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NEW2025.04.21 Mon

『東京ウイスキー』生みの親 池田 健氏が語る、その熱意と願い『東京ウイスキー2024』は過去・現在・未来と多様な文化がミックスした都市「東京」と相似するブレンデッドウイスキー。日本を代表するブランドに育てたい。

池田 健さん(『東京ウイスキー』プロデューサー)

2020年にごく少量のみの限定販売で初リリースを迎えた『東京ウイスキー』。日本を代表するバーテンダー、毛利隆雄さんが監修を務めた希少なウイスキーである。『東京ウイスキー2020』『東京ウイスキー2022』に続き、現在は第3弾となる『東京ウイスキー2024』を販売中だ。毎回、味わいの方向性が大きく異なり、第3弾は毛利さんが「圧倒的にスムーズで、度数を感じさせない熟成感と素晴らしいバランス」と表現する味わいとなった。ブランドの生みの親である池田 健さんに、あらためて『東京ウイスキー』の誕生の経緯と今後の展望を訊いた。 (撮影場所/ MORI BAR GRAN)

「過去・現在・未来、そして多彩な要素がミックスして化学反応を起こす都市『東京」のワクワク感をブレンデッドウイスキーに込めたかった」

『東京ウイスキー』のプロデューサー・池田 健さんがブランド誕生の萌芽となるプロジェクトを始動させたのは2018年のことになる。「歴史遺産を未来資産に」というビジョンのもと、日本をテーマに伝統文化・芸能・工芸などを世界に打ち出すプロジェクトを手掛ける一貫で、日本酒に携わっていた頃だ。そこで初めて、池田さんは、日本酒には深い歴史的背景がありながらも、酒蔵として生き残ることが難しい現在の状況を目の当たりにする。そこからさらにお酒の世界に強い興味を持ち、今度はウイスキーに携わる機会を得たのだった。

池田さんは、両親や近親者に起業家や芸術家やクリエイターがいる環境で育ち、自身も幼少期から芸術に慣れ親しんできた。学生の頃から「芸術とビジネスが融合することができたら面白いな」とおぼろげながら思っていた。

「アート制作で大事なことは『インパクト』『コンセプト』『レイヤー』という 3つの要素。この 3つを組み合わせるといい作品が生まれるものです。これをビジネスにおけるウイスキーに置き換えてみると、歴史的背景がある時点ですでに豊かなレイヤーが備わっています。そこに見た目のかっこよさや美しさといったデザイン的なインパクト、この商品が伝えるべきことや社会にどんな影響を与えるかというコンセプトを三位一体で考えて『東京ウイスキー』の誕生に取り組んでいきました」

まず頭を悩ませたのはネーミングだった。どんな人が買ってくれるのかと想像し、なによりわかりやすいものがよいと思った。

「そこで浮かんだのが『東京ウイスキー』です。僕は生まれも育ちも東京で、地方や世界から見た『東京』という二文字が秘めている大きな魅力も知っています。歴史的なのに先進的で、多様な人々と文化が混在している。過去・現在・未来と多彩な要素がミックスして化学反応を起こす都市『東京』のワクワク感を、熟成させた原酒をブレンドすることで新しい世界観を創り出すウイスキーにも共通するのではないかと感じました。このネーミングが浮かんで、すぐにロゴを考えました」


ラベルの『東京』の文字を書いたのは、代々江戸幕府の数寄屋頭を務め、300年以上の歴史を持つ流派、武家茶道 石州流伊佐派九世 磯野宗明氏。(ボトルは左から『東京ウイスキー2020』『東京ウイスキー2022』『東京ウイスキー2024』)

『東京』を冠したウイスキーらしく、日本を代表するバーテンダーの毛利隆雄さんに監修を依頼

『東京ウイスキー』を名乗るからには、日本を代表するようなウイスキーであってほしい。そのためには、日本一のバーテンダーに監修してほしい――池田さんはそう考え、「毛利マティーニ」でも世界にその名を知られるレジェンド、「MORI BAR」オーナーバーテンダーの毛利隆雄さんに監修を依頼した。 

「毛利さんが加わってくださり、背筋がグッと伸びました。それまで迷っていたことも、まるでモーゼが海を割るかのごとく壁が取り払われてクリアになり、毛利さんの偉大さを実感しました。ウイスキーの勉強に毛利さんのバーへ日参していた時も、お忙しいでしょうにいつも僕の前に立って、時には横に座って気さくにお話をしてくださる。人間的な魅力においても達人の域にある方はさすがだと感動しました」

最大の要である製造は長濱蒸溜所が担い、第1弾の試作からして選定に迷うほどハイレベルな試作品ばかりが届いた。池田さんはその時点ですでに、強い手ごたえを感じていた。
プロジェクトは順風満帆に進んだかのように思えるが、第2弾の製造では困難もあったという。

「当初はシェリー樽で後熟させようという案がありました。最後の最後で毛利さんと共に試作品を試飲した時、おいしくはあったのですがかすかなえぐみがあったんです。正直に長濱蒸溜所にお伝えしたところ、なんとすべての原酒を造りかえるとおっしゃってくださいました。その後に送られてきたものが、もうめちゃくちゃおいしくて…! 長濱蒸溜所はとにかく目の前の仕事にすごく誠実で、プロ魂を感じましたね。高いプライドを持っていて、そのうえで柔軟に対応してくださいました」


第1、2、3弾の試作品を手に『東京ウイスキー』のストーリーを語る池田 健(たけし)さん。「毎回最初からハイレベルなものばかりが届き、毛利さんも『どれもおいしいね』とコメントしてくださるほど。長濱蒸溜所のプロ意識の高さを感じました」

国内外を問わず新しい飲み手に届くウイスキーに。「明日も頑張ろう」と自分を励ます1杯であってほしい

第1弾、2弾はリリースと共に瞬時に予定本数が売り切れた。まずは「国内のウイスキーファンに認知されたい」という思いの通り、ほぼ国内での購入者によるものだった。
第3弾は販売本数を大幅に増やし、シンガポールで披露目会を催すなど海外への展開も視野に入れている。国内外を問わず、新しい層の飲み手にも届いてほしい――それもまた『東京ウイスキー』というブランドのコンセプトである。

新しい飲み手に響くために、この先、どんな展開の可能性があるのだろうか。

「ボトルやラベルにアートを施していく展開ができたらおもしろいな、と思っています。格別なウイスキーであり、世界に1本だけの作品となります。ファッションブランドとのコラボレーションも未知数の可能性があるのではと考えています。大々的にコマーシャルを打ったり、大量に造るのではなく、『特別な人に飲んでほしい』と思えるような小ロットのプロダクトです」

『東京ウイスキー2024』は、1本(700ml)3万3000円(税込)と、希少かつ高級なウイスキーだ。池田さんに、どんなシーンで愉しまれることを望むか訊いてみた。

「どんなシチュエーションでも飲む方に愉しんでいただければそれがベストです。でも、しいていうなら、大切な人と一緒に味わっていただけたらと思います。あとは……生きているととかくしんどいことは山ほどあります。そんな時に『東京ウイスキー』を飲んで『明日も頑張ろう』と、自分を励ますために愉しんでいただけたら本当に嬉しいです」


『東京ウイスキー』を手掛ける株式会社TW、プロデューサーの池田 健(たけし)さん。大学生時代からアート活動を始める。卒業後はIT会社の社長のかばん持ちから始め事業経験を10年にわたって積み、2015 年から起業家となる。武家茶道 石州流伊佐派九世 磯野宗明氏に師事。庵号は半圓庵。


『東京ウイスキー2024』(700ml)33,000円(税込)/長濱蒸溜所のシングルモルトノンピートシェリー樽熟成原酒、ミズナラ樽熟成原酒に加え、海外から購入した1990年蒸溜の30年熟成モルトや、1996年蒸溜のモルトなど、合計7種類のモルト原酒がブレンドされる。多様な原酒のブレンドによる複層的な味わいと、熟成感がもたらす深い風味、そしてモルティな余韻が広がる。


インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。

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