2022.02.19 Sat
エンピリカルのカクテルアプローチ唯一無二のだし感と旨味を、料理のような“スープカクテル”に仕立てる
――静谷和典のエンピリカルカクテル
エンピリカル日本発売記念企画「エンピリカル」の日本発売を記念して、2種の「エンピリカル」を用い、国内のトップバーテンダーにカクテルとして昇華してもらった。今回は、東京・新宿三丁目「BAR 新宿ウイスキーサロン」の静谷和典さんによるカクテルを紹介してもらう。
『フレーバー第⼀主義』のエンピリカルはほかのスピリッツとまるで違う。」
エンピリカルを飲んでみて、近いスピリッツとして思い浮かんだものは? 静谷和典さんにそう訊ねて返ってきたのは、「既存のスピリッツで近いものが思い浮かびません」という答えだった。たとえるのが困難なまでに、ほかのスピリッツとはまるで違う存在感だという。
「『THE PLUM, I SUPPOSE』には果実味と清涼感を感じました。まさに、梅そのもののような。でも甘味のあるリキュールとはまったく異なりますし、東欧などで楽しまれているフルーツブランデーとも違います。この“梅感”をどう生かそうか思案して閃いたのが、ジャパニーズ プラム=梅酒と合わせることでした。一方、『AYUUK』はだし感を強く感じました。鰹節のようなだし感です。それなのに、ピリッとスパイスが効いているいる感じもして旨味があるんです。言葉で表しただけでもこんなスピリッツないですよね? ストレートで飲むだけでも、まるで“スープスピリッツ”のような印象を受けました」
和の梅のエッセンスで艶やかにまとめる
「レシピの考案に当たって最優先に考えたのは、プラムのニュアンスを生かすことです。アイラモルトに青梅を漬け込んだ、5年物の“ラフロイグ梅酒”が思い浮かびました。ならば、梅を軸に和の要素でまとめてみようと、紫蘇のビターズとゆかりを合わせることに。プラムはレモンの酸味とも相性がいいですし、夏に向かう季節なら常温よりキンと冷やして飲みたい。サワースタイルで飲めるクローバークラブ(ピンクレディ)のツイストのイメージです」
しっかり空気を含ませて泡立てたいため、シェイカーはボストンシェイカーをチョイス。色味も一層鮮やかになり、メレンゲ状の白いベールにゆかりの紫紺色が冴える。
「梅の風味はしてもスピリッツなので、リキュールより汎用性も高いですね」と語る通り、口いっぱいに梅のグラデーションが広がりながらも、後味はあくまで軽やか。爽やかなまますっと消える。
スモークド プラムサワー
レシピ
- エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」:40ml
- 自家製ラフロイグ梅酒(ラフロイグに、青梅、レモングラスを漬け、ハチミツを加えたもの):20ml
- レモンジュース:20ml
- グレナデンシロップ:10ml
- 卵白(撹拌して泡立てる):1個分
- ビターズ「ザ ジャパニーズ ビターズ 紫蘇」:3滴
- ゆかり:少々
つくり方
- シェイカーに、エンピリカル「THE PLUM, I SUPPOSE」、自家製ラフロイグ梅酒、卵白、レモンジュース、グレナデンシロップを入れ、フォーマーで泡立てる。
- 液面がシェイカーの2/3になるぐらいまで氷を入れてシェイクする。
- カクテルグラスに注ぎ、ピターズを落とし、ゆかりを振る。
「『AYUUK』が持っているだしのような旨味を生かしたカクテルにしたい。そう考えてスープカクテルの方向に絞りました。でもそこからが難しかった。トマト系やコーンポタージュ、いろいろ試しました。『AYUUK』の存在が強いので、ある程度粘度のあるものがよいと思い至りました。もうほぼ料理ですね(笑)」
結果、静谷さんが合わせたのは、なんとフランス料理の高級食材としても知られるモリーユ(アミガサ茸)のスープ。じゃがいもを入れることで粘度もつけた。一見、じゃがいもの冷製スープ、ヴィシソワーズのようだが、「AYUUK」がベースとなることで、だしの旨味はさらに多層的だ。
「スピリッツが持つピリッとした唐辛子のようなテクスチャーも、味わいの引き締めにつながります。また、シェイク=瞬間冷凍ではなく、スローイングで穏やかに冷やしながら味を伸ばしていくイメージで仕上げていきます」
粘度もだし感も狙った通り。ひと口、もうひと口。カクテルであることを一瞬忘れてしまいそうな、上質で深い味わいが広がる。
モリーユ ー 森の息吹 ー
レシピ
- エンピリカル「AYUUK」:45ml
- モリーユ(アミガサ茸)のスープ:90ml
- 蒸したジャガイモ: 1/2個
- アーモンドミルク:90ml
- パセリ:少々
つくり方
- モリーユを洗って、20分ほどゆででだしを取る。塩、砂糖、ブイヨンを加えて味を調える。
- じゃがいもを洗い、水がついたままラップで包んでレンジで3分ほど加熱し、中まで火を通す。
- 2、エンピリカル「AYUUK」、モリーユのスープ、アーモンドミルクをミキサーにかける。
- シェイカーに氷を入れ、3を注ぎ、スローイングする。
- グラスに注ぎ、パセリを散らす。
静谷和典(しずや かずのり)
1985年、栃木県生まれ。新宿三丁目「BAR LIVET」「BAR 新宿ウイスキーサロン」オーナーバーテンダー。ウイスキーベースのカクテルの開発・普及を目指すバーテンダーチーム「Whisktail.tokyo」の代表を務める。ウイスキー文化研究所が主宰する知識、鑑定能力を問う資格認定制度の最難関「マスター・オブ・ウイスキー」を取得しており、雑誌『Whisky Galore』のテイスターとしても活動中。
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