
NEW2026.04.14 Tue
次世代のリーダー候補を発掘する国際的カクテルコンペティション開催レポートSIP Supernova Japan Final 2026
優勝はXIAOXIANG LIUさんの手に!
BAR TIMES レポート2026年3月23日、東京・虎ノ門の東京タワーを望むラグジュアリーホテル 東京エディション虎ノ門内に位置するGold Bar at EDITIONにて、経験6年未満の若手バーテンダーを対象としたカクテルコンペティション「SIP Supernova Japan 2026」が開催された。単なる技術勝負ではなく、世界に羽ばたく次世代のリーダー候補となるバーテンダーの発掘とホスピタリティ業界の活性化を目的とする。ファイナリストそれぞれの独自性が光るプレゼンテーションを経て、見事優勝に輝いたのはXIAOXIANG LIUさん(The Bar, The Ritz-Carlton, Tokyo/東京)、準優勝は松尾輝さん(The Bvlgari Bar, Bvlgari Hotel Tokyo/東京)、第3位は宮之上哲太さん(Bar RENRi/東京)に決定した。高揚感が満ちる当日の様子と、グローバルファイナルへの出場権を勝ち取った上位2位のコメントをレポートする。

ペルノ・リカールが主催するグローバルカクテルコンペティション「SIP Supernova」は、世界各国で予選が行われ、各国の代表者がグローバルファイナルへと進む国際的なコンペティションである。「SIP」には、アイデアを共有(Share)し、互いに刺激(Inspire)を与え合い、新しいことに挑戦し自ら道を切り拓く(Pioneer)という意味が込められている。日本での開催は初となる今大会のカクテルテーマは、五感を刺激する“Sensory Architecture”。審査員には、2025年にThe World’s 50 Best Barsで29位に選出された「Hope & Sesame」の創設者であり、中国有数のバーコンサルティンググループを率いるBastien Ciocca(バスティアン・シオッカ)氏、テキーラブランド「Código 1530」のAPACリージョナル・ブランドアンバサダー兼セールスディレクターであるChris Marshall(クリス・マーシャル)氏、そして季の美のグローバルアンバサダーとして10か国以上でブランド発信を行い、現在は世界60か国以上に展開する季の美のドリンク戦略を担う佐久間雅志(Marcy)氏を迎えた。


ファイナリストは、革新的なカクテル創造力、伝える力としてのプレゼンテーションを競いながら、グローバルにつながる舞台で競演を繰り広げた。(以下、競技順)
天井章友さん(Bar Dealan-Dé/東京)
カクテル名「Café de Emiliano」。テキーラ『コディゴ1530 ブランコ』とコーヒー、スパイスを合わせる。材料を合わせてシェイクし、仕上げにはトップのクリームをのせ、ガーニッシュにはシナモンスティックとその場ですりつぶしたピンクペッパーやカルダモン、チリなどを合わせた。
松尾 輝さん(The Bvlgari Bar, Bvlgari Hotel Tokyo/東京)
カクテル名「First Blush,Lasting Ash」。メスカル『デルマゲイ チチカパ』のスモーキーさが骨格となり、ストロベリーやジャスミン、ルバーブの風味と美しく調和する。ガーニッシュとして添えられた、ストロベリーでキャラメリゼしたいちじくが奥深い甘さをプラス。ダブルシェイクのパフォーマンスで会場を沸かせた。
名城 暖さん(The Coffee Brew Club 袖バー/東京)
カクテル名「モンキー74(Hz)」。プレミアムジン『モンキー47』をベースに、抹茶の苦味と『スーズ』の香りを加える。ホワイトレディを再解釈し、『モンキー47』の複雑な風味を活かしつつ、和の要素を融合。審査員へカクテルと共にヘッドフォンをサーブし、抹茶の苦みとベースの香りをより知覚しやすい74ヘルツの低周波音源を聴きながらカクテルを味わってもらった。
XIAOXIANG LIUさん(The Bar, The Ritz-Carlton, Tokyo/東京)
カクテル名「Elysian Fume」。心身をリラックスさせてくれるお香“極楽の煙”をイメージしてカクテルを制作。テキーラ『コディゴ1530 ロサ』をベースに、『季の梅』や梅と蜂蜜のコーディアルなどを合わせる。沈香の木の香りと重なり、まさにお香のような階層的な香りをもつカクテルで「センサリー・アーキテクチャー」を表現。
川田大地さん(Bar Aglet/大阪)
カクテル名「Familia」。カクテルのキーアイテムとなる酒粕を審査員に配り、香りを愉しむことを薦める。“メキシコ版粕汁”をテーマに、メスカル『デルマゲイ チチカパ』をベースとし、トマトやタヒンを合わせ、酒粕と白味噌のフォームをのせる。酒蔵に勤めていた父親と家族の記憶を重ねてカクテルに落とし込んだ。
又野秀磨さん(FUGLEN TOKYO/東京)
カクテル名「New My Fashion」。初めてバーに行った時の経験から着想し、日本らしい「オールドファッション」をテーマにカクテルを制作。『シーバスリーガル 匠リザーブ12年』に、煎茶とレモングラス、ベルガモットなどを合わせた自家製コーディアルを合わせる。ガーニッシュに炙ったウルメと柚子を添え、和の味覚と融合させた。
石田結海さん(THE LIVELY 東京麻布十番/東京)
カクテル名「shocking black」。自身が初めて口にした時に衝撃を受けたジン『モンキー47』を用い、レモン、ライム、グレープフルーツ、エルダーフラワーなどを使ったコーディアルと合わせる。柑橘と花の香りが重なり合うカクテルの仕上げには、竹炭の「黒」を生かしたアブサンを垂らして、視覚的なユニークさを取り入れた。
山﨑友輔さん(松濤倶楽部/東京)
カクテル名「RE-SONANCE」。かつて酒造りに携わった経験を生かし、テキーラ「オルメカ アルトス レポサド」をベースに、もろみを思わせるカクテルを制作。審査員に温かいおしぼりを配り、狭山茶をガーニッシュとして提供したうえで、口内を温めてからサーブするという、温度帯まで計算された設計により、「ホスピタリティを信条に、記憶に残るサービス」を表現。
鈴木慎吾さん(BAR Eight Rabbit/埼玉)
カクテル名「盆祭 Bonsai」。審査員におしぼりとコンセプトシート、コースターを配布。五感を刺激し、没入感のある体験を生み出す設計に加え、音や香りにも工夫を凝らし、夏のお盆を想起させる。『コディゴ1530 ブランコ』をベースにしたカクテルの制作過程では、日本からメキシコへと世界観が転換する仕掛けもユニークに表現されている。
宮之上哲太さん(Bar RENRi/東京)
カクテル名「Cross Point」。江戸が薫る東京・人形町と古都・京都の「交差」が感じられる和のカクテルを制作。力強さとクリーンさを併せ持つ『季の美 勢』をベースに、人形焼きほうじ茶や麹を使った自家製素材を合わせる。ガーニッシュには炙った人形焼きをのせ、見た目のインパクトでも注目を集めた。テーブルクロスに手ぬぐいを、コースターに畳を採用。
XIAOXIANG LIUさんは中国・北京出身。イギリスで音楽を学んだ後、バーテンダーに魅了されて転身。銀座「BAR HIGH FIVE」などでも経験を積んだ。優勝を機に「SIP Supernova Japan 初代アンバサダー」として、1年間にわたりさまざまな舞台で活躍することとなる。
「Elysian Fume」=「極楽の煙(お香)」と題したカクテルで優勝に輝いたXIAOXIANG LIUさん。今回の大会テーマである「センサリー・アーキテクチャー(感性の構築)」をもとに、お香の香りや熱といった感覚的な要素をカクテルに落とし込んだ。LIUさんはバーテンダーになる以前、音楽を学んでいて、音楽とカクテルの間には「クリエイティビティ」「バランス」「歴史」の共通点を見出していると語る。
「ホスピタリティ業界が長年直面しているメンタルヘルスの問題を前に、今回のプレゼンテーションを通じて、業界全体、とくに若い世代に向けて『自分自身を大切にすること(Take care of yourself)』の重要性を強調しました。きっかけになったのは、銀座でお香の専門店を訪れた際、その種類の多さに驚いたことです。アジアにおけるお香の歴史を研究し、お香の歴史からストーリーを構築。花や木といった具体的なフレーバーの選定につなげています。歴史やストーリーから生まれるプレゼンテーションを通じて、飲み手に感情的な訴えかけをすることに重きを置きました」
2026年5月、東京で開催されるグローバルファイナルへの意気込みをこう語る。
「まずこういった大会が催されることに感謝したいです。ファイナルもここ日本で催されるので、一緒に挑戦する(松尾)輝さんと一緒に、攻めの姿勢で臨みたいと思います」
松尾輝さんは1997年生まれ。六本木のバーやメキシコ料理店&バーなどを展開する「HUGE」を経て、2年ほど前より「The Bvlgari Bar」にて勤務。
「周りのスタッフ、バーのチームに感謝したいです」と喜びを語る松尾さんに、あらためて今回のカクテルについて語ってもらった。
「メスカルをベースに、ルバーブの酸味を活かしたシロップにジャスミンやイチゴのフレーバーを掛け合わせ、シンプルに素材が映えるよう設計しました。バーにいらしたことない方にも愉しんでいただきたいという希望を込めています」
松尾さんは、ファイナルまで進めるコンペティションは今回が初だという。バーに人を呼び込み、新しい体験をしてほしい、という思いは、ファイナルに懸ける意欲にも表れる。
「僕個人が有名になりたい、というより、いま働いているブルガリバーに新しいお客様により多く足を運んでいただき、愉しんでいただけたら!今僕がここに立っているのも、僕自身のバーが愉しいという経験があるからです。今回は2位ですが、決定戦では他国のファイナリストから学べることを吸収しながら、トップを狙っていきたいですね。バーテンダーとして、人間としても成長できたらと思っています」
日本大会の熱狂はここで終わりではない。
上位2名には、2026年5月に日本で開催されるグローバルファイナルへの出場権が与えられ、副賞としてメキシコ蒸溜所ツアーも贈られる。世界へと続く舞台に立つふたりの挑戦に、引き続き注目したい。
2026年5月9日(土)から13日(水)にかけて、「SIP Supernova Global Final」が日本で開催される。世界各国から選ばれた若手バーテンダーが東京・京都に集い、次世代を担う才能が競い合う。本大会には27名のファイナリストたちが参加予定。東京・虎ノ門の「Andaz Tokyo」を拠点に、カクテルチャレンジやメンタリングセッションが行われるほか、日本文化を体験する多彩なプログラムも用意されている。
ジャパンファイナルを勝ち抜いた2名は、日本代表としてこの舞台に臨む。世界が注目するこの舞台で、日本のバーテンダーがどのような存在感を示すのか──その活躍から目が離せない。
インタビュー・文 沼 由美子
ライター、編集者。醸造酒、蒸留酒を共に愛しており、バー巡りがライフワーク。著書に『オンナひとり、ときどきふたり飲み』(交通新聞社)。取材・執筆に『EST! カクテルブック』『読本 本格焼酎。』『江戸呑み 江戸の“つまみ”と晩酌のお楽しみ』、編集に『神林先生の浅草案内(未完)』(ともにプレジデント社)などがある。
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