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2024.07.22 Mon

体験してほしい超絶美味な『プレミアムバーボン』世界を席巻中!プレミアムバーボン

The Premium Bourbon Experience

プレミアムバーボンとは?

 ここ数年、日本でもよく耳にするようになった『プレミアムバーボン』。まだ、明確な定義はないものの、熟成年数が長いバーボンウイスキーや、スモールバッチと呼ばれる生産量が限られているバーボンウイスキーが『プレミアムバーボン』として認識されているようだ。

 ストレートバーボンを名乗るには2年以上の熟成が必要と法で定められており、バーボンウイスキーの実に95%を生産するケンタッキー州では、熟成が4年未満のものはラベルに熟成期間を表示しなければならない。そのため、多くのケンタッキー・ストレートバーボンウイスキーは4年以上の熟成を経ている。これを通常商品とし、熟成年数が5~8年はプレミアム、6~10年はスーパープレミアムといったすみ分けが自然となされている。ダイナミックに熟成が進むケンタッキー州では、10年で樽の中のウイスキーが半分ほどになるため、熟成期間の長い『プレミアムバーボン』は少量生産となり、希少価値が高くなるのだ。

 スモールバッチとは、少数の選び抜かれた良質な樽のみをボトリングしたバーボンウイスキーのことで、アメリカンウイスキー業界を牽引してきた名門のひとつ、ビーム家が生み出した『ノブ クリーク』『ブッカーズ』『ベイゼルヘイデン』などが有名だ。原料から製法、熟成環境にまでこだわったことにより生み出される、洗練されたリッチな香味は既存のバーボンウイスキーとは一線を画し、クラフトバーボンというカテゴリーが確立された。

 また、9年熟成の樽から選び抜かれた樽を、樽ごとにボトリングした『ノブ クリーク シングルバレル』も登場。バーボンウイスキーにも、樽ごとの微妙な風味の違いを味わうという新しい愉しみ方が誕生し、バーボンウイスキーブームは加速していく。そして、力強くも、スムースでしなやか、深い余韻により贅沢な気分にさせてくれるバーボンウイスキーが、『プレミアムバーボン』として人気を博すようになったのである。

プレミアムバーボン、世界での現在地


 世界では、カクテルでバーボンウイスキーを愉しむトレンドが定着している。DRINKS INTERNATIONAL(英国の飲料業界誌)が毎年発表する「The World’s 50 Best Classic Cocktail」(世界でもっとも売れたクラシックカクテル)TOP50のランキングでは、2021年まで7年連続1位が、バーボンウイスキーベースのオールドファッションドだった。2022年以降も2位と、存在感を示している。2021年はTOP10にウイスキーサワーとマンハッタンもランクインしており、柑橘のニュアンスを愉しんだり、ハーバルなフレーバーとのハーモニーを味わったりと、ウイスキーベースのカクテルが幅広く愉しまれていることがうかがえる。その人気と共に、バーボンウイスキー自体も、より華やかにエレガントに進化し、『プレミアムバーボン』として広まっていったのだ。

 日本でも同じ傾向が見られており、『BAR TIMES』の「どんなバーボンベースのカクテルを飲むか」という読者アンケートでは、1位はマンハッタン、2位がオールドファッションド、3位がミントジュレップ、そしてハイボールを抑え、4位にゴッドファーザー、5位にブールヴァルディエと、バラエティ豊かに愉しまれていることが分かる結果だった。

 バーボンウイスキーの本場・アメリカでは、カクテルをきっかけにバーボンウイスキーを飲むようになった若い消費者が増えているという。2010年代に入り、ポートワイン樽でフィニッシュした『エンジェルズ エンヴィ』や、ペドロ・ヒメネス・シェリー樽でフィニッシュした『ラビットホール デアリンガー』のように、幅広いフレーバーのバーボンウイスキーが誕生し、バーボンウイスキーベースのカクテルの可能性が広がったからだろう。

 また、東京の酒販店では、2023年頃から、アメリカ人の観光客が『フォアローゼズ ブラック』など日本限定のバーボンウイスキーを購入する姿が目立つようになった。バーボンウイスキーの味の違いを愉しむ飲み方が浸透してきたことがうかがえる。

 一方、世界の中でもバーボンウイスキーの勢いが著しい韓国では、ハイボールをきっかけにバーボンウイスキーを飲むようになった若い消費者が多いという。韓国では、15~20度のソジュ(焼酎)をショットグラスでストレートで飲む習慣があるが、20、30代の若い世代はアルコール度数の強いお酒を好まなくなっている。そこに、新型コロナウイルスの影響で韓国でも家飲みが多くなり、保存性の高いウイスキーをベースとし度数を調整できるハイボールという飲み方が広まっていった。外出が減り運動不足も気になるなか、糖質が少ないのもハイボールの魅力だという。若者に人気を博したドラマの中で『ウイスキー・オン・ザ・ロック』という歌がヒットし、ウイスキーはおしゃれなイメージが定着。ハイボールを飲んでいた層が、より高価なウイスキー、希少価値の高いウイスキーを求めるようになっていく。

 韓国は、酒類への輸入関税が高く、生産国の定価の3倍以上の価格で流通していることが少なくない。その為、低価格帯のウイスキーの輸入が多く、高価格帯のウイスキーを求める層は、海外へ旅行するようになる。スコッチやジャパニーズだけでなくバーボンウイスキーも、希少価値の高いボトルが飲めるバーをSNSでチェックし、全国のバーを訪れている。福岡で開かれるウイスキーのイベントにも、プレミアムバーボンを求めて来日するまでに、熱をおびているのだ。

 こだわりの製法で生み出される『プレミアムバーボン』のエレガントで洗練されたフレーバーは、バーボン愛好家だけではなく、世界中の若者も魅了している。カクテルとの相性も良く、ラグジュアリーなひとときを彩ってくれるアイテムとして欠かせない存在となっている。


文 馬越 ありさ
慶應義塾大学を卒業後、ラグジュアリーブランドに総合職として入社。『東京カレンダーweb』にてライター・デビュー。エッセイスト&オーナーバーマンの島地勝彦氏に師事し、ウイスキーに魅了される。蒸留所の立ち上げに参画した経験と、ウイスキープロフェッショナルの資格を活かし、業界専門誌などに執筆する他、『Advanced Time Online』(小学館)に連載を持つ。日本で唯一の蒸留酒の品評会・東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)の審査員も務める。

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