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バーをこよなく愛すバーファンのための WEB マガジン

NEW2026.07.10 Fri

『BIRDY.』12周年記念プロジェクト祖父から父へ、そして私へ。
親子三世代に受け継がれる會舘フィズに
「羊」の温厚さと癒やしを重ねて

十二支でめぐる物語(未年編)/ 内田行信さん(BAR 白馬舘)

『BIRDY.』は2025年11月、ブランド誕生から12周年を迎えました。
職人技術に裏打ちされた卓越した品質と洗練されたデザイン――。『BIRDY.』の12年は、常にプロフェッショナルバーテンダーとともに歩んできました。創造性、技術、ホスピタリティといったバーテンダーが体現する美学も、『BIRDY.』が大切にしてきた価値そのものです。

今回、この12という数字にちなみ、干支を重ね合わせた特別企画「十二支でめぐる物語」がスタートします。12人のバーテンダーが、自身の干支をモチーフにオリジナルカクテルを創作する特別プロジェクトです。

一杯のカクテルのみならず、そこに至る思いや歩みに触れられる内容です。世代もスタイルも異なる12人が紡ぐ、12の個性と12の物語。『BIRDY.』の12年とともに巡る、新たなストーリーをお届けします。

未年生まれのバーテンダー 内田行信さん(BAR 白馬舘)

未年(ひつじどし)編でご登場いただくのは、BAR 白馬舘の内田行信さん。親子三世代にわたってバーテンダーの系譜を受け継ぐことで知られる、富山市の老舗バーのバーテンダーです。クラシックカクテルを軸に、ミクソロジーやフレアバーテンディングの要素を取り入れた独自のスタイルを追求する内田さん。今回は、日本の伝統的なカクテル「會舘フィズ」から着想を得て、「羊」が持つやさしさや癒やしのイメージを表現した一杯を披露してくれました。

まずは内田さんに、バーテンダーという仕事に対する思いや、日々カウンターに立つなかで大切にしていることについてお話をうかがいました。

未年生まれのバーテンダー 内田行信さん(BAR 白馬舘)。

■バーテンダーを志したきっかけを教えてください
祖父と父がバーテンダーだったこともあり、私は幼い頃からバーの文化に親しんで育ちました。バーテンダーの道に進んだ当初は特別な思いがあったわけではなく、自然な流れで仕事を始めました。しかし、経験を重ねるなかで、祖父と父が全国にその名を知られる偉大なバーテンダーであることを改めて実感するようになりました。そして、このまま中途半端な気持ちで続けていてはいけないと考え、本格的に祖父と父の指導を受けながら、一人前のバーテンダーを目指すことを決意しました。

■バーテンダーとしての信念、大切にしていることは何でしょうか
白馬舘は富山で64年の歴史を持つバーで、祖父、父と代々受け継がれてきました。私がこの先、店を引き継げば、全国でもめずらしい親子三世代のバーになります。富山という地でバー文化を築き、お客様を大切にしながら歴史を紡いできた祖父と父の思いを受け継ぐことは、とても大きな責任だと感じています。その伝統や文化を守りながらも、自分らしい個性や新しい価値を少しずつ加えていくことを大切にしています。

■バーテンダー人生の中で、大きな影響を与えた人や出来事はありますか
私に大きな影響を与えてくれた人物は、横浜「Newjack」、京都「Bee’s Knees」、新宿「Jeremiah Tokyo」を展開するRad Entertainment代表の山本圭介さんです。富山という地方都市で、これからどのようなバーテンダーを目指していくべきか悩んでいたときに、「Newjack」へ誘っていただきました。

山本さんからは、常に新しいことへ挑戦する姿勢や、現代のバーテンディングを追求する探究心、世界へと視野を広げることの大切さ、そしてチームとの強い絆について多くを学びました。Asia’s 50 Best Barsへの選出など、その歩みは私に大きな刺激を与えてくれています。何より、バーテンダーという仕事が世界で一番かっこいい職業だと実感させてくれた恩師であり、今でも心から尊敬している存在です。

未年のオリジナルカクテル『Inherit Fizz 』。祖父の代から継承される「會舘フィズ」をアレンジ

「未年」ということで、今回のテーマである「羊」から着想を広げていったとき、見た目のモコモコとした印象から、日本の伝統カクテル「會舘フィズ」が思い浮かびました。「會舘フィズ」とは、ジンフィズにミルクを加えた東京會舘発祥のカクテルで、白くやわらかな見た目と、爽やかな酸味、ミルクのまろやかな口当たりが特徴です。

当店の初代である祖父・内田輝廣は、もともと銀座でバーテンダーとして活躍し、戦後の日本のバー文化を支えた一人でもあります。当時、進駐軍の人々に愛飲されていたのが「會舘フィズ」で、祖父自身もこのカクテルを大変好んでいました。そのため、令和の今でも白馬舘では定番の一杯として提供し続けています。
祖父から父へ、そして私へと受け継がれてきた伝統と文化。その想いを表現するため、今回は「會舘フィズ」をベースに選びました。カクテル名の「Inherit(インヘリット)」には、「受け継ぐ」「継承する」という意味を込めています。歴史や文化、そして先人たちの想いを次の世代へつないでいきたいという願いを表現しました。

また、羊には温厚さや癒やし、平和といったポジティブなイメージがあります。そこで、リラックス効果が期待できるカモミールやラベンダーなどのハーブを取り入れ、口当たりやアルコール度数もやわらかく仕上げることで、「羊」が持つ癒しや穏やかな魅力を表現しました。ナイトキャップとして楽しんでいただきたい一杯です。眠る前にゆっくり味わえば、羊を数えるまでもなく心地よい眠りへと誘ってくれる、そんな思いを込めてつくりました。

今回のオリジナルカクテル『Inherit Fizz 』(インヘリットフィズ)は、ベースに「竹鶴ピュアモルト」を使用しています。「竹鶴ピュアモルト」の魅力は、余市と宮城峡という異なる個性が見事に調和し、高い完成度を生み出している点にあります。フルーティーでありながら甘すぎず、奥行きと心地よさを兼ね備えた味わいが特徴です。

実は白馬舘と竹鶴には縁があります。
かつて当店では、竹鶴政孝氏のご子息であり2代目マスターブレンダーの竹鶴威氏をお招きし、「竹鶴バー」を開催したことがありました。

竹鶴が親子で受け継がれてきたブランドであるように、白馬舘もまた親子三代にわたり受け継がれてきたバーです。一時の流行ではなく、100年先も愛される文化や歴史を残したい。そんな価値観を共有していることが、竹鶴ピュアモルトと白馬舘の大きな共通点であり、魅力だと感じています。

内田さんによる『Inherit Fizz 』(インヘリットフィズ)。白馬舘に伝わる「會舘フィズ」をアレンジしている。使用グラスは、SIP AND GUZZLE『Tanto Bello D.O.F』。うすづくりでありながら、底には厚みを持たせた安定感のある使い心地。外側に向いた飲み口は口当たりよく、少し傾けれ ばドリンクが口に流れ、舌先から広がるフレーバーに満たされる。

ベースに選んだのは『竹鶴ピュアモルト』。「フルーティーなのに甘すぎず、奥深さのバランスがとてもよく、心地よさもあります」と内田さん。

『Inherit Fizz 』(インヘリットフィズ)
〈材料〉
・竹鶴ピュアモルト 45ml
・カモミールアブサンハニー 15ml
・ハーブティー (ラベンダー、レモンバーム、ローリエ) 10ml
・柚子レモンジュース 15ml
・ミルク 45ml
・フィーバーツリー エルダーフラワー 45ml
・NOMA 椿ビターズ 1push
・ガーニッシュ : エディブルフラワー富山県産
〈つくり方〉
①ダブルティンシェーカーにミルクを入れフォーマーで泡立てる。
②フィーバーツリーエルダーフラワーをグラスに注ぐ。
③残りの材料を全てシェーカーに入れてシェーク。
④グラスに注ぎ氷を入れる。
『Inherit Fizz 』(インヘリットフィズ)のカクテルメイキング動画はこちらからご覧いただけます。
道具で人生が変わったエピソード

最後に道具へのこだわりや、道具によって人生が変わったエピソードについて伺いました。
衝撃を受けた道具のひとつが、BIRDY.のカクテルシェーカーです。初めて手にしたのは、あるカクテルコンペティションの副賞としていただいたときでした。実際に使ってみると、それまでのシェーカーとはまったく異なる感覚に驚かされました。シェーカー内での氷と液体の動きが非常にスムーズで、美しく撹拌されるのがわかります。仕上がりも格段によく、特に酸味の表現がしやすいと感じました。
気がつけば何度もこのシェーカーでカクテルをつくりたくなり、今では日々の営業はもちろん、コンペティションでも愛用しています。

また、お客様からも良い反応をいただくことが少なくありません。「おっ、BIRDY.なんだね。さすが!」と声をかけていただくこともあり、そこから会話が広がることもあります。一流の道具は、カクテルの品質だけでなく、お客様からの信頼にもつながるのだと実感しています。BIRDY.は、バーテンダーとお客様をつなぐ存在でもある、それも大きな魅力のひとつだと思います。

カクテル『Inherit Fizz 』(インヘリットフィズ)では、『BIRDY.』のダブルティンシェーカーを使用。今回の企画では、干支のイラストが記されたバーツールが特別に贈られた。内田さんはフレアバーテンダーとしても活躍していることから、シェーカーのボディには、フレアバーテンディングをする「羊」のイラストが施されている。

『BIRDY.』のブランドマネージャー 横山 哲也氏と。

内田 行信(うちだ ゆきのぶ)
富山県・BAR白馬舘3代目バーテンダー。1962年創業の老舗バーで育ち、祖父・内田輝廣氏、父・内田信也氏に続きカウンターに立つ。横浜でフレアバーテンディングとミクソロジーを学び、クラシックカクテルを軸にフレアやクラフトカクテルを融合した独自のスタイルを確立。2022年アジアパシフィック・バーテンダーオブザイヤー・カクテルコンペティション準優勝、2024年anfa Champions Cup優勝。富山の素材や文化を活かしたカクテルづくりを通じ、地域のバー文化発展にも取り組んでいる。



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