2023.09.4 Mon
3種のトニックウォーターでさらに広がるジントニックの世界トニックウォーターの個性に合わせたジンを選び、3つのストーリーをつむぐ。
五十嵐 愛さん(Flying Bumblebee /東京・代官山)2005年に誕生し、今では世界80か国以上で販売されているイギリス生まれのプレミアムミキサー『フィーバーツリー』。世界中から厳選した植物由来の成分を使った上質なトニックウォーターは、カクテル素材としてだけでなく、そのままソフトドリンクとしても愉しめる。ジントニックを構成する液体の約3/4をミキサーが占めるなら、そこにも「最上のこだわり」を持ちたいもの。
今回は「プレミアム」「メディタレーニアン」「エルダーフラワー」という3種のトニックウォーターを使い、3人のトップバーテンダーがそれぞれの味わいが映えるジントニックを提案する。
2人目は、東京・代官山「Flying Bumblebee」の五十嵐 愛さんである。
欲しい苦味が得られる「プレミアム」は、ジントニックに欠かせないアイテム
ジントニックにおけるジン対トニックウォーターの割合は、1対3が黄金比と言われている。液体全体の約75%を占めるミキサーの役割が、ジントニックの味を決めるのにいかに重要かが察せられる。
「Flying Bumblebee」の五十嵐 愛さんは、トニックウォーターの役割についてこう語る。
「なんといっても甘苦さが醍醐味。トニックウォーターを使うことでバーのジントニックらしい味わいが生まれます。炭酸水より飲みごたえがあって、ボディ感もありますね。これまで働いてきたバーごとに使うトニックウォーターは違っていて、それぞれの考えを持って選んでいます」
五十嵐さんが自身の店で使うのは、2020年開店以来『フィーバーツリー』一択だ。
「バーテンダーが求める苦味がしっかりあって、少し値段が高い分、プレミアム感が出ます。バーに行きなれているお客様には『ちゃんとしたものを選んでいる』という安心感にもつながります。うちはカウンターがフラットで、すべてのボトルがお客様からよく見える造りなので余計に素材選びは考えをもっておこなっています」
王道の「プレミアムトニックウォーター」は、ジントニックに必要不可欠な苦味と甘味があり、余韻も長い。もはや、五十嵐さんのジントニックに欠かせないアイテムだ。
ジンは、甘夏ピール、ビターオレンジピールなどをキーボタニカルとした東京産。その柑橘のフレーバーと心地よい甘苦さが合い、絶妙に爽やかな飲み心地が生まれた。
- ハチオウジントニック
- 〈レシピ〉
- ・ジン 30ml
・フィーバーツリー プレミアムトニックウォーター 90ml
・ライムジュース 5ml
・ライム 1/6カット - 〈つくり方〉
- ①グラスに氷、ジン、ライムジュースを入れてステアする。
②フィーバーツリー プレミアムトニックウォーターを注いで軽くステアし、ライムを入れる。
ハーバルな「メディタレーニアン」と、地中海産ジンを合わせる「地中海ジントニック」
次は、コンゴ共和国のキナの他、地中海地方のシトラスとハーブのエッセンシャルオイルを使用した「メディタレーニアントニックウォーター」を使ったジントニックを紹介しよう。「Flying Bumblebee」で定番として提供しているものだ。
「メディタレーニアントニックウォーターは、酸味がしっかりあって、ハーブの香りが全体的に立っているのが特徴です。酸味とハーブのバランスがよく、そのまま飲んでもおいしいですね。ジントニック特有の苦味が苦手な方にも好まれます。トニックウォーターの原料と合わせて、地中海地域産のオリーブ、バジル、タイム、ローズマリーなどをボタニカルに使ったジンを選ぶことでストーリーを組み立て、レシピに落とし込んでいます。メディタレーニアンの味わいが個性的な分、刺さる人には深く感動できる一杯になります」
- 地中海ジントニック
- 〈レシピ〉
- ・ジン 30ml
・フィーバーツリー メディタレーニアントニックウォーター 90ml
・ライムジュース 5ml - 〈つくり方〉
- ①グラスに氷、ジン、ライムジュースを入れてステアする。
②フィーバーツリー メディタレーニアントニックウォーターを注いで軽くステアし、ディルを飾る。
フローラルな「エルダーフラワー」は「白い花」をキーワードにストーリーをつむぐ
最後に使うのは、コンゴ民主共和国のキナの他、手摘みした英国産のエルダーフラワーから抽出したエッセンシャルオイルをブレンドした「エルダーフラワートニックウォーター」。フルーティーで爽やかな味わいが特徴である。
「最初に爽やかな香りが立ち上って、苦味が柔らかですね。うちでは多種のアブサンを揃えているのですが、アブサンとも相性がいいです。ジントニックには、エルダーフラワーの白い花、淡いグリーンのイメージに合わせて、シロツメグサや洋梨、カモミールなどをボタニカルに使ったジンを選びました。ベルギーの大自然の中で育った三姉妹が造った柔らかで繊細なクラフトジンです」
これら、3種類のトニックウォーターを使い分けて、五十嵐さんはこう語る。
「カクテルづくりにはその背景のストーリーが大事。『フィーバーツリー』は、どの種類もトニックウォーター自体にストーリー性があるので、どんどんアイデアが生まれてきてカクテルをつくりやすいですね。ロングカクテルはつくり方がシンプルなものが多いので、トニックウォーターのキャラクターが立っているとお客様にも説明がしやすいですし、異なるバリエーションも愉しんでいただけると思います」
- ホワイトフラワージントニック
- 〈レシピ〉
- ・ジン 30ml
・フィーバーツリー エルダーフラワートニックウォーター 90ml
・ライムジュース 5ml
・シロップ漬けドライアップル 1枚
※スライスしたりんごをシロップ漬けにし、フードドライヤーで約10時間乾燥させる - 〈つくり方〉
- ①グラスに氷、ジン、ライムジュースを入れてステアする。
②フィーバーツリー エルダーフラワートニックウォーターを注いで軽くステアし、シロップ漬けドライアップルを飾る。
[五十嵐 愛 プロフィール]
北海道札幌市出身。幼い頃からパティシエを目指し、製菓専門学校卒業後に上京。パティスリーで勤務する中、先輩に連れられたバーで働くバーテンダーに衝撃を受け、21歳の時、未経験から渋谷のバーで修業を始める。アブサン好きが高じて恵比寿「BAR TRAM」へ入社。その後、姉妹店の恵比寿「Bar TRENCH」のバーマネージャーを務める。2015年、「ビーフィーター グローバル バーテンダーコンペティション」で日本一になり、世界大会のためロンドンへ。シンガポールのバーからオファーを受け渡星し、2年間勤務する。2020年、独立して「Flying Bumblebee(フライング バンブルビー)」をオープン。アブサンをメインに30種類ほどの薬草酒を揃え、製菓や海外経験を活かしたカクテルを提供している。不定期で開催しているジャズライブが好評。
[Flying Bumblebee]
東京都渋谷区代官山町13-7 ベルビー代官山 B1F
Tel:03-6455-1185
HP:https://flyingbumblebee.tokyo/
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。
輸入者:アサヒビール株式会社