2019.11.19 Tue
「カクテルアワード2019』土屋明日香さんインタビュー満開の桜が散りゆく儚い姿
日本の風情をグラスに映した『春夢』
BAR TIMES 編集部10月3日、グランドプリンスホテル新高輪(東京・港区)で「2019サントリー ザ・カクテルアワード」の最終選考会が行われた。多数の応募の中から2度にわたる事前審査を経て、最終選考に進んだ12作品の中から、最も優れた作品「カクテルアワード2019」に輝いたのは、土屋明日香さんの『春夢(しゅんむ)』。頂点に立った土屋さんに大会を振り返りながら今の思いを聞いた。(撮影場所/Salon de Ric’s)
昨年のリベンジを果たすべく新部門に再チャレンジ。
今年はジャパニーズ部門が創設され、当店も海外のお客様が多いことから、和をコンセプトにしたカクテルをつくりたいと思っていました。実は、昨年のカクテルアワードにも挑戦しファイナルまで残ることができたのですが、緊張からか氷を落としてしまったり、グラスに注ぐ量が5杯ともバラバラだったり、正直悔いが残るものでした。ですから、今年こそはというリベンジの気持ちもありましたね。
満開の桜が散りゆく、幻想的で儚い情景をグラスに。
『春夢』は、海外のお客様にも分かりやすいよう、日本=桜をイメージし創作しました。昔から伝わる百人一首や和歌など、桜が散りゆく様子を自身の心情に例えて表現することがよくありますが、とても日本らしい文化だと前々から感じていて、そういった風情を一杯のグラスに表現したいと考えたんです。春夢とは元々、物事の儚さを表した言葉で、私が思うコンセプトにぴったりだったので、迷わずカクテル名にしました。
ベースにHAKUウオツカを選んだのは、お米由来のふわっとしたやわらかな甘さが、イメージしている味わいやカクテルのコンセプトに合っていると思ったからです。HAKUウオツカは、他のリキュールの味を立てつつも全体を包み込むような包容力のあるウオツカだと思います。それだけに、各材料の分量バランスがとても難しく、最終的には1ml単位で調整していきました。特に生姜シロップは、少しでも分量がずれるとバランスが途端に悪くなりがちなので、そこはもっとも気を配ったところですね。
自分なりに分析してみると、決定的に昨年と違った点は落ち着いて演技に取り組めたことです。この9月、たまたま知り合った書道の先生の教室に通うようになり、書道を通して精神を統一し、集中する力が養えたのかもしれません。おかげで当日はカクテルをつくることだけに集中し、プレゼンテーションでも伝えたいことをしっかり話すことができました。「やりきった」という思いが強くて、もし優勝できなくても悔いは残らなかったと思います。でも最後に自分の名前が呼ばれた時、本当に嬉しくて涙がとまらなかったです。
たくさんのお祝いの声をいただく中で改めて、お店の先輩方や倉敷のバーテンダーの先輩方、そしてお客様に育てていただいたからこそこの賞を受賞できたのだと思います。周りの人や環境に自分はとても恵まれていることを実感しました。また、アワード受賞を知って初めて当店に来られる方も増えましたし、様々なメディアに登場する機会も増え、この大会の注目度の高さを日々感じています。同時に、アワードを受賞できたことは自信にも繋がり「もっとおいしいものをつくろう」とより真摯に仕事に取り組みたいと思いました。今後は、この経験で得た知識や技術などをお客様にお返しし、よりよいバーテンダー、よりよいお店作りに貢献出来たらと、とてもワクワクしています!
◆土屋 明日香(ひじや・あすか)◆
学生時代にホテルバーでのアルバイトを経験し、卒業後は児童養護施設の職員として従事。その後、現在務める「Salon de Ric’s(サロン ド リックス)」(岡山県倉敷市)でバーテンダーとしてのキャリアをスタート。3年半のキャリアだが、カクテルづくりに対する真摯な姿勢と客へのホスピタリティ、何事にも臆せず挑戦する今後注目のバーテンダー。
・ジャパニーズクラフトウオツカ「HAKU(白)」/20ml
・サントリーリキュール「ジャポネ〈桜〉」/10ml
・ジャパニーズクラフトリキュール「奏Kanade〈白桃〉」/10ml
・サントリー「わつなぎ 生姜」/10ml
・フレッシュレモンジュース/10ml
[つくり方]
すべての材料をシェーカーに注ぎ、氷を入れてシェークしグラスに注ぐ。レッド・チェリー、大根、レモンの皮、穂紫蘇、干しぶどうの枝、南天の葉でつくったガーニッシュを飾る。