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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

2019.09.26 Thu

「成田 一徹 to the BAR 」in BAR TIMES 第九回
あんて〈東京〉

Office Ittetsu & BAR TIMES

バーを愛した切り絵作家の故・成田一徹さんの著作権を管理されている「Office Ittetsu」と荒川英二氏(バーUK)のご協力のもと、成田さんが遺された作品の一部を「成田 一徹 to the BAR 」 in BAR TIMES としてご紹介させていただけることになりました。成田さんが切り描いたバーという世界の魅力に触れてください。


第九回 あんて〈東京〉2004年

上京した一徹は、数年内にオープンした店よりも、老舗のバーを次々と訪ね歩いた。「会員制」と記された玄関のプレートに最初は躊躇したが、そこは一期一会、当たって砕けろの精神でドアを開け、店主を魅了していった。86年に切った絵もあったが、これはサンデー毎日での連載「to the Bar」での1枚。
※店は06年、半世紀営んだ銀座を離れ、広尾へ移転した。
(神戸新聞総合出版センター「NARITA ITTETSU to the BAR」より転載)


 前回訪ねたのは何年前だったか。五年か六年か。記憶を反芻しながら狭い階段を二階に上る。「会員制」(これは場違いな客の防止用)のプレートを横目にガラス格子の扉を開ける。
 こぢんまりとアットホーム。かつ上品なのは、古い銀座の酒場である証しだ。ラワン材のカウンター、革張りの肘掛けとスツールが温かい。店内のところどころに配した客からの頂き物。カウベル、ピッケル、客船の船具等々。それらは客と店との愛らしく上品な交流を物語る。
 最後の客が去って静かになった。客席に腰を下ろした八十四歳のマダム。カウンターにいる六十七歳と四十歳の父と子のバーテンダー。前回と変わらぬ配置でそこにいる。
 今年九月、「あんて」は五十歳を迎える。
(朝日新聞社「TO THE BAR 日本のBAR 74選」より抜粋)



月刊「清流」より@上田佑勢

成田 一徹 (なりた いってつ)


1949年神戸生まれ。サラリーマン生活のかたわら切り絵に目覚め、88年に上京。切り絵作家として独立した。BARの空間をモチーフにしたモノクロームの切り絵をライフワークとしつつ、新聞、雑誌、書籍を中心に、街の風景や市井に暮らす人々、職人の仕事や生き様など多彩なテーマで作品を発表した。エッセイストとしても、軽妙で味わい深い文書にファンも多く、各地で個展、グループ展を多数開催した。講談社フェーマススクールズ・インストラクターも長くつとめた。2012年10月、脳出血で急逝。

著書に『to the Bar 日本のBAR 74選』 (朝日新聞社)『カウンターの中から』(クリエテ関西)『東京シルエット』(創森社)『The Cigger Story-葉巻をめぐる偉人伝-』 (集英社)『成田一徹の切り絵入門』 (誠文堂新光社)『あの店に会いに行く』(中央公論社)『神戸の残り香』 『新・神戸の残り香』(神戸新聞総合出版センター)『NARITA ITTETSU to the BAR』(神戸新聞総合出版センター)など多数。


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切り絵作家 成田一徹さんの作品がバーカウンターに蘇る「成田一徹 バーマット」詳しくはこちら


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