位置する蒸留所は、オシャレな街にあるパブと雑貨屋が同居するような一軒だった。蒸留所の前の水路脇の小道をジョギングや散策をする近隣の住民が行き交っていた。

Fremont Mischief Distillery
132 N Canal St.,
Seattle, WA 98103
1-206-632-0957

ここは家族経営の小さな蒸留所。原材料にしても地産地消を心がけ、近隣のみから調達しているのが売りだ。そして、使用した残物は、逆に近隣の農家に運び込み、肥料、飼料として活かしている。なんとサステナブルな蒸留所だろうか。

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今回の蒸留所ツアーのガイド、とってもナイスガイだった
こちらではジンとウイスキーをテイスティングしたのだが、いくら感心したとしても、もう免税で日本に持ち帰ることはできない本数を購入済。しかも、機内持ち込み用サイズのスーツケースしか持っていないので、はなっから諦めるしかない。テイストは私個人として、少々印象も薄い…。

蒸留所となると大自然の中や、ちょっとした郊外に位置すると思い込んでいるため、こうした瀟洒な住宅街に位置すると、むしろウイスキーよりもこの住環境が気になって仕方がない。小綺麗な洋館に居を構え、ジョギングの傍ら、こんな蒸留所に立ち寄ることができたら、そんな夢想ばかりが浮かぶ。都会派のウイスキーマニアにとっては、理想の環境だ。

蒸留所巡りというと、スコッチマニアの日本人は、ちょっとワイルドなスコットランドの旅をイメージすることだろう。もう少しビギナーにとっては、サントリーの山崎蒸留所やニッカの余市蒸留所などがさらに身近だろう。しかし、小さいバンに揺られ一杯呑みながら、市街地をホッピングする間に味わえる都市部の蒸留所巡りも、一風変わっているように思われ、かなり愉しめる。日本でもマイクロ・ディステラリーが黎明期を迎えているようなので、そのうち小ぢんまりしたこんなツアーが愉しめるようになるかもしれない。皇居をジョギングした帰路に蒸留所でテイスティング…など夢みてしまう。

なお、このツアー中、メニューにはリストされていたウエストランド蒸留所に、当日は立ち寄ることがなかった。しかし、先日行われた東京インターナショナルバーショーに足を運ぶと出品されており、試飲する機会に恵まれた。シアトルの蒸留所も徐々に日本への進出を計画している一端だろう。今後、ワシントン州ウイスキーのブームなぞがやって来たら、それはそれでどれも個性があり、興味深い。

いやはや、特にウエストランドのマスター・ディステラー、マット・ホフマンのヒゲがあまりにも印象的だったので、ここに掲載しておく。

この際、ブームがやって来る前にワシントン州の蒸留所巡りを完全制覇し、アメリカのクラフト・ディステラリーの第一人者に! などと野望的妄想も膨らむ。

ともあれシアトル渡航の際、ウイスキーにご興味ある方は、せひこのツアーに参加すべきだろう。

LOCAL CRAFT TOURS:1-206-455-3740

 

最後にワシントン州から離れるが、先だって有明の東京ビッグサイトで行われた「ワイン&フードEXPO」に顔を出すと、ニューヨーク州クーパーズ・タウンで作られているクラフト・ウイスキーが持ち込まれていた。せっかくアメリカのクラフト・ウイスキーについて記しているので、これにも触れておこう。

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ウエストランドのマスター・ディステラー、
マット・ホフマン

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クーパーズ・タウン・ベースボールバーボン
野球に詳しい方なら、ピンと来るはず。クーパーズ・タウンは、アメリカの野球殿堂の地。一時期「野球発祥の地」とされた「ダブルディ・フィールド」があることで、全米でその名を知られる。ベーブ・ルースやタイ・カッブらが最初の殿堂入りを果たし、MLBの歴史を彩るアメリカ野球博物館もここに位置している。MLBでの通算安打数3000本を目前にするイチローも、いずれその殿堂入りを果たすだろう。

そんな地で作られるウイスキーのボトルの形が、実にユニーク。ボールを模っただけではなく、ボトルの底の部分は「ダイヤモンド」にデザインされている。ここで紹介した数々のワシントン州ウイスキーは日本で入手できないのだが、こちらは今年、日本でも発売されることになったそうだ。

テイストとしては、成熟した「野球」というスポーツと異なり、正直「まだまだ若い」と言ったところだが、野球好きのウイスキー・ラバーには、ちょっと魅力的なひと品だろう。ラインナップされている「ビーンボール・ウォッカ」など、くすっと笑ってしまう商品名もウィットが利いている。

ちなみに、実際の野球発祥の地は、ニューヨーク市であるというのが現在の定説。1846年6月19日、つまり170年前の昨日、「野球」のルールによりニュージャージーで初めて試合が行われた。これを「ベースボール記念日」とする説はあまり知られていない。

野球好きなら、こんな薀蓄を垂れつつ、イチローのMLB3000安打達成は、こうしたウイスキーで乾杯と洒落込みたいものだ。

※なお、本稿で取り上げた蒸留所は、シアトルの北側に位置しているので、タイトル中では便宜上「アップタウン」という言葉を使用していますが、地元ではアップタウンという言葉は日常的に使いません。

 


 

たまさぶろ
元CNN 、BAR評論家、エッセイスト
立教大学文学部英米文学科卒。週刊誌、音楽雑誌編集者などを経て渡米。ニューヨーク大学にてジャーナリズム、創作を学ぶ。CNN本社にてChief Director of Sportsとして勤務。帰国後、毎日新聞とマイクロソフトの協業ニュースサイト「MSN毎日インタラクティブ」をプロデュース。日本で初めて既存メディアとウェブメディアの融合を成功させる。これまでに訪れたバーは日本だけで1000軒超。2015年6月、女性バーテンダー讃歌・書籍『麗しきバーテンダーたち』上梓。米同時多発テロ事件以前のニューヨークを題材としたエッセイ『My Lost New York』、2016年1月発売予定。
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