2021.08.12 Thu
Brewing - Fermentationエンピリカルはこうしてつくられる
「エンピリカル」は業務⽤のエタノールは使わず、独⾃のベーススピリッツを造っています。最終的に美味しいものを作り上げるには、初めからフレーバーの基礎を造らなければならないという考えからです。「エンピリカル」のマザースピリッツ(ベースとなるスピリッツ)は、開発者のひとりラース・ウイリアムズの⼤好きなMisfitsの曲から『Helena(ヘレナ)』と名付けられています。
ヘレナの製法は、60年前のバター撹拌機を改造した蒸し器で裸⻨を蒸し、そこに日本の麹菌を植え付けるところから始まります。このステップが「エンピリカル」の軸となる何層にも重なり合った旨味を⽣み出すのです。
ラースは、世界的に有名なコペンハーゲンのレストラン『noma(ノーマ)』で研究開発の責任者として従事していた時、発酵を探求していました。そのため、麹を使った味噌や醤油、日本酒といった日本の発酵食品の独特な風味が、他の素材のフレーバーをより強化することを知っていたのです。彼は「エンピリカル」をつくるにあたり“麹とモルトを合わせたらきっと面白いだろうと思った”、と後に語っています。
蒸溜所内には、日本酒の酒蔵を思わせる麹室があります。天然の抗菌作⽤を持つダグラスモミの⽊が使われ、室温37℃、湿度70%とサウナのような環境が常に保たれています。この麹室の中で麦麹は濃密な白いケーキのような状態になるまで発酵されます。
麹室で発酵させた⻨麹に、ピルスナーモルトと裸⻨を加え、醸造の初期段階である⻨汁を造り、発酵タンクに移します。
デンプンが酵素により分解されたら、⻨汁に酵⺟を加えます。現在は、ベルギーのセゾンイースト(酵⺟)を使⽤。研究所と連携し数千種類の酵⺟の中から「エンピリカル」の求めるフレーバーを生み出す酵⺟を選んでいます。
「エンピリカル」の軸となる何層にも重なる深みのあるフレーバーを造るため、発酵はゆっくりと進めていきます。一般的には2〜3日のところを「エンピリカル」では1週間。フレーバーをより引き出すための時間です。また、味わいに重なりと深みを出すため発酵は2回行っています。