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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2016.09.16 Fri

トップバーテンダーが感じた「パーフェクト・カクテル」宮﨑 剛志さんに聞く

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441ページの圧倒的なボリュームで最先端カクテルの作成ノウハウが紹介されている「パーフェクト・カクテル 〜ニューヨーク最先端バーのスーパーテクニック〜」。この学術書のように論理的で美術書のように美しいカクテルの専門書をトップバーテンダーはどのように読み解くのか。BAR TIMES編集部は日本を代表する5人のバーテンダーに本書についての率直な感想をお聞きすることにしました。

今回は、宮﨑 剛志さんの書評をご紹介いたします。日本酒、日本茶など和のエッセンスを活かした新しいカクテルを考案し、国内だけでなく世界へ日本文化を発信しているまさにワールドクラスのバーテンダーです。

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第一部 第2章『材料』。この章で解説されている『甘味』『塩』『酸』の内容について触れたいと思います。甘味料ではシンプルシロップから乳化シロップに至るまで様々な種類の解説、使用材料や作り方まで非常に細かく説明されています。これだけをとっても十分に読み応えのある内容です。しかし本書で私が最も興味深かったところは、甘味を果糖とショ糖に分解しそれぞれの温度帯でのテイストに触れているところです。

一般的に甘味は低温では感じにくく、温度が上がるにつれて感じやすくなる、厳密に言うと体温に近いと最も強く感じると言われています。本書に書かれている通り、甘味の量は同じでも温度によって果糖とショ糖の『感じ方』が変わり、テイストに大きく影響を及ぼすということです。せっかくのカクテルも時間がたてば温度が上がり甘味を過度に感じてしまうことがあるとも書かれています。

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その解決策のひとつとして塩にも触れています。塩気を足して甘味を引き立て甘味料を少し控えることで「時間がたっても味のバランスが壊れにくい」というヒントがここに隠されているように思います。因みに塩も温度で大きく味わいが変化します。高温ではやわらかく、低温では鋭角的に感じます。ラーメン屋さんで一口目にスープを飲んでおいしいと思っても、友人と長居して帰りに残りの冷めたスープを飲んだとき『塩辛い』と思うのと同じです。(僕だけでしょうか…)

酸味に関しても非常に興味深いことが書かれています。レモンやライムといったフレッシュフルーツの酸を分解し、さらに時間の経過とともに変化するそれぞれの酸を非常に細かく解説してあります。その中でも興味深かったのはシャンパン酸に関してです。この内容はカクテルでシャンパンテイストを構築するための新しいアプローチになるでしょうし、フードマッチングカクテルを作るうえでも大きなヒントになるに違いありません。

数値的な根拠だけでなく、その根拠をしっかりと味覚に落とし込むことで、読者によりわかりやすく解説している非常に興味深い内容の章でありました。

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宮﨑 剛志
奈良ホテル「ザ・バー」

2013年 Diageo World Class Global Final 第3位
2013年 Diageo World Class Global Final リージョン 優勝 アジア・パシフィックチャンピオン
2013年 Diageo World Class Global Final 部門 優勝キングス・オブ・フレーバー部門 優勝
2013年 Diageo World Class Japan Final 優勝



パーフェクト・カクテル

ニューヨークでハイテク・バーを営むカリスマ・バーテンダーが、最先端のカクテル作成ノウハウを惜しみなく公開した「パーフェクト・カクテル 〜ニューヨーク最先端バーのスーパーテクニック〜」が楽工社より発刊されました。ページ数/441P、レシピ/120点、カラー写真/450点のボリューム。

単行本: 441ページ / 著者:デイブ・アーノルド / 日本語版監修者:岸 久 / 翻訳者:二階堂 行彦 / 出版社: 楽工社 / 発売日: 2016年6月

詳しくはこちらから

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