fbpx

バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2018.11.7 Wed

バランタイン17年 トリビュートリリース リミテッドエディション発売記念 スペシャル対談伝統から生まれたトリビュートが伝える
バランタイン17年の全貌と
サンディー・ヒスロップの思いに迫る

BAR TIMES 編集部

2018年10月9日、日本限定発売「バランタイン17年 トリビュートリリース リミテッドエディション 」(以下、トリビュートリリースLE)の発売を記念して、5代目マスターブレンダーを務めるサンディー・ヒスロップ氏が来日。今回はBAR TIMESの特別企画として、ウイスキー評論家の土屋守氏との対談が実現しました。「サンディー・ヒスロップ氏が最も作りたかったもの」をテーマにしたトリビュートリリースLEの全貌が明らかに。日本限定版として彼の生み出した新たなトリビュートリリースLEの魅力、発売するにあたっての日本への思い、そしてバランタイン17年のマスターブレンダーとしての仕事への思いを語っていただきました。(撮影場所/BAR TIMES STORE)

「バランタイン17年」が本来持っている、
隠れた味わいがトリビュートリリースLEの主役

 
土屋守氏(以下、土屋)
「トリビュートリリースLEは、どんな味や香りを目指してつくられたのでしょうか?」
サンディー・ヒスロップ氏(以下、ヒスロップ)
「従来品のバランタイン17年の中にある、隠れたテイストを表に出すことを目的としました。口にした際、通常は気づかれにくい要素ですが、長い歴史のなかでバランタイン17年の中に確実に存在し、受け継がれてきた味わいです。トリビュートリリースLEで、多くの人にこの味わいを知ってもらえればと思います」
土屋
「バランタイン17年の奥に潜んでいた味わいを楽しめるのが今回のトリビュートリリースLEの魅力ですね。実際にこうして飲み比べてみると、こんなにも違う味わいが楽しめるのかと驚きます。具体的には、どのようなフレーバーを引き出したのですか?」
ヒスロップ
「ハチミツ、ホワイトチョコレート、バニラなどですね。ビターでもミルクでもない、クリーミーでリッチな味わいのホワイトチョコレートであることも重要な点です。実際に試していただくことで、デリケートで芳醇な甘みが口の中に広がるのを感じていただけるでしょう」

土屋
「微かなスモーキーさが従来のバランタイン17年の特徴だと思いますが、それを抑えたことで様々なフレーバーを感じることができるということですね。バランタイン17年に、こんなにも多様な味わいや香りが潜んでいたのかと驚きます」
ヒスロップ
「スモーキーさを抑えたことで、クリーミーでスムースなホワイトチョコレートのような味わいの他に、シトラス系の柑橘類を思わせるさわやかな甘みも表に出てきます。香りもオレンジジュースのような、熟した甘いオレンジではなく、シトラス系のオレンジです。リッチな味わいと共に、甘くさわやかな余韻を楽しめます」
土屋
「実際に味わってみることで、従来品ではあまり目立たなかったオレンジ系のフルーティーな香りが引き出されているのがよく分かりますね」
ヒスロップ
「アメリカンオーク樽、特にセカンドフィルの原酒を多めに使用することで、デリケートな味わいと香りを引き出すことに成功しました。実際に飲んでいただくことで、バランタイン17年の新たな味わいを感じていただけるのではないかと思います」


サンディー・ヒスロップ
バランタイン17年 5代目マスターブレンダー。1983年からウイスキー業界に携わり、1992年にバランタインのブレンダーとなる。2006年にバランタイン17年の5代目マスターブレンダーに就任。2016年にはISCにて「マスター・ブレンダー・オブ・ザ・イヤー」を受賞。


ファーストフィルの樽も使用することで、
洗練されたデリケートな味わいをつくり出す

 
土屋
「従来のバランタイン17年との違いはどのようにつくり出したのでしょうか? ブレンドのレシピを変えるとか?」
ヒスロップ
「様々な要素の融合により、結果としてこの味わいと香りが完成しました。レシピはレシピで独特なものになっているのですが、バランタイン17年の主要となっている要素はきちんと存在しており変わりません。原酒のフレーバーやブレンドの違いによるところもありますが、熟成させる樽からの影響は大きいですね。樽に使われる木材の違いによって、味にも個性が生まれます。トリビュートリリースLEには、通常の17年ではあまり使用しないアメリカンオーク樽のファーストフィルを使用したのも重要な点です。フレーバーからくる影響と樽からくる影響のバランスが非常に良いのです」
土屋
「ファーストフィルの樽も使用することで、よりデリケートな味わいを引き出すことに成功したということですね。何百万もの樽が頭にインプットされているヒスロップ氏だからこそ、バランタイン17年の伝統から新しいトリビュートリリースLEを生み出せたのだと思います」

ウイスキーへの造詣が深い日本のモルトファンに向け
新しいものを作りたかった

 
土屋
「バランタイン17年はブレンドの良さもバランスも完璧で、スコッチの代名詞と言っても過言ではないと考えています。世界でも傑出したブランドであるバランタイン17年が、日本限定でトリビュートリリースLEをつくろうと考えたのは何故ですか?」
ヒスロップ
「バランタイン17年にとって、日本のマーケットは最も重要です。日本のモルトファンはウイスキーに対する知識レベルが非常に高く、日本でセミナーを開催した時には他国と比較して格段にレベルの高い質問が飛び交います。そのこともあって、私は質疑応答の時間を楽しみにしていました。そのようなレベルの高い消費者がいる日本のマーケットで、バランタイン17年が非常に高く評価されています。ですので、限定版のトリビュートリリースLEを販売するマーケットは、日本以外に考えられませんでした。トリビュートリリースLEの洗練された繊細な味わいや豊かな香りも、きっと日本のモルトファンに気に入ってもらえると思います」
土屋
「80周年を記念して昨年も日本限定版のトリビュートを出してくれましたが、一回きりだと思っていました。それが、81周年にあたる今年も新たなトリビュートリリースLEを出してくれたということに、とても感激しています。ヒスロップ氏の日本に対する愛情や信頼の気持ちも嬉しく思いますし、個人的な希望としては、来年も大いに期待したいと思っています(笑)」


土屋 守
1987年から1993年までイギリスに在住し、イギリス文化にまつわる多くの著作を発表。取材をきっかけにスコッチのシングルモルトに出会い、スコッチにのめり込む。1998年ハイランド・ディスティラーズ社より「世界のウイスキーライター5人」のうちの1人に選出される。2001年にスコッチ文化研究所(現ウイスキー文化研究所)を設立。同研究所の代表を務めながら、ウイスキー評論家としての顔も持つ。


ノンチルでどんな条件でも美味しく味わえるのが48度。
日本人なら、その意図を分かってくれる

 
土屋
「ヒスロップ氏が48度にこだわる理由は、やはりノンチル製法が頭にあるのでしょうか?」
ヒスロップ
「その通り。アルコール度数が48度だと製造過程で冷却濾過の必要がないノンチル製法が可能なので、素材の味をそのまま楽しむことができるのです」
土屋
「海外ではノンチル製法の意味があまりよく分かっていないようですが、日本のモルトファンはきちんとノンチル製法を用いる意図を理解してくれているので、ありがたいですね。私はこのように製造されたトリビュートリリースLEを大ぶりのグラスか、チューリップグラスでゆっくりと、ストレートかロックで楽しみたいと思います」

トリビュートリリースLEならではの味わいをじっくりと堪能する土屋氏

ウイスキーは多様性に富んだもの。だから、
トリビュートリリースLEも好きな飲み方で楽しんで

 
土屋
「トリビュートリリースLEの飲み方は、私はストレートかロック派ですね。ヒスロップ氏は、この味わいをより楽しむ飲み方は何だと考えていますか?」
ヒスロップ
「バランタイン17年はとても多様性に富んだウイスキーです。アイスを入れてもストレートでも楽しめますが、あらゆるフレーバーが凝縮されているのでミックスをしても耐えられるほどのパワーがあります。ですから、このトリビュートリリースLEも好きな飲み方で楽しんでほしいと思います」
土屋
「ちなみにヒスロップ氏は、普段どのような飲み方をしていますか?」
ヒスロップ
「アイスと少しの水を入れると、より豊かに味わいと香りを感じられますね。水割りも好きですが、このトリビュートリリースLEのハイボールは最高です。私はスイートなハイボールが好みなので」
土屋
「日本ではハイボールはポピュラーな飲み方ですが、上質なウイスキーをハイボールで飲むなんてもったいないと考える人も多いように思います。私は色々なウイスキーでハイボールを飲みますが、スモーキーなものが好きですね」
ヒスロップ
「私は、ウイスキーはそもそも多様性のあるものでなければいけないと考えているので、ハイボールにするのはもったいないということは絶対に口にしません。上質なウイスキーだからこそ、どんな楽しみ方でも魅力は消えないので、普段はしないような様々な飲み方もぜひ試してみてほしいですね」


バランタイン17年とトリビュートリリースLE、
飲み比べて、味わいの違いを感じてほしい

 
土屋
「従来のバランタイン17年とトリビュートリリースLEを同時に飲み比べて、味わいと香りの違いを楽しむのもいいですよね。同様のレシピからここまで違うものが出来ることに感動しました」
ヒスロップ
「バランタイン17年とこのトリビュートリリースLEは、決して別物ではありませんし、バランタイン17年があってこそ生まれたものです。従来のものと今回のトリビュートリリースLEの違いを、実際に飲み比べをして楽しんでほしいですね」

新しいものを生み出せる幸せと、
バランタイン17年の伝統を守る責任

 
ヒスロップ
「マスターブレンダーになって今年(2018年)で12年目ですが、非常にエキサイティングな仕事だと日々思っています。自分がマスターブレンダーを努めている間に、新しいものを生み出せるというのはとても幸せなことだと感じています」
土屋
「ヒスロップ氏は現在、バランタイン17年に使用される原酒の管理もしていると思いますが、その原酒が使われるのはマスターブレンダーの任期が終わってからですよね。きっと次のマスターブレンダーが使用することになるのでしょう。今現在使用しているのは、ヒスロップ氏がマスターブレンダーになる前に作られた原酒ですよね。このように、バランタイン17年は代々受け継がれていくのですね」

ヒスロップ
「私にはマスターブレンダーとして従来のバランタイン17年の伝統を守り、次につなげていく責任があります。何があっても、伝統を守らなければならないという使命もあります。マスターブレンダーの仕事は常に誇りに思える、大好きな仕事です」
土屋
「マスターブレンダーであるヒスロップ氏にとって、バランタイン17年はどんな存在ですか?」
ヒスロップ
「バランタイン17年は1937年に作られてから現在に至るまで受け継がれ、供給され続けている世界的な評価も高く非常に素晴らしい重要なポジションにあるものです」
土屋
「贈り物としても、間違いないチョイスだと思います」
ヒスロップ
「バランタイン17年をギフトとして贈ることで感謝の気持ちが伝わるなら、これほど嬉しいことはないですね」
土屋
「マスターブレンダーとして、これから挑戦したいことはありますか?」
ヒスロップ
「トリビュートリリースLEは特別なものなので毎年つくることは考えていませんが、5代目マスターブレンダーとして新しいものをいくつかつくって自分のポートフォリオにしていきたいですね。もちろん、バランタイン17年の伝統的なスタイルも大切にしながら」


サンディー・ヒスロップ氏の日本への愛と伝統への敬意が詰まったトリビュートリリースLEを味わう


(取材後記)
バランタイン17年の第5代マスターブレンダーと日本のウイスキー文化の第一人者との対談は1時間にも及び、「サンディー・ヒスロップ氏が最もつくりたかったもの」をテーマにした今回のトリビュートリリースLEへのそれぞれの想いが交差した濃密な時間となりました。日本への愛を込めてつくられた、洗練されたリッチな味わいと豊かな香りは多くの人の日常に贅沢なひとときをもたらしてくれるのではないかと思います。従来のバランタイン17年とトリビュートリリースLEを飲み比べて、80年の伝統を誇るバランタイン17年の奥深い魅力と新たな可能性を感じてみてはいかがでしょうか。

※2017年にもバランタイン17年の誕生80周年を記念して「バランタイン17年 トリビュートリリース」を発売。
※2018年10月9日発売の日本限定「バランタイン17年 トリビュートリリース リミテッドエディション」は「トリビュートリリースLE」と表記。

   

BAR TIMES INFORMATION

関連記事はこちら

PAGE TOP