2019.05.9 Thu
「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第三回
コレオス〈東京〉
Office Ittetsu & BAR TIMESバーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。
第三回 コレオス 〈東京〉2005年 現在閉店
この酒場も上京前の1980年代から足を運んだ名店。一徹は、大泉洋マスターの「優しい人柄と辛口のジョークが好きだ」とよく話していた。進駐軍のバー出身のマスターからは、バー業界や酒についていろいろと教えを請い、個人的にも生涯、父親のように慕い、親交を深め続けた。店は2014年3月末、惜しまれながら閉店。(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)
渋谷は若者で占領された街だ。どちらを向いても若者ばかり、たまに見かける中年男は、親にはぐれた迷子のようにどこか頼りなげだ。ウロチョロしているとオヤジ狩りに遭うのがオチだ。
だから、渋谷へは仕事以外はまず行かない。仕事とはもちろん「コレオス」を訪ねること。駅を出るとまっすぐ「コレオス」をめざす。スツールに腰を下ろすと、まずフッと安堵のため息をつき、冬ならたとえばホット・バタード・ラムが最初の一杯。
そうだここは大人の避難所、若者の海に唯一孤島のように浮かぶ大人のバーだ。
「何よりお客さんに、旨い時間を楽しんでもらえるような店にしたい」開店当初に聞いた主の大泉洋さんの抱負だ。終戦直後、米軍将校クラブで働いたキャリアをもつ。人をもてなすセンスと技術は筋金入りである。若いバーテンダーの対応も好もしい。寂しい中年男をなぐさめる術を心得ている。
「コレオス」には今宵も大人の酒徒が集い、それぞれが旨い時間を満喫していることだろう。
外には、荒涼とした若者たちの海が広がっている。(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選」より抜粋)
月刊「清流」より@上田佑勢
成田 一徹 (なりた いってつ)
1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。
著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。
◎バーUK さんのホームページ内のこちらから、成田一徹さんの小作品原画や複製画の一部を購入することが出来ます。
◎「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 他の作品はこちらから