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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2019.02.13 Wed

アンケートコラム『※BAR TIMES 調べ』第二回「当たり前の風景、そうではない風景」

BAR TIMES編集部

いつもBAR TIMESをご覧の皆さま、そしてこのページへと指を動かしてくださった皆さま、誠にありがとうございます。
「バーをこよなく愛する、バーファンのためのWEBマガジン」を理念に掲げる身として、バーを愛する人々へ少しでも寄り添っていきたいとの思いから突発的に始めた企画ではございましたが、第一回「人はなぜバーへ行くのか」の反響は想像を優に超えるものでありまして、本当に感無量の一言であります。

前回のコラムでは、“一人でバーを利用する人々は、決して独りではない”という視点から、バーテンダーという存在の大きさを噛み締めさせられる内容となりました。しかし個人的には、独りではない空間を作る要因として、バーテンダーという私達の心の隣人のみならず、カウンター一列の人々が織り成す静謐な空間の尊さといいますか、決して直接言葉を交わすことはなくとも、共有される空気があるのではないかと思うのです。だって、みんな目の前のバーテンダー、もといそのお店が好きなんですもの。個々に分離した寂しい空間になるはずがないじゃない!と声を小にして言いたいのでした。

長くなりました。さて、それでは本題へと話を移します。
今回のアンケートでは、「1杯目はジントニックか」「バーテンダーには自分から話しかけるか」「バーでの会話」をお聞きしました。どのような結果になったのか見ていきましょう。


一杯目のジントニック、誰が決めたのか問題

バーの定石、ジントニック。一杯目にジントニックを頼む方は43.2%と半数以下であり、意外と少ないと思ってしまいました。しかし数多のカクテルのうちの1つが、半数近くの割合で選ばれるということは凄いことなのかもしれません。そもそも1杯目がジントニックの風潮とは、一体どこから生まれたんでしょうか。(※若輩者の素朴な疑問です。)

「バー 一杯目」で検索すれば、いやはや出る出るジントニック。「これを頼めばかっこいい!」と、バーを初めて利用する方向けの指南書的なページばかりです。ジントニックは「BARの顔」「奥深いカクテル」「バーテンダーの腕を確かめることができるもの」・・・そのとおり。しかし、初めてバーに行く方に上記のような文言はどうでしょうか。だって初めてですから。何をもってBARの顔なのか、奥深いのかなんて分からない。作り手飲み手問わず、カクテルの味とは一朝一夕のものではない……と思うのです。

ジントニックって、シンプルだからこそ、さまざまな味わいを知った人が求めるもののように感じます。
というのも、私がバーへ行き始めた頃はちょうど20歳でしたので、正直ジントニックを美味しいと感じなかったんですよね(今では大好きです)。カクテルとかよく分からないので一杯目はいつも「強いのください!」と頼んでいました。毎回魔球のようなアルコールが投げられてきて、それはそれで楽しかったんです。同じ要求をしても、その都度ちがう刺激が与えられるカクテルの世界の奥深さたるや。ちなみに今は、「酸っぱいのください!」って頼むようにしています。加齢のせいです。

何が言いたいかといいますと、折角バーに行くのだから、男も女も老いも若きも素直であればいいのになと思うのです。「初めてなんですけど、」からはじめて、おすすめや好みを投げてみる。きっと、いや、 絶 対 に 応えてくれます。頭の片隅にある知識に頼るのもいいけれど、変に肩肘はらないことがバーの最もスマートな楽しみ方ではないでしょうか。それに世の女性ってそこまでエスコートを求めているのでしょうか……(男心が分かっていなかったらごめんなさい)

だって、目の前のバーテンダーに心身を委ねるところから、バーの楽しみって始まりませんか? 一杯目は……という定石を作ることで、「バーは知識がなければいけない」なんて思い込みには繋がってほしくないなあというお話でした。もちろん、ジントニックが入り口として機能するのならば、それはそれで存分に素敵なことですよね。

アンケートに答えてくださったバーラバーの方々は、ジントニック以外にもビールやハイボール、ジンリッキー、モスコミュールなど喉越しのいいものを1杯目に頼むことが多いようです。なかにはマティーニからはじめるという強者も! 自分がなぜそれを頼むようになったのか、1杯目でなくても考えてみることは意外と面白いかもしれないですね。


バーを取り囲うもの、すべて似た香りがする問題

重厚な扉をあけて席へと案内されたあと、さてどうするか。
7割近くの方がカウンター越しから話しかけられることを待ち、2割の方は自分から話しかけてしまうそう。
時事の話、映画や本の話、身の上話…。なぜだかバーに来られる方って、割と社会の動きに敏感であったり、文化的な営みを愛する方が多いように感じます。歴代の芸術家達にもお酒を愛する方は非常に多かったわけで、同じような“匂い”を好む人同士が自然に集合する傾向であったり、やはりバーと文化的営為の関連性って少なからずあるのでしょうか。

映画や音楽、文学などの芸術作品とは人から生まれ、人に帰結するものであります。その点バーも、人がすべてを担う場所。あくまで個人的主観ではありますが、孤独を愛しながらも、どこかで人を愛せずにはいられない、バーを取り囲む方々に人情深い方が多い理由もそこにあるのかもしれません。見方ひとつ変えてみるだけで、普段なにとなく足の赴く空間がまた違った趣を醸し出してくるかもしれませんね。我々の当たり前を因数分解する作業を通じてもまた、バーの可能性の大きさを感じずにはいられない今日この頃なのでした。

誰も何も覚えていない問題

さて、普段バーテンダーとの対話を優に楽しんでいらっしゃるでしょう皆さんに、心に残っているエピソードなどをお聞きしました。お酒の話、うんちく、常連の方の話題……目に留まるのはなにより、「覚えていない」という回答の多さです。純粋にお酒を楽しんでいた証です。話題も一期一会ですね。なにか面白いエピソードがあれば飛んでいこうかなと考えていたからって、「覚えていない」と言われて、決してふてくされて適当なことを言っているわけではありません。断じて違います。今後もバーの魅力を多面的に掘り下げるべく皆さまのご協力を切に、切に、願います。それでは、また。
 

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