2017.11.21 Tue
『カクテルアワード2017』井上新平氏インタビュー2人のチャンピオンの後を追いかけ
挑み続けたカクテルアワードへの道
BAR TIMES編集部10月5日、ホテルニューオータニ(東京・千代田区)で『2017 サントリー ザ・カクテルアワード』の最終選考会が行われた。ショートとロングを合わせ合計12のカクテルがファイナルステージに進み、井上新平氏の『Aile d’ore(エル ドール)』が今年もっとも優れたカクテルとして『カクテルアワード2017』を受賞した。毎年大きな注目を集めるカクテルコンペティションを終え、井上氏は今、何を思うのだろうか。(撮影場所/リーガロイヤルホテル(大阪) リーチバー)
挑戦し続けたカクテルアワード。
「カクテルアワードは6年前から挑戦してきました。どうしても納得のいく作品がつくれなかったり、1次審査に通らなかったり、長い道のりでしたが私にはある目標がありました。それは、1996年にこの大会で優勝された『バー・ハーバー・イン』(大阪・梅田)の藤田さんと一緒にトロフィーを2つ並べて記念写真を撮ること。藤田さんは私の憧れであり、バーテンダーの道を選ぶきっかけを与えてくれた方です。ですから私にとってカクテルアワードとは、何よりも思い入れの強いコンペティションなのです」。
創作カクテルは会心の出来。
「実を言うと今大会では優勝するイメージしかありませんでした。本番1週間前から“自分は勝てる”と言い聞かせ、3日前には表彰台に上がる夢を毎日見ました(笑)。1年かけて準備もしてきましたし、自分のモチベーションをMAXまで引き上げることができましたから。そのせいか、いつもはガチガチに緊張して手が震えていたのですが、今回は気持ちに余裕をもって臨むことができました。もちろん、創作カクテルに絶対の自信があったという点も大きいですね。“これだ!”と思う納得のいく作品でしたから」。
6年間温めた『Aile d’ore』のカクテル名。
「優勝カクテルの『Aile d’ore(エル ドール)』は、どなたにも気軽に楽しんでもらいたい、そんなコンセプトから創作しました。誰からも親しまれるルジェの桃とアプリコット、そしてジャパニーズクラフトジン ROKUの繊細な香りと複雑な味わいが私の思い描くカクテルのイメージにぴったりでした。ROKUが今年発売されたおかげで求めていたカクテルができた。勝つべくして勝ったのだと思います(笑)。
フランス語で“黄金の翼”という意味の『Aile d’ore』は、大会に挑戦した6年前からずっと温めていました。先述した藤田さんのカクテル名『ベルエール(美しい翼)』にちなんでいます。ですからここぞという時にしかこの名前を付けないと決めていたのです。私は常にカクテルにはどこか妖艶さや不思議さを残したいと思っています。そのためガーニッシュには鳥は付けず翼だけにしました。大空を羽ばたいている、翼を休めている等お客様がどんな想像をするか、それもカクテルを楽しむひとつにしていただければと思います」。
感謝で有終の美を飾った井上氏の挑戦。
「振り返ると、周りの方にどれだけ助けていただいたか分かりません。何年も大会に挑戦し続けていると正直くじけそうになる時もあります。特に私の上司である影山も2005年にこの大会で優勝していますので、技術的にもメンタル的にも常にサポートしてくださいました。影山に出会っていなかったら今回の優勝は難しかったかもしれません。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。これから1年間『サントリー アワード アンバサダー』として活動していきますが、多くを勉強し、吸収して、いい意味でカクテルという固定観念を破っていきたいと思っています。自分自身でもどう変われるか楽しみですね」。
プロフィール
井上 新平(いのうえ しんぺい)
奈良県出身。専門学校を卒業後バーテンダーの道へ進む。2015年ロイヤルホテルに入社し、リーチバーに勤務。現在に至る。2017 SUNTORY THE COCKTAIL AWARDロングカクテル部門 最優秀賞、カクテルアワード 2017受賞。
Aile d’ore(エル ドール)
■RECIPE■
◎ルジェ クレーム ド ペシェ/20ml
◎ジャパニーズクラフトジン ROKU/20ml
◎ルジェ クレーム ド アプリコット/10ml
◎フレッシュレモンジュース/10ml
◎ オランジーナ フレンチスパークリング/適量
■つくり方■
1. オランジーナ フレンチスパークリング以外をシェークして、氷を入れたグラスに注ぐ。
2. オランジーナ フレンチスパークリングで満たし、イエローチェリー、オレンジの皮、金粉、銀粉を飾る。