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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2019.09.4 Wed

「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第八回
BAR BAMBoo〈神戸〉

Office Ittetsu & BAR TIMES

バーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。


第八回 BAR BAMBoo〈神戸〉2003年

この酒場の埜村(のむら)裕一マスターと一徹との付き合いは古く、知り合ったのは90年代の初めである。上京後も神戸に帰るたびに、しばしば顔を出した。店は、三宮のハンター坂の上に立地するが、一徹はどんなに疲れて、酔っていても歩いて坂を上がった。そして、「上がってきた甲斐があった」と埜村マスターのマティーニを楽しんだ。
(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)


 バーへは、できる限り歩いて行くようにしている。当方がプアなせいもあるが、タクシーで直接入り口に乗りつけることはまずない。バーへのアプローチの仕方を大事にしたいからだ。
 最近、神戸に帰ると「バンブー」というバーによく行く。素敵な店だが、まずそこに至る道程が気に入っている。ハンター坂の中腹、行くのはたいてい深夜である。酩酊の身にはまことに遠くつらい上りだが、この大好きな坂を上って店のエントランスに立つと、やっと神戸の酒場にたどり着いたという気がする。少々疲れていても、歩いて訪ねたいバーである。
 この日も大阪で何軒かハシゴしたあと、息をきらして坂を上り、扉を開いた。
 ギブソン。トム・コリンズ。ギブソン。急激に酔いがまわってきた。バック・バーの上部に切り取られた窓の向こうで、植え込みの竹が揺れている。仕上げは、こいつを見ながらバンブーの優しい一杯である。
 ふらつく足で店を出た。運良く前を走っているタクシーに思わず手を上げた。
(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選」より抜粋)

※店舗は2018年8月に三宮東門街へ移転しています。
※タイトル等の店舗表記「BAR BAMBoo」は、成田さんが切り絵を描かれた当時のものとなります。



月刊「清流」より@上田佑勢

成田 一徹 (なりた いってつ)


1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。

著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。


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切り絵作家 成田一徹さんの作品がバーカウンターに蘇る「成田一徹 バーマット」詳しくはこちら

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