2021.12.20 Mon
新しい価値のウイスキー「ニッカ セッション」をカクテルに骨格がしっかりしているのに軽快だから
フルーツや繊細な甘味も引き立つ
ニッカ セッション × ルーフトップ バー 吉原泰俊グレーンを使わず、スコットランドと日本のモルト原酒のみをブレンドした、次世代のプレミアムウイスキーだ。
今回は、3人のトップバーテンダーに、自由な感性と創造性で、「ニッカ セッション」の潜在力を引き出す新しいウイスキーカクテルを提案してもらう。2人目は、東京・虎ノ門「アンダーズ 東京」にある「ルーフトップ バー」の吉原泰俊さんである。
きらめく都心の街並みと東京湾を見晴らす「ルーフトップ バー」。日常の喧騒をひと時忘れさせる空間である。ヘッドバーテンダーの吉原泰俊さんは、「ニッカ セッション」の持ち味をこう語る。
「グラスに顔を近づけると、熟れる前の爽やかなリンゴやヨーグルトのような乳酸を感じさせ、続いて香ばしいトーストや樽由来のバニラ香が漂います。そして味わいは、なめらかでクリーミー。後味には、赤ワインを飲んだ後のようなタニックなビター感が広がります。探れば探るほど複雑な香りが出てくる、愉しいウイスキーだと思います」
コロナ禍でこそ海外からのゲストの姿は減ったが、コロナ以前は外国人客も多く、吉原さん自身も数々の大会で賞を受賞し、ロンドンや上海をはじめ、さまざまな場所でゲストバーテンダーとして日本のバーテンディングを広めてきた。そんな吉原さんから見た「ニッカ セッション」の魅力はどんな点にあるのだろうか。
「豊潤さや華やかさに加えて、酸やビター感を感じる香りも立ち、わくわくするような個性があります。グレーンの入らないモルト原酒のみのブレンデッドなので、軽快さがあるのに骨格がしっかりしているんですよね。ひとつの文化にとどまることなく、和と洋のモルト原酒を自由な発想でブレンドしているところに魅力を感じます。私自身、普段からカクテルをつくる際は、既成の“和テイスト”にこだわらず、味の幅を狭めないことを心掛けています。そのため、『固定概念を覆し、新しいものを生む』という『ニッカ セッション』がめざした考えに共感しました。このウイスキーなら、スタンダードなマンハッタンやオールドファッションとは違った、現代的なカクテルにも仕立てやすいと思います」
今回、吉原さんが生んだカクテルの名前は「Flora and Fauna(フローラ アンド ファウナ)」。「動植物」を表す学術種名である。
「ラベルのデザインから、ウイスキーの語源にもなった『ウシュケバー(生命の水)』をイメージしました。壮大な自然のイメージです。スコットランドに残るケルト文化は、日本文化と共通するものがいくつもあります。輪廻転生、自然崇拝、八百万の神。転じて、『万物に感謝』という意味を込めています」
味わいの構成のヒントになったのは、「クラナカン」というスコットランドの伝統菓子。ホイップクリーム、蜂蜜、ラズベリー、そして少量のウイスキーが入る。
「ニッカ セッションの乳酸系の香りと、クリーミーな口当たりからクラナカンのホイップクリームを、ハーブや野性味のある蜂蜜は“動植物”をイメージしました。“和と洋の融合”もテーマに取り入れたかったので、ラズベリーと同色の桜のビターズを、そしてわずかな塩気で甘味を引き立てる和菓子の技術を取り入れました。ほのかな塩味のフォームを添えることで、甘酸味が立ち、ウイスキーの持ち味を引き出します。実際につくってみて、『ニッカ セッション』はフルーツの甘味や酸味を支える縁の下の力持ち的な味わいがあり、『ニッカ セッション』自体の存在感も発揮できるとウイスキーだと実感しました」
もし食事に合わせるなら、と投げかけてみた。
「炭酸割りにして酸味を立たせれば、ワインを使った酸味のあるヴィネグレットソースや、ブルーベリーやオレンジなど果物のソースをかけた豚肉のローストなどとも相性がよさそうです。プライベートなら、ナイトキャップにもしたいですね。ブランデーグラスで香りを愉しみ、グラスの残り香を香って寝られたら、いい夢が見られそうです」。
[材料・材料のつくり方]
- ニッカ セッション:40ml
- シャンボール(ベリーのリキュール):10ml
- グリルハニーシロップ:15ml〈1〉
- レモンジュース:15ml
- 桜ビターズ:1dash
- バジル:2枚
- 塩のフォーム〈2〉
- フライパンに蜂蜜7:水3を入れて熱し、煮詰める。
- 塩分3%の塩水に対し、シュクロエミュル0.5%を加えて泡立てる
[つくり方]
- グラスに氷を入れて冷やしておく。
- シェイカーに、ラズベリーを入れてペストルでつぶす。
- 半分にちぎったバジルの葉、ニッカ セッション、シャンボール、グリルハニーシロップ、レモンジュース、桜ビターズ、氷を入れ、シェイクする。
- 1のグラスに注ぐ。
- 塩のフォームをつくり、4に盛る。
吉原泰俊さん プロフィール
1984年、東京生まれ。高等学校の調理科在学中からフレンチ、カリフォルニア料理店で料理人として勤務し、19 歳でバーテンダーの道へ。都内のシガーバーや横浜のバーなどを経て、2016年3月「アンダーズ 東京」(東京・虎ノ門)入社。「ルーフトップ バー」のヘッドバーテンダーを務める。「ビーフィーターグローバルカクテルコンペティション」2016・2017 ジャパンファイナリスト、「シーバスリーガルミズナラマスターズ2017」優勝、「ラ・メゾン・コアントローカクテルコンペティション2019」ジャパンファイナリスト。
ラグジュアリーライフスタイルホテル「アンダーズ 東京」の最上階に位置し、開放的な空間からはレインボーブリッジやお台場エリア、東京スカイツリーなどきらめく夜景が望める。季節のフルーツやプレミアムティーをはじめ、ハイクオリティな素材を使ったオリジナルのミクソロジーカクテルを提供。
東京都港区虎ノ門1-23-4 虎ノ門ヒルズ 森タワー
アンダーズ 東京 52F
Tel: 03-6830-7739
インタビュー、文 沼由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)、取材・執筆に『日本全国 ご飯のとも お米マイスター推薦の100品』(リトルモア)、『読本 本格焼酎。』(プレジデント社)などがある。