『BIRDY.』12周年記念プロジェクトシグネチャーカクテル「Tales of 8」。
“八の物語”の続編は、丑年に生まれた息子が紡ぐ“丑の物語”

『BIRDY.』は2025年11月、ブランド誕生から12周年を迎えました。
職人技術に裏打ちされた卓越した品質と洗練されたデザイン――。『BIRDY.』の12年は、常にプロフェッショナルバーテンダーとともに歩んできました。創造性、技術、ホスピタリティといったバーテンダーが体現する美学も、『BIRDY.』が大切にしてきた価値そのものです。

今回、この12という数字にちなみ、干支を重ね合わせた特別企画「十二支でめぐる物語」 がスタートします。12人のバーテンダーが、自身の干支をモチーフにオリジナルカクテルを創作する特別プロジェクトです。

一杯のカクテルのみならず、そこに至る思いや歩みに触れられる内容です。世代もスタイルも異なる12名が紡ぐ、12の個性と12の物語。『BIRDY.』の12年とともに巡る、新たなストーリーをお届けします。

丑年（うしどし）編でご登場いただくのは、『3rd AVE. BAR』（東京・四谷三丁目）の阿部 央さんです。国内外のコンペティションで優勝経験を持ち、ホテルバーでの研鑽を経て2023年に『3rd AVE. BAR』を開業した阿部さん。服飾のパタンナーからバーテンダーへと異色のキャリアを歩んできた彼は、技術とデザイン感覚を併せ持つ新世代の実力者です。まずは、バーテンダーとしての「はじまり」から物語を語っていただきました。

丑年生まれのバーテンダー 阿部 央さん（3rd AVE. BAR）。

■バーテンダーを志したきっかけを教えてください
きっかけは、単純に「かっこいい」というイメージからでした。アパレルの学校を卒業後、メンズパタンナーとしてものづくりの仕事を始めましたが、同時期にリーマンブラザーズの破綻があり、社会状況が大きく変化しました。勤め先の経営も次第に厳しくなり、会社を辞めるという決断をしました。昼間に新しい仕事を探しながら、夜の時間に始めたアルバイトがバーテンダーです。ものづくりという視点では共通する部分がありましたが、何よりお客様の声が直接届くことが新鮮で、とてもおもしろく感じました。その魅力が今も変わらず、この仕事を続けている理由です。

■バーテンダー人生の中で、大きな影響を与えた人や出来事はありますか
私のバーテンダー人生に大きな影響を与えたのは、なんといっても『バカルディ レガシー カクテル コンペティション』で日本チャンピオンになったことです。日本で初開催となった2016年大会から毎回挑戦し、「どうしても優勝したい」と強く思っていました。3度目の挑戦となる2018年に日本大会で優勝し、メキシコで行われた世界大会に臨みました。結果は決勝で敗れてしまいましたが、その時のカクテル『Tales of 8』のコンセプトを自分自身で体現できたことが、人生を大きく変える経験となりました。大会で競い合った仲間や、支えてくださった多くの方々からは、今も変わらず大きな影響を受けています。

『Tales of the Ox』（テールズ・オブ・ジ・オックス）は、私のシグネチャーカクテルである『Tales of 8』を元にツイストした一杯です。『Tales of 8』が“八の物語”だとすれば、その続編にあたるのが“丑の物語”となる『Tales of the Ox』です。

『バカルディ レガシー カクテル コンペティション』の世界大会決勝ステージで、私は妻にプロポーズをしました。あの瞬間で私の大会はひとつの完結を迎えましたが、その後、生まれてきた息子が偶然にも私と同じ丑年だったことから、この物語は新たに続いていくことになります。創業者ドン・ファクンド・バカルディが家族のために創造したレシピが現代に受け継がれているように、私も“子どもへの想い”を重ねてこのカクテルを創作しました。

ベースに選んだ『バカルディ8』は、エイジドラムならではの深い味わいが魅力で、そのままでも、カクテルベースとしても優秀な存在です。ほかの材料との調和に優れ、さらに“家族のためにつくられたレシピ”というストーリー性を持つラムでもあります。『バカルディ8』は今も新しい物語を生み続けていると感じています。

味わいのポイントは、息子が好きなチチヤスヨーグルトです。本来のレシピではエスプレッソを使いビターな仕上がりになりますが、今回はヨーグルトを加えることで、まろやかでやさしい味わいに仕立てています。キャラクターデザインが息子にそっくりなこともあり、幼い頃の給食を思い出させるこの風味は、どこかノスタルジックでエモーショナルな余韻を与えてくれます。

グラスブランド SIP AND GUZZLE の『VanDyke 5oz Coupe』は、一般的なクープグラスに比べて飲み口がやや内側に出ていることで美しいシェイプラインを実現。フレーバーを感じさせる形状に設計されている。

『Tales of the Ox』のカクテルメイキング動画はこちらからご覧いただけます。

最後に道具へのこだわりや、道具によって人生が変わったエピソードについて伺いました。

大会でのパフォーマンスには時間制限があるので、できれば余裕を持って進めたいんですけど、プレゼンテーションのある大会だと伝えたいことが多くて、どうしても時間がギリギリになるんです。そのときに一番気になるのが、実はメジャーカップなんです。

注ぎ終わったと思ってメジャーカップを下げた瞬間に液だれすると、見栄えが良くないだけじゃなくて減点にもなる。あの“怖さ”があると、最後までしっかり切るのをためらってしまうんです。

2017年の『バカルディ レガシー カクテル コンペティション』で初めて『BIRDY.』のメジャーカップを使わせてもらったんですが、その液切れの良さでパフォーマンスが本当に変わったと実感しました。あれはもう、このメジャーカップに施されている撥水コーティング技術の力だと思っています。

特にシロップを扱うときは本当に助かるんですよ。シロップを全部切ろうとすると、本来なら2〜3秒くらいかかるんですけど、その数秒すら惜しいのが大会の現場。『Tales of 8』では黒蜜を使っていたので、さらに粘度が高くて、一般的なメジャーカップだと中にまとわりつくんです。全部切ろうとすると時間がかかるし、上からカメラで撮られているので、黒いシロップが垂れると一発で目立ってしまう。

その点、『BIRDY.』のメジャーカップは液切れがいいので、無駄な時間を使わずにすぐ次の動作に入れるんですよね。しかも、液切れが悪いと1〜2ミリ素材が残ってしまうこともあって、それだけで味にも影響するんです。

そういう意味で『BIRDY.』のメジャーカップには、本当に何度も助けられてきました。コーティングを含め、この仕上がりに至るまでの精度の高さが、現場での安心感につながっていると感じています。

「道具を信頼してメジャーを切ることができるのは、『BIRDY.』の高い技術力のおかげ」と阿部さん。今回の企画では、干支のイラストが記されたバーツールが特別に贈られた。阿部さんのシェーカーには、「丑」のマークが施されている。

阿部 央（あべ あきら）
1985年生まれ神奈川県出身。東海大相模高校で野球に打ち込み、アパレル業界でメンズパタンナーとしてものづくりに携わった後、バーテンダーへ転身。都内のバーやホテルで研鑽を積み、国内外のカクテルコンペティションで数々のタイトルを獲得し、2018年には『バカルディ レガシー カクテル コンペティション』日本大会で優勝。2023年に東京・四谷三丁目に『3rd AVE. BAR』を開業し、技術とデザイン感覚を併せ持つ新世代の実力派として注目されている。

『BIRDY.』のカクテルツールは、バーツール専門店『BAR TIMES STORE』でご購入できます。

『BIRDY.』公式サイトはこちら。