2021.08.12 Thu
エンピリカルはこうしてつくられる 原料 → アップサイクル
ラースは⽇本には完璧な麹を求め、ジンバブエには発酵に使うマルラを求め、ブラジルのジャングルにはアサイを求めて、世界中を旅してきました。最近ではパシーヤミヘートウガラシを求め、メキシコのオアハカ付近にある海抜約1500メートルの⼭まで自らの足で出向きました。
他にも、コペンハーゲンの近くにあるボーンホルム島ではイチジクの葉を、蒸溜所近くの焙煎所ではコーヒーの殻を求め、季節と⼤⾃然を指針としながら、世界中のありとあらゆる原料からインスピレーションを探しています。
「エンピリカル」は15℃〜20℃の低温で真空蒸溜を行っています。植物や穀物、酵⺟などが⽣み出すフレーバーをすべてキャッチできるからです。⼀般的な蒸溜所ではおよそ85℃の高温で蒸溜しますが、それではせっかく⽣み出したフレーバーを破壊してしまう恐れがあるのです。蒸溜回数は2回。最初の蒸溜を終えてから2〜3日休ませ、2回目の蒸溜を行っています。
また、最近では超⾳波噴霧器も使⽤しています。超⾳波噴霧器は表⾯積を増やすため、液体はより低温で蒸発し、分⼦レベルで攪拌することにより、さらに効率的なフレーバーの抽出が可能となります。
蒸溜時のカットは、ヘッド、ハート、テイルの3回が一般的ですが、「エンピリカル」は、何と80〜100回のセクションにカットしています。一度に500ℓ蒸溜するので、5ℓごとのボトリングとなります。
蒸溜は、初めにフレーバーを引き伸ばすことから始め、その後でフレーバーをより敏感に感じることができるようにしていきます。こうすることで細かくカットした際、蒸溜過程で起きる様々な差異をキャッチすることが可能になるのです。原料を細分化し、微妙なニュアンスを⾒つけ出し、それらを組み合わせて、思い描いた通りのフレーバーをつくり出していくのです。
カットした蒸溜液は、それぞれ自家製のビネガー、コンブチャ(植物性の発酵ドリンク)等とブレンドします。⽔での希釈は一切しません。「美味しいソースが出来てから水を足さないのと同じ」というのがラースの考えです。様々なアルコール度数を⾃ら確かめ、もっともフレーバーフルな味わいをつくり出すためにビネガーやコンブチャを使い加水、ブレンドしているのです。
フレーバーの探求は必ずしも⽩紙からスタートするわけではありません。普通では考えられない材料もリソースとして考えています。例えば、製造過程で生まれる“カス”です。この“カス”を使い、ピリッと⾟いホットソースやタレ、また味噌などをつくりアップサイクル(再利⽤)しています。もちろん使い終わった麹も植物由来の原料として醤油などに再利⽤しています。