2019.04.3 Wed
「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第一回
ルル 〈神戸〉
Office Ittetsu & BAR TIMESバーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。
第一回 ルル 〈神戸〉1993年 現在閉店
過去2度出版した「to the bar」の表紙に、一徹は迷うことなく、この図柄を選んだ。ルルと長原良明マスターに対する敬意と親愛はそれほど大きかった。静寂が包む店内で、マスターが黙々と氷を切る包丁の音だけが響く。カウンターの男性客はそんな所作をじっと見つめている。バー空間の素晴らしさが凝縮された作品。間違いなく、これは一徹バー切り絵の代表作の一つであろう。(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)
神戸を代表する老舗バー。昭和二十四年の開業。長原良明さんという美しいバーテンダーのいる店だった。白いメスジャケットにボウタイ、カマーバンドといういでたちは、一つ間違うとキザで滑稽にさえなりかねないが、長原さんにはぴったりと似合った。この人ほど、バーを劇場と心得た人はいないに違いない。そうすれば納得できる。あのいでたちはステージ衣装だったのだ。第一、ロバート・テーラーを彷彿とさせる風貌は名優そのものではないか。店には低くシャンソンが流れていた。潮風の匂う、港町らしい酒場という表現は月並みだが、そのとおりだった。(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選 〜神戸の酒場から始った。〜」より抜粋)
月刊「清流」より@上田佑勢
成田 一徹 (なりた いってつ)
1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。
著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。
◎バーUK さんのホームページ内のこちらから、成田一徹さんの小作品原画や複製画の一部を購入することが出来ます。
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