2019.09.19 Thu
第一回優勝者 bar cacoi 大場さん
9/4~9/9 TOKENの本拠地、エドモントンへトークン社 オリジナル・ビターズ
メーキング リポート
トークン・ビターズそして今回、現地の旅に同行したヘブンリー バインズ株式会社 三浦 理加さんに詳細をリポートしていただきました。
以前、BAR TIMESへのインタビューにて”私自身、茶道を含め日本の食材や文化のエッセンスを取り入れたカクテルの発信がテーマです。”と答えていた大場氏。今回のオリジナルビターズはどのような内容がメインとなるのでしょうか。ぜひ、以下リポートをご覧ください。
今年の3月31日にBAR TIMESのウェブマガジンにて『5月8日 カナダ大使館で最終選考会開催—トークン・ビターズ カクテルコンテスト参加者募集』という記事が掲載され、20名の枠も関係者の杞憂をよそにあっという間に埋まった日から、アルバータ州政府在日事務所やエドモントン経済発展局、トークン・ビターズ社の歯車が忙しく動き始めた。急遽決まったこのコンペ、しかも中身は前代未聞の「ビターズがメイン」である。審査員も同様に急遽引き受けて下さったBar Tenderly の宮崎さん、Bar BenFiddich の鹿山さんに応募されたレシピからファイナリスト6名を選んでいただき、5月8日にカナダ大使館にて決勝戦を行ったのははるか遠い記憶のように感じるが、とにかく、これは第一回優勝者のbar cacoi 大場さんの獲得したトークンにてオリジナル・ビターズを造るツアーの同行記である。
(因みに大場さんの受賞カクテル詳細はこちらのリンクを見て頂きたい)
時代と共に窮屈な法律も少しずつ改良され、今では若い層を中心にスモール・バッチのスピリッツを造り始めた。
その流行りのミニマムな蒸留所のうち、ハンセン社とストラスコナ社のジンと、トークン社のビターズをヘブンリーバインズ社で取り扱うと決まったのが昨年の秋。ほぼそこから一年後の9月4日、私は優勝者である大場さんと共にエドモントンへと旅立った。
トークン社は三人の創設者がいる。メインは大場さんに優勝の目録を渡している背の大きな、目のクリっとした–キーナンである。そのキーナンから紹介されたまだ若干29歳のフード・サイエンティストであり、今期からビターズのブレンドや香りの抽出を専門に手掛けている、はにかむとブルーノ・マーズに似ているこの青年こそ、今回のオリジナル・ビターズ造りの鍵を握る人物のマリオである。
逆に私たちがバー・ホッピングをしていて驚いたのは片手でシェイカーを振るバーテンダーが多かった事である。
話を元に戻すが、今回のオリジナル・ビターズの構成はどうするか、8月中大場さんとやりとりをしていて常に出てきたキーワードは「なにかしら和風」であった。しかし既に製品化されている和ビターズとは違うベクトルで造らないと意味が無く、お忙しい大場さんをメールで突いてはアイデアを出してもらい、それをカナダ側に伝えていた。
進捗が中だるみし始めたと感じたある日、以前キーナンが「試作品があるからちょっと味見してくれ」と手渡されたうちの一つを改めて実験的にカクテルに入れた時、脳天を貫かれたほどの衝撃があり、大場さんの元へそのビターズを持って走った。そこから方向性が明確になり、今回の内容に決まった。メインは赤味噌だとだけここに書き記す。
大場さんが吟味した一流の原材料を元にマリオがそれらを浸漬させたエキスを生成、大場さんが一つ一つのエキスを味見をしていく傍からマリオがそれらをブレンドし、最終的な味に詰めていく進捗過程を私は後ろでずっと眺めていた。作成の合間合間に非常に興味深いやりとりがあり、音楽の「絶対音感」のようなものが舌や鼻に備わっている人たちだからこその会話だと思いながらそれを聞いていた。
しかしようやく「ご褒美旅行」と言える時間を過ごされているのだなと感慨深いものもあった。是非ともこの二日間の、分刻みのスケジュールの疲れをそこで癒してほしい。そして森林浴をしながら心の洗濯もして頂ければと願った。
だがここでも宿泊先のバーテンダー氏やマネージャ氏とカクテル談議で盛り上がった挙句、新たなシグネチャーになりそうなレシピを提案してきたというのだから、日本人は本当に仕事が好きなんだと感心されたのを大場さんはご存じなのだろうか。
四週間後に今回作成したビターズのプロトタイプが東銀座のbar cacoiに届けられる事になっている。そこで最終調整をすれば、年内には「大場ビターズ(仮)」が日本に送られてくるはずである。勿論、販売の予定はない。熱烈なラブコールがあればもしかしたら…