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NEW2025.03.29 Sat

ウイスキー・スペシャリストのバーテンダーが開発したグラスは何が優れているのか?全4種類のウイスキー専用「咲グラス」でウイスキーを飲み分ける

静谷和典さん(BAR 新宿ウイスキーサロン/東京・新宿)
ウイスキーの超難関資格「マスター・オブ・ウイスキー」を当時史上最年少で取得し、ウイスキーカクテルの開発・提供にも力を入れ、さらにはYouTubeやTikTok、Instagramで日々世界に向けてウイスキーの魅力を伝えているバーテンダー、静谷和典さん。
日本を代表するウイスキーのスペシャリストである静谷さんは、「ウイスキーをストレートで味わう愉しさを広めたい」という想いから、ウイスキーの魅力を最大限に引き出す「咲グラス」を開発。2025年3月にはロックグラスがリリースされ、現在全4種類をラインナップする。
ウイスキー専用の「咲グラス」は従来のグラスと何が違うのか?4種類それぞれの特徴とは?このグラスで飲むとどんな世界が見えてくるのか?
静谷さんに解説してもらった。

「なぜウイスキーはワインのようにグラスで飲み分けないのか?」という疑問から「咲グラス」を開発


日本を代表するウイスキーのスペシャリストのバーテンダーであり、「咲グラス」開発者の静谷和典さん。


静谷和典さんがオリジナルのウイスキー専用グラスの開発に挑戦しだしたのは2020年頃からになる。

「バーテンダーは自分流のオールドファッションドやジントニック、オリジナルカクテルなどクリエイティブなものを生み出すのに長けています。カクテルという液体は自分でつくるのに、注ぐ器はなぜつくらないのかとつねづね思っていました。ワインにはボルドー型やブルゴーニュ型などの種類がありますが、ウイスキーのストレート用グラスにおいては一般的なテイスティンググラスかグレンケアングラスぐらいしかありません。ウイスキーの世界をより楽しめるように、まずはウイスキーのストレートを味わうためのグラスをつくることに乗り出しました」

コロナ禍でバーの営業ができない期間、静谷さんはその思いをかなえるべく、現実的に動き始めた。ハイボールやカクテルなどの幅広いウイスキーの愉しみ方を発信してきたのは、「多くの人にウイスキーをストレートで味わってもらいたい」という想いを実現させるための第一歩。次のステップに進むには、専用グラスは欠かせないもの。
日本各地のグラス工房を訪ね、自身でも実際に吹きガラスづくりを経験し、やっと理想を形にしてくれるグラスのつくり手と出会うことができたのだった。

ストレート専用グラスは、ハーフショットに特化した「蕾グラス」とアルコール感を緩和して香味をキャッチする「咲テイスティンググラス」の2種類

「蕾グラス」容量:120ml / 価格:¥11,880 [税込](写真左)
「咲テイスティンググラス」容量:164ml / 価格:¥11,880 [税込](写真右)

最初にリリースしたのは、「咲テイスティンググラス」だ。自身の活動で接する人々のなかにストレートで味わおうとする人が増加してきたことを感じていたが、「飲み方がわからない」「アルコール感が強すぎる」といった声が聞かれた。ストレートを飲みなれない人にも愉しんでもらい、さらには従来のテイスティングでは感じにくい香味も広げることを目的としたグラスである。

「舌全体で香りと味わいをキャッチできるグラスをつくりたいと思ったんです。このグラスは口径が広がっているフォルムが特徴で、アルコール感を緩和してやわらかい飲み心地で香味を豊かに拾えます。体感でしかないのですが、たとえるならば、アルコール度数40度のウイスキーを37度に感じるイメージでしょうか。くびれがあることで、リフラックス効果で軽い香りだけが上がってクリーンなところだけを回収できるといった形状です。咲テイスティンググラスもいきなり重い香りを取るのではなく、スワリングして軽やかな香りだけを抽出できますし、思い切りスワリングしてもこぼれにくい形状です」

脚の長さにも気を配った。短すぎると手の体温が当たって急激な香りの変化を生んでしまう。当たるか当たらないか、のちょうどいい長さを狙ってある。

「蕾(つぼみ)グラス」は、口径をすぼめた形状で香りを凝縮してウイスキーの特徴をダイレクトに味わえる。「咲テイスティンググラス」と真逆の個性を持ち、ウイスキーの力強さを追求したものだ。ことにハーフショットで味わう際に威力を発揮する。

「ウイスキーの強さをよりパワフルに感じられるストレート専用のグラスで、アルコール度数40度なら、43度に感じるようなイメージです。通常の半量を注ぐようなハーフショットだと、鼻と液体の距離が最初から離れすぎていてしっかりテイスティングすることが難しいものですが、ウイスキーの液面の広さが飲み始めから飲み終わりまで保って香り立ちをキープし、ウイスキーの個性を感じ取ることができます」

アルコール感だけでなく樽由来のウッディな香りやピート香、ウイスキーによっては甘味も豊かに感じ取ることができ、ウイスキーの特徴が増幅されて厚みのある骨格を味わえる。

エレガントにロックを味わえる最新作「咲ロックグラス」と余韻まで味わい深いハイボール用の「咲タンブラー」


「咲ロックグラス」容量:352ml / 価格:¥11,880 [税込](写真左)
「咲タンブラー」容量:440ml / 価格:¥11,880 [税込](写真右)

「咲タンブラー」はハイボールや水割りに合ったグラスとして開発されたもの。なんといっても、飲み口に向かってエレガントなカーブを描いて広がっている形状が特徴的だ。

「潜在的な香りをキャッチしやすく、ノージングをしながら繊細な味わいを感じ取れるタンブラーです。ハイボールはシャンパンを思わせるようなきめ細やかで緻密な泡立ちとなり、舌触りが優しく、上品さを感じさせる飲み口になります。液体が舌の上にいきわたって広がることでウイスキーの甘味を一段と感じ取りやすくなり、原料由来の香味を引き出します。ハイボールでも余韻まで愉しめる形状です。350mlの缶ビールがちょうど入るので、ビールでもラグジュアリーな飲み心地を試してほしいですね」

2025年3月にリリースされる最新作「咲ロックグラス」は、「ロック=強い」という従来のイメージを打ち破る画期的なグラスである。飲み口に向かって広がるカーブや飲み心地を柔らかくする口径の広さは「咲タンブラー」と同様の発想をしたもので、ロックでも強さ以上に繊細な味わいを感じ取れる仕様だ。

「どうしても強い、レベルが高いといったイメージがあるロックスタイル。重厚感のあるグラスも僕個人としては大好きですが、その重さを崩してエレガントに見えるグラスに仕上げました。繊細な薄張りグラスの口径はギリギリを攻めた急角度のカーブになっていて、液体が浮いているかのような浮遊感があります。ウイスキーはもちろんですが、トマトジュースやフルーツジュースもおいしく味わえますし、まるで液体そのものをつかんでいるような感覚になるかもしれません。女性が持っても絵になるエレガントさも意識しました。濃いめのハイボールにもいいですし、オールドファッションドやネグローニといったカクテルもまろやかに味わえます。スタッキングできるのもポイントです」

「咲グラス」で思い込んでいた味と違った個性を発見できる!今までにない体験が待っている!

咲グラスはいずれも驚くほど軽く、職人の手によってつくられた柔らかさや、唇や手へのなじみのよさ、そして繊細なフォルムが特徴だ。

「香りの立ち方と味わいの感じ方の違いで、このウイスキーはこんな味、と思い込んでいたものとはまったく違う味わいや個性が発見できます。とくに『咲テイスティンググラス』は今までにない体験ができるグラスです。『蕾グラス』は少量ずつ何種類も味わいたい方に向きますし、『咲タンブラー』『咲ロックグラス』は自由度が高く、ジントニックや香りを愉しみたいノンアルコールドリンクにもいいですね。ウイスキーは嗜好品ですから、愉しみ方は人それぞれです。このグラスがよりウイスキーを愉しむきっかけになればいいなと思いますし、飲み幅が広がることでその人の人生の一部をより豊かな時間にできることを願っています」

静谷和典(しずや・かずのり)
新宿三丁目「BAR LIVET」「BAR 新宿ウイスキーサロン」オーナーバーテンダー。ウイスキー文化研究所が主宰する知識、鑑定能力を問う資格認定制度の最難関「マスター・オブ・ウイスキー」を取得。ウイスキーベースのカクテル “ウイスクテイル” の開発・普及も目指す。「CT Spirits Japan カクテルコンペティション2021」ではシングルモルトスコッチウイスキーを使用したウイスクテイルにてカクテル日本チャンピオンに輝く。「バーテンダーしずたにえん」として、TikTokやYouTube、 SNS でも幅広く活躍。総フォロワー数は207万人を誇る。現在はウイスキー専用グラスの咲グラスシリーズも展開中。

Youtubeチャンネル バーテンダーしずたにえん https://www.youtube.com/@bar-channel

インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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